ケンエーIC News 感染症トピックス
2019年11月

95号 市中肺炎の治療のためのNICE推奨

英国の国立医療技術評価機構( NICE:National Institute for Health and Care Excellence )が「肺炎(市中):抗菌薬処方」を公開している1)。この中で推奨についてのビジュアルサマリーが示されていたので紹介する[図]。

icnews-no95_01

抗菌薬の選択:18歳以上の成人:抗菌薬*1および投与期間*2

軽症の場合の第一選択経口抗菌薬
(臨床的な判断およびCRB65スコア=0もしくはCURB65スコア=0or1に基づく)*3

・アモキシシリン500mgを1日3回×5日*4

ペニシリンアレルギーもしくはアモキシシリンが不適当(例、非典型病原体が疑われる*5)で、
軽症な場合の代替経口抗菌薬*3

・初日にドキシサイクリン200mg、以降は100mgを1日1回×4日(合計5日のコース)*4
・クラリスロマイシン500mgを1日2回×5日*4
・(妊婦)エリスロマイシン500mgを1日4回×5日*4

中等症の場合の第一選択経口抗菌薬(臨床的な判断およびCRB65スコア=1or2もしくはCURB65スコア=2に基づく);入手できれば微生物検査結果によって手引きする*3

・非典型病原体が疑われるならば*5、アモキシシリン500mgの1日3回×5日*4に加えて下記を投与する
クラリスロマイシン*6500mgを1日2回×5日*4
もしくは
(妊婦)エリスロマイシン*6500mgを1日4回×5日*4

ペニシリンアレルギーで、中等症の場合の代替経口抗菌薬*3;入手できれば微生物検査結果によって手引きする

・初日にドキシサイクリン200mg、以降は100mgを1日1回×4日(合計5日のコース)*4
・クラリスロマイシン500mgを1日2回×5日*4

重症の場合の第一選択経口抗菌薬(臨床的な判断およびCRB65スコア=3or4もしくはCURB65スコア=3~5に基づく);入手できれば微生物検査結果によって手引きする*3

・アモキシシリン・クラブラン酸500/125mgを1日3回(内服)または1.2gを1日3回(静注)*7×5日*4に加えて下記を投与する。
クラリスロマイシン500mgを1日2回(内服or静注)×5日*4
または
(妊婦)エリスロマイシン500mgを1日4回(内服)×5日*4

ペニシリンアレルギーで、重症な場合の代替抗菌薬*3;入手できれば微生物検査結果によって手引きする

・レボフロキサシン*8500mgを1日2回(経口or静注)*7×5日*4
フルオロキノロンが適切でなければ、地域の微生物学者に相談する。

[備考]
*1. 特別な集団(肝障害、腎障害、妊婦、授乳中、静注用(または筋注用)抗菌薬の投与など)における適切な使用と投与量については英国国民医薬品集を参照する。
*2. 経口投与は速放剤についてである。
*3. 患者が経口薬を内服できて、重症度が静注用抗菌薬を必要としていなければ、第一選択として経口抗菌薬を投与する。
*4. 微生物検査結果が長期投与を必要とすることを示さない限り、また、患者が臨床的に安定しない限り(過去48時間以内の発熱or臨床的不安定性[収縮期血圧<90mmHg、心拍数>100/分、呼吸回数>24/分、室内気での動脈血酸素飽和度<90%もしくはPaO2<60mmHg、のなかの1つ以上]、抗菌薬は5日以降は中止する。
*5. 肺炎マイコプラズマは約4年毎にアウトブレイクする。
*6. 非定型病原体が疑われたら、アモキシシリンにマクロライド系を加えることを考慮する。微生物学的検査結果が入手きたら、それを再吟味する。
*7. 48時間までに静注用抗菌薬を再吟味し、可能ならば経口抗菌薬への切り替えを考慮する。
*8. フルオロキノロン系の使用についての制限および予防策について医薬品・医療製品規制庁の助言を参照する。これは稀な報告(手足が動かなくなり、筋骨格系および神経系システムに影響する長期もしくは不可逆的な副作用の可能性)ゆえである。警告には「重症副作用の最初の症状(腱炎など)がみられたら、治療を中止する」「60歳以上の人々には特別に注意して処方する」「コルチコステロイドとの併用を避ける」が含まれる。

C(U)RB65=意識状態confusion,(尿素窒素urea>7mmol/l),呼吸数respiratory rate≥30/min,血圧blood pressure[収縮期<90mmHg]or[拡張期≤60mmHg]年齢age≥65

抗菌薬の選択:生後1ヶ月~18歳未満の小児および若年者:抗菌薬**1
および投与期間**2

症状や徴候が重症でない場合(臨床的な判断に基づく)の第一選択経口抗菌薬**3

・アモキシシリン

生後1~11ヶ月 125mgを1日3回×5日**4
1~4歳 250mgを1日3回×5日**4
5~17歳 500mgを1日3回×5日**4

ペニシリンアレルギーもしくはアモキシシリンが不適当(例、非典型病原体が疑われる**5)で、症状や徴候が重症でない場合(臨床的な判断に基づく)の代替経口抗菌薬**3

・クラリスロマイシン

生後1~11歳 8kg未満 7.5mg/kgを1日2回×5日**4
8~11kg 62.5mgを1日2回×5日**4
12~19kg 125mgを1日2回×5日**4
20~29kg 187.5mgを1日2回×5日**4
30~40kg 250mgを1日2回×5日**4
12~17歳 250~500mgを1日2回×5日**4

・エリスロマイシン(妊婦)

8~17歳 250~500mgを1日4回×5日**4

・ドキシサイクリン**6

12~17歳 初日に200mg、以降は100mgを1日1回×4日(合計5日)**4

症状や徴候が重症の場合(臨床的な判断に基づく)の第一選択抗菌薬;入手できれば微生物検査結果によって手引きする**3

・アモキシシリン・クラブラン酸
[経口薬投与量]

生後1~11ヶ月 125/31懸濁液0.5ml/kgを1日3回(内服or静注)×5日**4
1~5歳 125/31懸濁液10ml or 0.5ml/kgを1日3回×5日**4,7
6~11歳 125/31懸濁液10ml or 0.3ml/kgを1日3回×5日
or
250/62懸濁液0.3ml/kgを1日3回×5日**4
12~17歳 500/125mgを1日3回×5日**4

[注射薬投与量]**8

生後1~2ヶ月 30mg/kgを1日2回**4
生後3ヶ月~17歳 30mg/kgを1日3回(最大量1.2gを1日3回)**4

非定型病原体が疑われたら、下記のどちらかを併用する**5
・クラリスロマイシン
[経口薬投与量]上記投与量を参考にして、5日間**4
[注射薬投与量]**8

生後1ヶ月~11歳 7.5mg/kgを1日2回(最大500mg/回)**4
12~17歳 500mgを1日2回**4

または
・(妊婦)エリスロマイシン:上記投与量を参考にして、5日間**4

ペニシリンアレルギーで、重症な症状や徴候ある場合(臨床的判断に基づく)の代替抗菌薬;入手できれば微生物検査結果によって手引きする**3―地域の微生物学者に相談する

[備考]
**1. 特別な集団(肝障害、腎障害、妊婦、授乳中、静注用(または筋注)抗菌薬の投与など)での使用と投与量については英国国民医薬品集を参照する。
**2. 経口投与は速放剤についてである。年齢範囲は平均的なサイズの小児に適用しており、実際には、処方者は治療される状態の重症度および同年齢の小児の平均的サイズに関連した小児サイズなどの他の要因を合わせた年齢範囲を用いる。
**3. 患者が経口薬を内服できて、重症度が静注用抗菌薬を必要としていなければ、第一選択として経口抗菌薬を投与する。
**4. 微生物検査結果が長期投与を必要とすることを示さない限り、また、患者が臨床的に安定しない限り、抗菌薬は5日以降は中止する。
**5. 肺炎マイコプラズマは約4年毎にアウトブレイクし、学童期年齢の小児に多い。
**6. 12歳未満の小児でのドキシサイクリンの使用については英国国民医薬品集を参照する。
**7. または、250/62懸濁液5mlを投与する
**8. 48時間までに静注用抗菌薬を再吟味し、可能ならば経口抗菌薬への切り替えを考慮する。

文献

  1. NICE . Pneumonia(community – acquired): antimicrobial prescribing
    https://www.nice.org.uk/guidance/NG138

矢野 邦夫

浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長