【医師監修】インフルエンザで1週間熱が下がらないことはある?下がらないときの対応と治療法を紹介
2022.11.28| 感染症・消毒
空気が乾燥した季節は、インフルエンザに注意する必要がある季節です。これまでにインフルエンザにかかってしまい、高熱や強い悪寒、全身の痛みに苦しんだり、1週間ほどの自宅安静を余儀なくされて通学や通勤ができなくなったりと、つらい経験をした方もいることでしょう。
そんな中、インフルエンザにかかり「発熱」が1週間経っても平熱まで下がらなかったことはあるでしょうか。
このコラムではインフルエンザの症状について解説し、発熱が1週間経っても下がらないときに考えられる原因を紹介します。また、熱が下がらないときにすべきことや、インフルエンザの治療法と治療のタイミングについても解説します。
インフルエンザの症状について解説
日本での季節性インフルエンザは例年、11月下旬から12月上旬にかけて流行が始まり、翌年1月から3月頃にかけて全国的に流行のピークをむかえます。特にA型やB型のインフルエンザウイルスに感染すると、数日の潜伏期間を経てさまざまな症状が突然現れることになります。まずはインフルエンザの主な症状を紹介していきます。
●38度以上の発熱
インフルエンザの代表的な症状として、高熱が出ることがあります。38度以上の発熱の場合がほとんどですが、なかには40度を超えることもあります。熱が出る理由は、身体の免疫機能がウイルスと戦うために身体のなかで熱を産生したり、放熱を抑えたりするためです。
●頭痛、関節痛、倦怠感
インフルエンザでは発熱以外に、頭痛や関節痛、筋肉痛が高頻度で現れます。これは、免疫機能の働きによって生成されるプロスタグランジンという物質が、頭や関節などで痛みを誘発するためにおこるからです。
また、身体がウイルスと戦っている間は体力を極度に消耗するため、全身の倦怠感(だるさ)を感じることもしばしばあります。
●喉の痛み
上記の全身症状の他に、喉に痛みを感じるようになることがあります。ただし、喉の痛みは一般的な風邪でも生じる症状であるため、これだけでインフルエンザとは見分けられませんが、インフルエンザでは全身症状が出てから喉の痛みなどの上気道の炎症が遅れて現れることが一般的です。
●くしゃみや鼻水
これも一般的な風邪症状でもみられる症状ですが、風邪の場合にはくしゃみや鼻水が最初からみられるのに対し、インフルエンザでは比較的遅めに現れてきます。
インフルエンザでは熱が1週間下がらないことがある?
インフルエンザでみられる発熱は通常、1週間程度で引くことが多いのですが、1週間経っても平熱まで下がりきらないことがあります。それはどのような原因で起こるのでしょうか?主な原因と対応を紹介していきます。
●免疫低下による重症化
免疫機能が低下していると、ウイルスが体内から消失するまでに時間がかかるため、症状が長引く傾向にあります。そのため、平熱まで下がりきるまで時間がかかってしまいます。
また、心臓や呼吸器に慢性的な疾患のある方や高齢者では、免疫力の低下により症状が長引くことがあるだけでなく、重症化に転ずることがあるので注意が必要です。心配な方は、あらかじめワクチンを接種して対策したり、インフルエンザにかかったら早めに医療機関を受診したりするようにしましょう。
●二峰性発熱
発熱のピークが2回あるもの(いったんは37.5度未満に解熱しても、24時間以内に37.5度以上の熱が再び出ること)を二峰性発熱と呼びます。
抗インフルエンザ薬の効果が十分でなく、ウイルス複製が増加してウイルス量が多くなり、免疫機能の働きで産生される物質が再度の発熱に関与してしまうことが理由の1つとして考えられています。この二峰性発熱は子どもにおいてみられることはありますが、大人では稀です。
●肺炎や気管支炎の併発
肺炎や気管支炎を合併して熱が続いている可能性があります。特に高齢者や幼児などの体力がない方にみられる傾向があります。呼吸器系の症状が続く場合には、重症化する前に治療しておく必要があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
●副鼻腔炎の併発
鼻の周辺に響くような痛みを感じる場合には副鼻腔炎の可能性もあります。副鼻腔炎では微熱が続くことがありますので、副鼻腔炎特有の症状がみられるときには医療機関を受診するようにしましょう。
●中耳炎の併発
中耳炎は耳に痛みを感じたり、聞こえにくさを感じたりすることが主な症状です。耳と鼻をつなぐ耳管を通じて炎症を起こすもので、中耳炎にかかると発熱を伴うためになかなか解熱しないことがあります。抗生物質による治療が必要なケースがありますので、中耳炎かなと思ったら医療機関を受診するようにしましょう。
インフルエンザの治療方法
インフルエンザにかかっても、免疫機能の働きによってウイルスが体内から消失し、次第に軽快していくケースがほとんどですが、発症後48時間以内であれば医療機関で処方される薬(抗インフルエンザ薬)を使用して治療することもあります。医療機関で処方・使用される薬には次の3種類があります。
●飲み薬
タミフル(一般名オセルタミビル)が有名で、発症後48時間以内に服用を開始します。用法は1日2回、時間を決めて服用するのが基本です。症状が軽快してきても5日間は連続して服用するようにしましょう。ゾフルーザ(一般名バロキサビルマルボキシル)という薬も新しい作用機序をもつ内服薬として近年使用され始めています。1回の服用で効果を発揮します。
●吸入薬
吸入薬は2つあり、ともに発症後48時間以内に使用します。リレンザ(一般名ザナミビル水和物)は1日2回、時間を決めて吸入し、5日間連続して使用します。イナビル(一般名ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)は1回のみの吸入で済むくすりです。
●点滴薬
ラピアクタ(一般名ペラミビル水和物)は発症後48時間以内に点滴します。点滴薬ですので、医療機関を受診した際に投薬を受けるものですが、1回の処置で済みます。
インフルエンザで熱が1週間下がらないときは医療機関へ
インフルエンザに罹患すると多くの方は高熱に見舞われますが、発症後1週間も経てば平熱に戻ることが多いです。
もし熱が下がりきらない場合には他の細菌やウイルスに感染している可能性が考えられます。重症化を防ぐ観点からも、早めに医療機関を受診して適切な処置を受けるようにしましょう。

監修者
医師:工藤孝文
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
工藤医師よりコメント
インフルエンザに罹患して発熱が長期に続く場合には、肺炎などの様々な合併症が疑われます。不用意に自己判断をせずに、早めに医療機関を受診するようにして下さい。