消毒薬のQ&A

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ケア関連の感染予防・対策

胃瘻管理での酢酸水(酢水)の有効性は?

酢水が感染対策に有効とのデータは見当たりません。また、リスク管理の観点から、酢水の使用は勧められません。
食酢はpH効果により静菌作用を示します1-3)。お寿司が腐りにくくなるのも、この効果からです。したがって、酢水を常に充填しておけば、ある程度の静菌効果があると考えられます。しかし、胃瘻孔チューブに酢水を常に充填しておくことは不可能です。また、酢水の殺菌効果は次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒薬と比べるとはるかに弱いですし、有機物の混入でその殺菌効果は消失します(図1)。すなわち、胃瘻管理での酢水の効果は限定的と推定されます。
実際、食酢(図2左)の4倍希釈液(約1%酢酸)のフラッシュ群と白湯のフラッシュ群での腸瘻チューブ内腔の微生物汚染について調べたところ、使用開始後7日目の腸瘻チューブ内腔の細菌数はいずれの患者でも105レベル/スワブでした(n=6)。Acinetobacter spp.、Proteus spp.および Enterobacter spp.などの汚染を受けていました。
一方、胃瘻チューブ内へ日本薬局方酢酸(約30%酢酸、図2右)15mLと白湯3 mLとの混合液(約25%酢酸)をフラッシュして、患者が死亡した事例があります4)。誤って日本薬局方酢酸の原液をフラッシュすると重大な結果を招くのです。
以上から、胃瘻管理のための酢水の使用は勧められません。胃瘻チューブ内のフラッシュには、白湯や水道水などを用いるのが良いと推定されます。

図1.Serratia marcescens IFO 3936に対する食酢および次亜塩素酸ナトリウムの効果(25℃)

ミツカン穀物酢(酸度4.2%)を用いた.

約4%酢酸を含有 約30%酢酸を含有

図2.食酢(左)と日本薬局方酢酸(右)

引用文献

  1. Entani E, et al: Antibacterial action of vinegar against food-borne pathogenic bacteria including Escherichia coli O157:H7. J Food Protect 61: 953-959, 1998.
  2. RutalaWA, et al: Antimicrobial activity of home disinfectants and natural products against potential human pathogens. Infect Control Hosp Epidemiol 21: 33-38, 2000.
  3. Entani E, et al: Antibacterial action of vinegar against food-borne pathogenic bacteria including Escherichia coli O157:H7. J Food Protect 61: 953-959, 1998.
  4. 公立大学法人横浜市立大学附属病院 酢酸の取扱いに関する医療事故にかかる事故調査委員会:酢酸の取扱いに関する医療事故にかかる事故調査報告書,平成25年8月.