Vol. 13

重症熱性血小板減少症候群とダニ

「重症熱性血小板減少症候群」は中国で初めて報告されたダニが媒介するウイルス感染症であり、日本でも110人以上の人々が発症しています。この感染症を引き起こす病原体はSFTSウイルス(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)です。5~8月の発症例が多く、潜伏期は6〜14日間です。症状は発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害や失語など)、リンパ節腫脹、出血症状(皮下出血、下血など)であり、発症者は60~80歳代で多くみられます。殆どの患者が大阪より西の地域で発生しています。死亡率が約3割であるにも拘わらず、有効な抗ウイルス薬やワクチンがないことから、感染を防ぐことが大切です。重症熱性血小板減少症候群はウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するので、マダニに咬まれないようにしなければなりません。

ダニといっても、家庭でよくみられるダニとでは全く種類が異なります。マダニは湿気の高い環境に生息しており、とくに木や草の茂ったところにいます。落ち葉の中を歩いたり、灌木の近くを歩けば、マダニに接触する危険性があります。そのため、小道の中央を歩くようにして、マダニを避けるようにします。もちろん、昆虫忌避薬を利用して防ぐことも可能ですが、帰宅後2時間以内にシャワーを浴びることも有効です。シャワーによって、体に咬みついていないマダニが洗い流されます。また、体表面のマダニをチェックする良い機会にもなります。このとき、腕の下、耳の中および周囲、臍、膝の裏、毛髪部位、毛髪周囲、股間、ウエストを注意深く調べるようにします。衣類は洗濯後に少なくとも1時間、高温の乾燥機に入れておくと、マダニを殺すことができます。

マダニに咬まれていることを見つけた場合には、病院に受診して除去してもらいます。しかし、登山などしていて、数日間病院に受診できない状況ではピンセットでつまんで引き離すことがあります。この場合、皮膚にできるだけ近いところをつまみ、垂直に引き離すようにします。一定の力で引き離すことが大切です。マダニをひねったり、一気に引き抜いたりはしないようにします。そのようなことをすると、マダニの口の部分が引き裂かれ、皮膚の中に残ってしまうからです。もし、口の部分が皮膚に残ってしまったら、ピンセットで口の部分を取り除きます。もし除去できなければ、そのままにしておいて、皮膚が治癒するのを待つことになります。マダニを除去したら、咬まれた部位と手をアルコール、石鹸と水などで十分に清潔にします。