イングランドにおける麻疹アウトブレーク、2018年

Vol. 12 / No. 16
Measles outbreaks in England, 2018

2018年1月1日~5月9日にイングランドで440例の麻疹確定診断例が報告され、ほとんどの症例がロンドン(164例)、South East(86例)、West Midlands(78例)、South West(42例)及びWest Yorkshire(37例)で認めた。感染例の多くは16歳以上であった。
感染例の増加は主にヨーロッパからの輸入感染例に関連しており、特に過去にMMRワクチンの接種をしなかった若年者及び成人、移民や旅行者、シュタイナー教育のコミュニティなど予防接種が不十分なコミュニティで複数の局地的感染拡大が発生した。複数の分離株が確認されており、複数の輸入感染が起こっていたことと一致する。しかし、最多の株は現在ルーマニアで流行しているB3ジェノタイプと同じものである。
麻疹は非常に感染力の強いウイルス感染症で、ワクチンにより容易に予防できるが、現在でも世界的に疾病及び死亡の重要な原因となっている。現在、以前よりMMRワクチンの接種率が低いヨーロッパの国で複数の大規模なアウトブレークが発生している。今年初め、European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC)は麻疹に関するリスクアセスメント速報を発表した。その結論は以下の通りである。
・ヨーロッパと第三国のあいだで相互の輸出・輸入感染が起こっており、麻疹感染のリスクが高い状態が続いている。
・95%のMMRワクチン接種率を達成した国であっても、ワクチン接種率の低い地域または一部のコミュニティ、高齢者でアウトブレークが発生する可能性がある。
・医療従事者における麻疹感染例の発生から、雇用時に抗体価または予防接種歴の証明を確認するため、対象を絞った介入の必要性が明確となった。
MMRワクチンは2回接種を完了していない全ての成人及び小児が接種できる。キャッチアップのあらゆる機会を最大限に設けなければならない。このワクチンはまた、高リスクの国に渡航する前には月齢6カ月から接種可能である。

免疫グロブリン製剤が不足している期間の破傷風予防に関する暫定ガイダンス

Vol. 12 / No. 16
Interim guidance on tetanus prophylaxis during period of immunoglobulin shortage

PHEは現在承認されている免疫グロブリン製剤の供給が停止している状況を考慮し、破傷風の治療及び予防における免疫グロブリン製剤の使用に関する暫定的な改訂リコメンデ―ションを発表した。
この暫定ガイダンスは、最新の試験に基づき、破傷風患者の治療に推奨される使用可能な静注用免疫グロブリン製剤の最新リストを提示している。また、破傷風のリスクが高い外傷の治療に対する破傷風に特異的な免疫グロブリン製剤(筋注用)の代替製剤として、ヒト免疫グロブリンの使用も推奨している。Trustに対し、PHEには分からない破傷風の治療及び予防に用いる免疫グロブリン製剤の供給に関して直接製造業者に連絡を取るよう勧めている。
このリコメンデ―ションは、2018年後期に出される破傷風患者及び破傷風のリスクが高い創傷の治療に関する改訂ガイドラインに先だって発表されている。

イングランドにおけるC型肝炎:2016年のデータ解析を発表

Vol. 12 / No. 16
Hepatitis C in England: analysis of 2016 data published

PHEはイングランドにおけるC型肝炎の年次報告書を発表し、そのなかで2016年までのデータ解析及びHCV感染例やHCV関連死の減少に向けた活動に関する進捗レポートを提示している。
最新の推計から、イングランドの約160,000人がHCV陽性で、依然として注射薬使用がHCV感染の最も有用な危険因子であることが示されている。
HVV関連死は2014年から2016年にかけて年々減少してきており、新規の抗ウイルス薬(DAA)による治療の普及による効果が出始めたとこのレポートでは述べている。
しかし、過去20年間(1996~2016年)でイングランドのHCV感染確定診断例数は5倍以上増加しており、2016年にはHCV抗体陽性例やHCV RNA陽性例の報告が10,731例みられた。定点サーベイランスでは検査件数の増加も示され、2012年から2016年にかけて全体として24%の増加、外科のGPで215の増加が示唆された。
PHEによる英国のC型肝炎に関する年次報告書は今夏、2018年7月28日の世界肝炎デ-を合わせて発表される。