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67号 結核対策におけるビデオ直接監視下治療
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結核対策として、活動性結核や潜在性結核感染の患者が抗結核薬を確実に内服することが極めて重要である。そのため、患者が抗結核薬を結核担当者の目の前で内服するところを確認する直接監視下治療(DOT:directly observ ed therapy)が推奨されている。しかし、結核担当者のマンパワーや経済性や患者数などの問題により、DOTを実施することが困難なことがある。
最近、ビデオ直接監視下治療(VDOT:v ideo directly observ ed therapy)が利用されるようになってきた。これは患者が抗結核薬を内服するところを、Webカメラ、タブレット、ビデオフォン、スマートフォンなどを介して、医療従事者が遠隔的に観察する方法である。VDOTによって、本人が日常的に受診する必要はなくなり、ビデオを介して内服することが可能となる。この方法は患者中心の対策であり、かつコスト的に有効である。そして、治療の遵守率を確保できる信頼できる方法でもある。VDOTを潜在性結核感染の治療で用いた報告があるので紹介する1 )

発端患者

2015年2月27日、ジョンソン郡保健所は地域の医師から「高校生に結核の疑いがある」との連絡を受けた。患者には3カ月の咳嗽、倦怠感、寝汗、25ポンド(約11kg)の体重減少、異常な胸部レントゲン像があった。患者は迅速に自宅隔離され、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミドによる標準的な4剤治療を開始して、確認検査および感受性検査を待つこととなった。喀痰検査が採取され、抗酸菌の顕微鏡検査が実施され、培養も実施された。喀痰は抗酸菌陽性でグレード4であることから、高レベルの感染性があることを示していた。喀痰は3月3日に拡散増幅検査にて結核が確定し、3月30日に感受性あり(結核治療で通常投与される抗菌薬に感受性あり)と報告された。治療は2015年8月に完了した。

潜在性結核感染の治療

発端患者の高校は約2,000人の生徒が登録されており、主に非ヒスパニックの白人(77%)およびヒスパニック(10%)であった。発端患者が同定されてから、家族および社会的接触者の25人のうち23人(92%)、および発端患者と少なくとも1クラスを共有していた高校生とスタッフ424人のうち385人(91%)が結核の検査を完了した。そして、高校生およびスタッフ41人、家族内接触者4人、社会的接触者5人の合計50人がIGRA(インターフェロンγ遊離測定法:Interferon-gammareleaseassay)陽性となった[表1]。これら50人の全員に医学的評価を実施し、活動性結核を除外した。そして、潜在性結核感染の治療として、3つの治療の選択肢が与えられた。

  1. イソニアジドの連日内服を9カ月実施し、自己管理し、保健所に毎月受診する。
  2. リファンピシンの連日内服を4カ月実施し、自己管理し、最初の月は2週間毎に、それ以降は月に1回、保健所に受診する。
  3. リファペンチンとイソニアジドの12回の週1回内服をDOTでおこなう。

9カ月のイソニアジドの連日内服を選択したのは7人であり、そのうち6人が9カ月の治療のす てを完了し、1人は治療を中断した(理由不明である)。4カ月のリファンピシンの連日内服を選択したのは16人であり、全員が治療を完了した。リファペンチンとイソニアジドの12回の週1回内服をDOTでおこなうことを選択したのは27人であり、26人が治療を完了した。最終的に、50人のうち48人(96%)が治療を完了した[表2]。

[表1]結核の高校生の接触者における検査結果と治療

同定された接触者
学生および
スタッフ
家庭内
接触者
社会的
接触者
合計
検査結果、
治療の開始、
完了
(n=424)
No.(%)
(n= 4 )
No.(%)
(n=21)
No.(%)
(n=449)
No.(%)
検査の完了* 385(91) 4(100) 19(90) 408(91)
潜在性結核感染 41(11) 4(100) 5(26) 50(12)
治療の開始§ 41(100) 4(100) 5(100) 50(100)
治療の完了 40(98) 4(100) 4(80) 48(96)

*同定された接触者の中の
†検査が完了した接触者の中の
§結核の検査が陽性となった接触者の中の
¶治療を開始した患者の中の

[表2]結核の学生の潜在性結核感染の接触者における治療レジメと完遂率

潜在性結核感染の治療の選択肢 治療オプションを選択した人の数 治療を中断した人の数 治療を完了した人の数
9カ月の連日のイソニアジド、
自己管理
7 1(14) 6(86)
4カ月の連日のリファンピシン、
自己管理 *
16 0(-) 16(100)
12週の週1回のリファペンチンと
イソニアジド、DOT
27 1(4) 26(96)
通常DOT 12 0(-) 12(100)
VDOT 15 1(7) 14(93)
合計 50 2(4) 48(96)

略語:DOT=directly observed therapy, VDOT=video directly observed therapy
*最初の月は 2週間毎に、それ以降は月に1回、保健所に受診する

ビデオ直接監視下治療

潜在性結核感染の患者50人中27人(54%)が12回のイソニアジドとリファペンチンの週1回内服を選択したが、これはDOTを必要とした。結核の調査は春に実施されたので、治療は夏を超えて実施する必要があった。そのため、保健所は学校と協力して、DOTを実施することができないと判断した。それ故、保健所は州の結核監査役と相談して、VDOTを実施することとした。VDOTに適格かどうかについて、患者は特別な適格性必要要件を満たす必要があった[表3]。27人のうちの15人が通常のDOTよりもVDOTを選択した。VDOTを介して監視されていた患者の1人が副作用にて治療を中止した。残りの14人は100%の遵守率を持って治療を完了した。また、通常DOTを実施した学生も全員が治療を完了した。
VDOTは移動距離やスタッフの時間を推定2,066ドル節約し、患者は国際旅行や家族移転の間も治療を続けることができた。VDOTは活動性肺結核の人の治療の期間にのみ用いられてきたが、高い遵守率と完了率を確保できるので、結核スタッフと患者の両方の費用と時間を減らすことができる実行可能な選択肢である。

[表3]リファペンチンおよびイソニアジドの週1回の12回内服においてVDOTを選択した潜在性結核感染の患者のモニタリングおよび適格性の必要条件

モニタリングの要件

  • 開始する前に、ベースラインの検査結果を得る。
  • 保健所にて最初の4回を完了し、合併症のないことを確認する。
  • 4回目のアポイントメントで検体を採取し、今後のVDOTのための薬剤を受け取る。
  • 8回目および12回目の内服のため、臨床的評価のため、通常の検査のために、外来受診に戻ることを同意する。

適格性の必要条件

  • 遵守不充分のリスクファクター(ホームレス、薬物乱用、精神的疾患、心のゆとりの減少、記憶障害)がない。
  • 治療を完了する気がある。
  • VDOTのスタッフが使える言語を話す。
  • 薬剤を正確に見分けることができる。
  • VDOT機器にアクセスして、それを実際に適切に使用できる。
  • 個人通信のための装置が利用できる。

文献

  1. CDC. Use of video directly observed therapy for treatment of latent tuberculosis infection
       Johnson County, Kansas, 2015
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/66/wr/pdfs/mm6614a3.pdf

矢野 邦夫

浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 衛生管理室長