各種消毒薬の特徴

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2.グルタラール

特徴

図2に、微生物を消毒薬抵抗性の大きい順にならべるとともに、グルタラール(ステリゾール®など)の抗菌スペクトルを示した。
本薬は芽胞を含むすべての微生物に有効である1-7)
また、アルデヒド系消毒薬であるグルタラールは、材質を傷めにくいという利点を有する。
したがって、本薬は内視鏡消毒に適した消毒薬といえる。ただし、本薬の蒸気は呼吸器系や眼の粘膜を刺激し、また液の付着では化学熱傷(損傷)が生じる8-11)。すなわち、本薬は取り扱いに要注意の消毒薬である。

図2. 微生物の消毒薬抵抗性の強さと、グルタラールの抗菌スペクトル

微生物の消毒薬抵抗性の強さと、グルタラールの抗菌スペクトル

消毒対象

グルタラールの消毒対象は内視鏡であるが12,13)、その使用は内視鏡自動洗浄機で行うのが望ましい。
また、用手法での使用も可能であるが、この際には消毒後のすすぎ(水洗い)を十分に行う必要がある。以下に、グルタラールによる用手法での滅菌例について述べる。

電子内視鏡の滅菌例

電子内視鏡を手術時に複数の患者に使用するなどの場合で、エチレンオキサイドガス滅菌を行う時間的余裕がなければ、グルタラールによる化学滅菌を行う。
手順は以下のようである。
すなわち、使用後の電子内視鏡を十分に洗浄して、本薬へ10~60分間浸漬させる(図3)。
その後に滅菌水(注射用蒸留水など)によるすすぎ(リンス)を行う。
ここで、すすぎには十分量(3リットルなど)の滅菌水を用いる必要がある。

なお、グルタラールによる枯草菌の芽胞の殺滅には106個の芽胞であれば3~6時間を要するものの、103個などの少量の芽胞であれば10~60分間という短時間を要するのみである7,14,15)
したがって、前もっての十分な洗浄により滅菌対象物の付着芽胞数を少量にしておけば、グルタラールによる化学滅菌は10~60分間で可能である。

図3. グルタラールによる電子内視鏡の化学滅菌

グルタラールによる電子内視鏡の化学滅菌

処理後には滅菌水での十分なすすぎが必要である

取り扱い上の留意点

グルタラールの蒸気は呼吸器系や眼の粘膜を刺激するので、その取り扱い時には換気に対する配慮が必要である。
窓の開放や強力な換気装置で、0.05ppm以下のグルタラール濃度とすべきである。また、換気の悪い場所で取り扱うのであれば、紙マスク(マスキー51;興研)などの着用が勧められる(図4)。

また、グルタラール液が付着すると化学熱傷が生じるので、その取り扱い時にはゴム手袋やプラスチックエプロンを着用する。
なお、本薬は強い眼毒性を示すので、眼への飛入に対しても十分な注意が必要である(図5)。

図4. グルタラールの吸入防止に用いるマスク

グルタラールの吸入防止に用いるマスク

図5. 眼への飛入に注意!

眼への飛入に注意!

グルタラールなどの高水準消毒薬では注意が必要である

グルタラールとフタラールの相違点

グルタラールはフタラールに比べて蒸発しやすいので、刺激臭が強い欠点がある。
また、グルタラールはフタラールと異なり、使用前に緩衝化剤の添加が必要となる。さらに、安定なフタラールと異なり、緩衝化剤添加後のグルタラールは経時的に分解する。

一方、グルタラールのランニングコストはフタラールの約1/2と安い。
また、フタラールと異なり、グルタラールではすすぎ(リンス)が比較的行いやすいので、内視鏡自動洗浄機のみならず用手法での使用も可能である。
さらに、グルタラールはフタラールに比べて殺芽胞効果が強いので、化学滅菌剤としての使用も可能である7,16)

引用文献

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