消毒薬のQ&A

消毒薬のQ&A

消毒薬の基礎知識

開封後の使用期限は?

開封した消毒薬であっても、原則的にはそれらの製品容器に記載の使用期限まで使用可能です。それぞれの消毒薬の詳細は次のとおりです1)

グルタラール

緩衝化剤を添加したグルタラール(ステリゾール®、ステリスコープ®など)は経時的に分解するため、使用開始後の本薬の使用期限はおおよそ7~28日間です(製品や室温によって異なる)。
ただし、グルタラールを内視鏡自動洗浄機で用いる場合では、その使用期限は使用日数に加えて使用回数にも左右されます。使用回数が多くなると、水で希釈されて有効濃度が低下するからです。2~2.25%製品では7~10日間もしくは20回、3%製品では21~28日間もしくは40回、3.5%製品では28日間もしくは50回が使用の目安となります。

フタラール

緩衝化剤が不要なフタラール(フタラール消毒液0.55%「ケンエー」、ディスオーパ®など)では、グルタラールのような経時的分解はありません。したがって、水による希釈のみを考慮すれば良いです。内視鏡自動洗浄機では30~40回を使用の目安としてください。

過酢酸

緩衝化剤を添加した過酢酸(アセサイド®、エスサイド®)は経時的に分解します。14日間の室温保管で、0.3%液は半分程度の濃度になります。したがって、使用開始後の使用期限は、内視鏡自動洗浄機での使用で7~9日間もしくは25~30回が目安となります。
表1に、高水準消毒薬(グルタラール、フタラール、過酢酸)の使用開始後の使用期限をまとめました。

表1.高水準消毒薬の使用期限*
消毒薬 使用法 使用期限 使用期限を
左右する因子
グルタラール
ステリゾール®
ステリスコープ®
など
内視鏡自動洗浄機 2~2.25%製品:
20回もしくは7~10日間
3%製品:
40回もしくは21~28日間
3.5%製品:
50回もしくは28日間
・経時的な分解
・水による希釈
浸漬容器 2~2.25%製品:
7~10日間
3%製品:
21~28日間
3.5%製品:
28日間
フタラール
フタラール消毒液0.55%「ケンエー」
ディスオーパ®
など
浸漬容器 内視鏡自動洗浄機 30~40回 ・水による希釈
過酢酸
アセサイド®
エスサイド®
内視鏡自動洗浄機 25~30回もしくは7~9日間 ・経時的な分解
・水による希釈

*グルタラールや過酢酸では緩衝化剤を添加後の使用期限。

次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムの使用期限は、製品間で大きく異なります。たとえば、医薬品では11か月~3年間と幅があり、雑品では不明です。また、室温保管で良い製品と冷所(1~15℃)保管すべき製品とがあります。
一方、次亜塩素酸ナトリウムの希釈後の安定性は、保管条件などで異なります。たとえば、直射日光下での保管では数時間で分解します(図1)。また、気温が高いほど分解しやすくなります。
しかし、遮光容器内では希釈後の次亜塩素酸ナトリウムは比較的安定です。したがって、希釈後の次亜塩素酸ナトリウムの交換時期は、気密の遮光容器で1か月間程度までとして差し支えありません。この際、冷所保管が指示されている製品では、その希釈液も冷所保管が必要です。
なお、希釈した次亜塩素酸ナトリウムを作っておく代わりに、希釈済みの製品(ジアエンフォーム®など)を購入しておく方法もあります。

図1.直射日光下での0.1%(1,000 ppm)次亜塩素酸ナトリウムの安定性

ポビドンヨード

ポビドンヨード(イオダイン®、イソジン®Mなど)の50~100倍希釈液などは、洗面器などの開放容器中ではすみやかに分解します。したがって、この場合での使用期限は24時間とします。

アルコール

アルコールは揮発性があるので、他の容器に移しかえて用いる場合では、移しかえる容器の気密度によって使用期限が異なってきます。たとえば、万能つぼ中のアルコール綿球の使用期限は、7~14日間程度としてください。

速乾性手指消毒薬

速乾性手指消毒薬の有効成分(アルコール、クロルヘキシジン、ベンザルコニウム塩化物など)はいずれも、数年間にわたって安定です。また、一流メーカー品の速乾性手指消毒薬では、容器内のアルコールが揮発しにくい構造になっています。さらに、速乾性手指消毒薬は消毒用エタノールを含有するので、使用中に微生物汚染を受けることはありません(チリやホコリなどの混入による芽胞汚染を除く)。
以上から、開封後の速乾性手指消毒薬の使用期限も、製品容器に記載の使用期限までです。ただし、物流在庫の観点から6か月や1年間などの使用期限とする施設が多いです。

クロルヘキシジン、ベンザルコニウム塩化物、両性界面活性剤

クロルヘキシジン(ステリクロン®、ヒビテン®など)、ベンザルコニウム塩化物(ザルコニン®、オスバン®など)および両性界面活性剤(サテニジン®、テゴー51®など)では、10%液などのみならず希釈・滅菌済みの製品であっても、製品容器に記載の使用期限まで使用可能です。ただし、希釈・滅菌済み製品で、注ぎ口に手指などが触れた場合には廃棄としてください。

引用文献

  1. 尾家重治: シチュエーションに応じた 消毒薬の選び方・使い方. じほう pp. 55-64, 平成28年4月20日 第2刷発行.