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vol.19 アルコール性擦式手指消毒薬の適用時間を15秒に短縮することが、新生児集中治療ユニットにおける手指消毒行動の頻度を改善させる可能性
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背景

アルコール性擦式手指消毒薬に関して、現在の推奨される適用時間である30秒は、臨床現場で実際に費やされている時間よりも長い。我々は、15秒というより短い適用時間が新生児集中ケアにおいて細菌学的で安全であるかどうか、また手指消毒行動の頻度に関する遵守に正の影響を与えるかどうかを検討した。

方法

15秒以内の手指消毒薬の抗微生物効果を決定する実験を行い、NICUの臨床的状況において短時間の手指消毒手順が与える影響を評価する臨床的観察を実施した。独立した観察者が、シフトごとの手指消毒行動の頻度を監視した。

結果

調査した全ての手指消毒薬が、対照である60%(v/v)イソプロパノールの30秒適用に比べ、15秒以内で同等または有意に高い効果を示し、要件を満たしていた。微生物学的には、適用時間を15秒に減らしても30秒の手指消毒と比較して同等の効果が得られ、むしろ手指消毒行動の頻度を有意に増加させる結果となった(1時間あたり 7.9±4.3回 vs 5.8±2.9回; P=.05)。・ケ・晢スエ・ー豬キ螟冶ォ匁枚Pickup vol.19-1

結論

時間の圧力と作業量は手指消毒遵守の障壁として認識されている。従って、試験され十分に評価された手指消毒製剤を使用して行う手指消毒動作の推奨時間を減らすことは、臨床現場において手指衛生遵守を向上させる可能性がある。

監修者コメント

手指消毒には様々な障壁があるが、推奨される時間が長いことがその一つである。実際に使っている時間は様々な報告があるが、5~24秒程度であり、WHOの手指衛生ガイドラインが推奨する20~30秒を満たすのは困難である。そこで著者らは少しでも手指消毒に要する時間を短縮することを目指し、15秒での効果を検証した。その結果、10種類の手指消毒薬全てにおいて30秒の手指消毒に劣らない結果となり、15秒でも十分であることが推測された。ただし、本研究では30秒の手指消毒と同じ量(平均3.4mL)を手に取って手指衛生しており、15秒では乾燥が終わっていない可能性があるが、その点については触れていない。