消毒剤の毒性、副作用、中毒

消毒剤の毒性、副作用、中毒 項目一覧

15.クロルヘキシジングルコン酸塩(Chlorhexidine Gluconate)

毒性

(単位:mg/kg)

    LD50
マウス 静脈 12.9
経口 1260
皮下 1140
ラット 静脈 24.2
経口 2000
皮下 3320

ヒトでの経口毒性は低い。

急性毒性

海溟の右耳に鼓膜穿刺にて1%クロルヘキシジングルコン酸塩約0.2mLを注入し、中耳腔粘膜は24時間後にすでに浮腫状を呈した。

亜急性・慢性毒性

ラットによる亜急性毒性試験(3ヶ月間経口投与)及び慢性毒性試験(2年間経口投与)では、腹部リンパ節の巨大細胞の増加が見られたが、その他の変化は見られなかった。

副作用

ショック

粘膜(膀胱、膣、口腔など)や創傷部位に使用して、まれにショック症状(蒼白、胸内苦悶、血圧低下、呼吸抑制、不快感、口内異常感、ぜん鳴、めまい、便意、耳鳴りなど)を起こすことがある。

  1. 71歳、女性。左下肢骨接合術時に創部を0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールで消毒した直後、著明な気道内圧の上昇、血圧低下及びほぼ全身に紅斑が出現するなどのアナフィラキシーショックを起こした。
  2. 58歳、男性。腰椎麻酔後、膝蓋腱断裂創周囲をクロルヘキシジングルコン酸塩で消毒後、生理食塩水で洗浄したところ、約5分後にアナフィラキシーショックを認めた。
  3. 36歳、男性。顎洞炎に対する洞開窓術施行時に0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩を用いて口腔内を消毒し、約10分後にアナフィラキシーショックをきたした。
  4. 67歳、男性。人工血管置換術のため0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールを用いて皮膚消毒を行い、中心静脈カテーテルの挿入、留置を行なった。カテーテル固定中にアナフィラキシーショックを起こし、血圧低下、頻脈、体幹に不規則な紅斑を認めた。
  5. 36歳、男性。0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩で口腔内を消毒した直後、血圧低下、頻脈、膨疹などのアナフィラキシーショック症状が出現した。
  6. 下肢骨折手術に際して麻酔導入後の牽引具刺入部を含む皮膚消毒に4%クロルヘキシジングルコン酸塩を用いたことにより、アナフィラキシーショックをきたした。
  7. 66歳、男性。皮膚消毒に用いた0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールが内頸静脈穿刺時に血管内に入ったことによると推測される、アナフィラキシーショックによる心室細動をきたした。
  8. 62歳、男性。全身麻酔終了時に、0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩で皮膚消毒したことにより、アナフィラキシーショックを起こした。
  9. 24歳、男性。手術創部の消毒に0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩を長期反復連用したことにより、アナフィラキシー反応を起こした。
  10. 19歳、男性。脊椎麻酔後、創洗浄に用いた4%クロルヘキシジングルコン酸塩によりアナフィラキシーショックを起こした。
  11. 59歳、男性。星状神経節ブロック施行の際に0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールによるアナフィラキシー様反応を起こした。
  12. 21歳、男性。全身麻酔中、顔面皮膚及び口腔内を0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩で消毒、その5分後より徐々に血圧が低下、手掌に紅斑を認めた。
  13. 36歳、女性。血管造影に際し、局所麻酔薬の容器に混入していたクロルヘキシジングルコン酸塩により、アナフィラキシーショックを起こした。
  14. 72歳、女性。硬膜外麻酔中に、0.02%クロルヘキシジングルコン酸塩で膣洗浄を行った。その5分後に血圧低下と徐脈を生じ、嘔気を訴え、眼瞼充血、全身発赤浮腫状を認めた。
  15. 25歳、男性。外科的処置施行後、0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩にて口腔内を洗浄した直後、胸内苦悶と不快感を訴えた。また顔面に浮腫、蕁麻疹、口唇にチアノーゼなどを認めた。
  16. 24歳、男性。左肘関節擦過症にて受診し、クロルヘキシジングルコン酸塩で消毒。10分後左眼瞼の痒み、熱感、結膜の充血、全身に地図状の蕁麻疹、咳、呼吸困難出現。
  17. 53歳、男性。下顎骨部分切除術の術前口腔内消毒として、0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩を綿球に浸し、数回消毒。5分後、血圧低下と脈拍数増加、全身皮膚に発赤及び浮腫を認めた。
  18. 30歳、女性。腫瘤摘出術後、閉創前に0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩で創面消毒。20~30秒後に心拍数低下に気づき、血圧低下、呼吸停止、紅斑などのアナフィラキシーショックを起こした。
  19. 61歳、女性。術前に0.4%に希釈したクロルヘキシジングルコン酸塩・スクラブでブラッシングを行った。約2分後に急激な血圧低下、その5分後より全身に発赤及び膨疹がみられるアナフィラキシーショックを起こした。
  20. 56歳、女性。左乳癌に対し乳房温存術、閉創前に0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩で創面消毒。5分後に血圧低下、上肢の発赤がみられるアナフィラキシーショックを起こした。

接触皮膚炎

発疹、発赤、蕁麻疹などの過敏症状の出現が報告されている。

  1. 25歳、女性。クロルヘキシジングルコン酸塩によるうがいを実施したところ、約10分後に全身に膨疹が出現した。
  2. 66歳、男性。両鼠径部の皮疹及び併発した感染症の治療にクロルヘキシジングルコン酸塩を使用したところ、皮疹は増悪し、疼痛も出現した。
  3. 57歳、女性。硬膜外麻酔の術野を0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールで消毒したところ、掻痒を伴う発赤、膨疹などの皮膚症状を呈した。
  4. 0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールの接触部位に圧力が加わり、皮膚刺激が増強された結果、皮膚潰瘍を生じた。
  5. 50歳、男性。点滴の際の消毒にクロルヘキシジングルコン酸塩を使用。両側前腕の点滴部位に一致して掻痒性紅斑が出現。
  6. 60歳、男性。背部のチューブ挿入部位の消毒に0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールを使用。挿入部位の周囲に掻痒のある紅斑を生じた。
  7. 53歳、男性。左耳介の虫刺症のためクロルヘキシジングルコン酸塩にて消毒後、接触皮膚炎を生じた。
  8. 19歳、女性。約1.7%クロルヘキシジングルコン酸塩を使用して手洗いをしたところ、20分後より、前腕から手背にかけて掻痒を伴う発赤(膨疹)が出現した。

角膜障害

高濃度溶液が眼に入ると、重篤な角膜障害が生じる。

  1. 66歳、女性。眼瞼腫瘤切除術の際誤って20%クロルヘキシジングルコン酸塩を使用。激しい疼痛を訴え、結膜浮腫、角膜混濁、角膜中央部のびらんがみられた。視力は0.1であった。大量の生理食塩水により洗眼を実施。2週間経過後、角膜は透明に、視力は1.0まで回復した。
  2. 眼科処置時、誤用により角膜化学腐蝕をきたした。3例が高濃度クロルヘキシジングルコン酸塩、1例がクロルヘキシジングルコン酸塩・エタノールであった。
  3. 59歳、男性。右白内障手術を施行。術前処置の際に、誤って1%クロルヘキシジングルコン酸塩が結膜嚢内に入り、角膜障害を起こした。
  4. ディスペンサー容器を眼の高さに置いていて、飛散した4%クロルヘキシジングルコン酸塩・スクラブが眼に入り、角膜障害が生じた。
  5. 60歳、男性。圧平式眼圧測定の際に角膜上皮剝離を生じた。眼圧計は、0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩・含浸綿で清拭消毒したものを使用。

誤飲例

80歳、女性。5%クロルヘキシジングルコン酸塩約200mLを服用した。強制嘔吐及び胃洗浄を行なったが、その後誤嚥性肺炎によるARDSを認めアシドーシスが進行、血圧は低下し服用から約12時間後に死亡した。

中毒症状

  • 通常の誤飲程度では、ほとんど中毒症状は現れない
  • 大量服用時には悪心、嘔吐、腹痛、下痢が発現すると思われる(咽頭浮腫、食道壊死の報告あり)
  • 局所への作用(脳、脊髄、内耳、中耳への使用は、難聴・神経障害を起こす)
  • 誤って静注した場合は溶血を起こし危険である
  • 誤って浣腸した場合は大腸炎、大腸潰瘍形成の報告あり
  • 膀胱洗浄時、高濃度のものを用いて血尿、膣消毒後にショック

眼に付着した場合

結膜炎

処置法

経口の場合

少量であれば処置不要(経過観察のみ)

  1. 水、牛乳を与える
  2. 胃洗浄(腐蝕作用があるので催吐させない)
  3. 下剤投与
    硫酸マグネシウム(30g → 水200mL)又は、マグコロール®P(50g → 水200mL)
  4. 輸液投与(肝保護剤を加える)
  5. 呼吸管理(気道確保、酸素吸入など)
  6. 対症療法
    ショックに輸液、アドレナリン0.2~0.5mg静注