消毒薬の選び方

消毒剤の毒性、副作用、中毒

6.ヨードチンキ(Iodine Tincture)

毒性

(単位:mg/kg)

    LD50 MLD LC50
ヒ ト 経口   28  
マウス 経口 1000    
22000    
皮下 >8650    
ラット 吸入     137ppm/1時間
経口 14000    
皮下 10500    
ウサギ 経口 10000    
  5  
皮下   175  
イヌ 静脈   40  
経口   800  
  • ・ヒト最低中毒量(TDL0):25mg/kg(経口)
  • ・ヒト最低中毒濃度(TCL0):1mg/m3(吸入)

致死量

ヒト経口推定致死量
30~50mL(フリーのヨードとして2~4g)

(ヨウ化カリウムはほとんど毒性がない)

副作用

ヨードチンキのヨウ素は、膣や口腔などの粘膜、熱傷部位及び新生児の正常皮膚などからよく吸収される特性があり、これらの部分に頻回使用すると、血中ヨウ素濃度が上昇して甲状腺機能異常、代謝性アシドーシス及び腎不全などが生じる。

甲状腺機能障害

1%ヨードチンキの5日間にわたる頻回使用で、新生児5名に甲状腺腫や甲状腺機能低下症が生じた。

接触皮膚炎

まれにヨード疹、掻痒感が現われる。

中毒症状

経口の場合

中毒症状は主として胃腸症状である

  • 口中金属性味覚、口腔・咽頭・食道の灼熱感(粘膜の褐色化)
  • 反射性嘔吐と激しい胃腸炎、口渇、血性下痢、腹痛、下血
  • 発熱、頭痛、めまい、精神錯乱、せん妄、昏迷
  • 声門浮腫、吸引性肺炎、肺浮腫、喉頭浮腫による呼吸困難、窒息
  • 血圧低下、頻脈、チアノーゼ、ショック、虚脱、麻痺
  • 腎障害(蛋白尿、乏尿、無尿、出血性腎炎)
  • 尿毒症 → 昏睡 → 死(ヨードにより一時的に唾液腺やリンパ節の腫脹が起こることがある)

※回復期に食道及び幽門狭窄を起こすことがある

処置法

経口の場合

  1. 胃洗浄(腐蝕が進行しているときは禁忌)
    1%バレイショデンプン液で胃洗浄 <ヨードデンプン反応を利用>
    1%チオ硫酸ナトリウム液、牛乳でもよい(直ちに使用できない場合は微温湯でも可)

    <胃洗浄できない場合>
    3%バレイショデンプン液500mLを数回に分割して経口投与する
  2. 拮抗剤投与
    1%チオ硫酸ナトリウム液100mLを経口投与する
  3. 呼吸管理(酸素吸入、気管挿管、人工呼吸)
  4. 輸液投与
    電解質補正も行う
  5. 対症療法
    ・血圧低下にはドパミン注(イノバン®、カタボン®)、ノルアドレナリン注(ノルアドリナリン®
    ・アシドーシスの是正
    ・痛みに麻薬投与
  6. 重症の場合
    血液透析(HD)を行う