イギリス公衆衛生週報 感染症トピックス
2018年06月08日

Vol. 12 / No. 20

PHEが2017年の性感染症に関する年間データを発表

PHE publishes full annual STIs data for 2017

PHEはイングランドにおける性感染症及びクラミジアのスクリーニングに関する年間データを発表した。このデータは以下の2つのレポートにより構成されている。
・レビューレポート「2017年のイングランドにおける性感染症及びクラミジアスのクリーニング」
・England National Screening Programmeでのイングランドにおけるクラミジア再検査のモニタリング率(2013年1月~2017年6月)
レビューレポートでは、イングランドで最も問題となっている性感染症である梅毒、淋病、性器ヘルペス、クラミジア及び性器疣贅の傾向を概説している。
最新のデータによると、2017年にはイングランドで新たに性感染症と診断された患者数は、2016年と比べて全体で0.3%減少したが(423,352例から422,147例)、梅毒及び淋病の罹患率は年々著明に増加している(2016年と比較し、それぞれ20%及び22%の増加)。この増加は特にゲイ、バイセクシャル及びその他の男性同性愛者(men who have sex with men, MSM)に集中しており、これらの患者群では2016年から2017年にかけて淋病の罹患率は21%、梅毒は17%増加した。淋病の増加は、近年みられている高度耐性Neisseria gonorrhoaeaeを考えると特に懸念される。
しかし、性器疣贅の罹患率は、特に若年女性で継続的に低下している。2017年に15~17歳の女子で初発の性器疣贅と診断された患者は441例で、2009年と比べて90%の減少であった。この減少は主に学生に対するNational HPV Immunisation Programmeの接種率が高いためである。
クラミジアは2017年もイングランドで患者数が最も多い性感染症であり、性感染症診断例全体の48%(203,116例)を占めた。性感染症レビューレポートの本文には、イングランド市民のクラミジア検査に関するNational Chlamydia Screening Programme (NCSP) のデータが掲載されている。2017年にはNCSPの対象である15-24歳のイングランド市民で130万件のクラミジア検査が実施され、126,000例以上がクラミジアと診断された。全体として、2016年と比べて2017年には15~24歳の年齢層でクラミジアと診断された患者は2,361例少なく、2%の減少であった。2017年に実施されたクラミジア検査件数は2016年より8%減少した。この検査件数の減少の多くはセクシャルヘルスサービス及び産科での実施によるもので、この両者でのクラミジア検査件数は2015年以降61%減少しており、このようなセッティングでのサービス提供の減少を反映している。
検査陽性後の再検査に関する別のレポート、「2013年1月~2017年6月のEnglish National Screening Programmeにおけるクラミジア再検査のモニタリング率」では、イングランド及びPHE Centreエリアにおける四半期ごとの再検査率が示されている。2013年以降、イングランドの四半期ごとの再検査率は、非専門のセクシャルヘルスサービス(SHS)において10.9~14.2%、専門のSHSでは11.5~14.0%で推移している。専門のSHSにおける再検査率は2013年第1四半期の11.7%から2017年第2四半期の13.1%へと上昇した。再検査での陽性率は、非専門のSHS(11.2~14.3%)と比べて専門のSHS(15.8~18.7%)で一貫して高かった。これらの所見から、NCSP患者管理ガイダンスに、約3カ月後の再検査実施を組み入れることが勧められる。

イングランドにおけるパルボウイルスの流行(2018)

Increased parvovirus activity in England (2018)

パルボウイルスB19は小児のコモンディズィーズである伝染性紅斑の原因となる。伝染性紅斑は、典型的な症状である頬の発赤のためにリンゴ病の名前で良く知られており、これは発疹や発熱と共にこの疾患の特徴的な症状である。しかし、正確な臨床診断は困難で、風疹のような他の感染症との鑑別は難しい。
温暖な国では、4、5年サイクルでパルボウイルスB19の流行がみられ、通常2~3年間流行し、その後の数年間は流行がおさまる。2017年のパルボウイルスB19感染例の報告はかなり多かったが、流行レベルは前回のピークであった2013年のレベルには達しなかった。今年もパルボウイルスB19の流行が報告されており、感染例数は2013年の水準を超えると予測されている。パルボウイルスB19は届出疾患ではなく、検査実施の実態は国内でばらつきがあると考えられる。妊娠中に発疹を呈する女性を除き、パルボウイルスB19の検査をルーチンに行うようなリコメンデ―ションはない。
妊娠20週以内の感染は胎内死亡及び胎児水腫のリスクを高める。感染すると、通常は軽度の発熱を認めるが、赤血球のターンオーバーが速い患者(例えば、鎌状赤血球症など溶血性貧血を基礎疾患として有する)では、感染により一過性の再生不良性貧血となり、免疫力の低下した患者では赤芽球癆及び慢性貧血となる可能性がある。このような患者は高度のウイルス血症となり、感染しやすいと考えられる。臨床医は、NICE Clinical Knowledge Summaries及び院内感染・市中感染、妊婦の感染の管理に関する国のガイドラインを参考にすべきである。