Vol. 31

風邪

冬になると、風邪が流行します。夏でも風邪を引くことがあります。子どもでは年間6~8回、成人では2~4回、風邪を引くと言われています。風邪の症状は鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、喉の痛み、咳などであり、自然に治癒します。原因の殆どがウイルスで、様々なウイルスが風邪を引き起こしています。それらには、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどがありますが、最も頻度の多いのがライノウイルスで風邪の30~50%を引き起こしています。次に多いのがコロナウイルスであり、10~15%を占めています。インフルエンザは風邪には含めません。

ライノウイルスは潜伏期間が2~4日程度であり、鼻詰まり、鼻水、くしゃみ、喉の痛みがみられます。発熱するのは稀です。症状は4~9日続きます。コロナウイルスは潜伏期が2~5日であり、倦怠感、頭痛、筋肉痛、発熱がみられます。症状は6~7日程度続きます。これらのウイルスを症状によって判別することはできません。

風邪にて外来受診する患者のなかには「風邪を早く治したいので抗生物質をください」という人がいます。抗生物質(病院では抗菌薬と呼ぶことが多い)は細菌感染に有効な薬剤であり、ウイルスには効果はありません。そのため、風邪に抗菌薬は使用しないのです。抗菌薬を飲んでも効果が全く見られず、副作用(発疹や発熱など)を経験するだけになってしまいます。ライノウイルスやコロナウイルスなどに有効な抗ウイルス剤はないので、風邪の治療は対症療法だけとなります。対症療法というのは発熱やのどの痛みがあれば、解熱鎮痛剤を飲み、咳があれば鎮咳剤を飲むといった治療です。

喉が痛くて、「口が開きにくい」「つばが飲み込めない」などの症状があるときには必ず受診してください。急性喉頭蓋炎といった重篤な感染症のことがあるからです。この疾患では急に窒息して死亡することがあり、救急外来では最も恐れられている感染症の1つです。また、扁桃周囲膿瘍でも強い咽頭痛がみられます。急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍は細菌感染症なので抗菌薬による十分な治療が必要です。

昔は「風邪をひいたら風呂にはいってはいけない」などといわれていましたが、特に入浴してはいけないという理由はありません。あまりにも体力を消耗していて入浴したくなければ、無理して入浴する必要はないのですが、入浴したければ入浴しても構わないのです。