Vol. 42

抗インフルエンザ薬

インフルエンザに罹患すると発熱、倦怠感、頭痛、食欲不振などの症状がみられます。症状は個人差があり、単なる鼻かぜ程度の人もいれば、インフルエンザ脳症や重症肺炎を合併して死亡する人もいます。症状を早期に緩和したり重症化を避けるために、病院や診療所ではインフルエンザの患者に抗インフルエンザ薬を処方しています。抗インフルエンザ薬にはタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタがあります。タミフルはカプセル、リレンザとイナビルは吸入薬、ラピアクタは点滴薬です。

病院や診療所ではインフルエンザを疑うと、インフルエンザ迅速検査を実施します。この検査は綿棒を鼻腔の奥まで挿入して鼻汁を取り出し、検査するというものであり、10分以内で結果を得ることができます。ただ、インフルエンザを発症してから、24時間以内に検査すると、インフルエンザに罹患していても、結果が「陰性」となることがあります。そのため、翌日に再診して検査することを勧められることがあります。しかし、インフルエンザ流行期ですと、「咳と発熱」があるだけで80%の人がインフルエンザであるというデータがあることから、検査をせずに抗インフルエンザ薬を処方されることがあります。検査もしないのに、処方されることに疑問を持つ方もいるかもしれません。

抗インフルエンザ薬は発症早期に開始すると症状の緩和の効果が大きくなり、開始が遅れると効果は低下します。既に述べたように、迅速検査は発症してから24時間を経過しないと陽性にならないことがあります。そのため、検査するのを遅らせて、陽性であることを確認してから治療を開始するといった対応をすると、抗インフルエンザ薬の開始が遅れることになり、効果が低下してしまいます。インフルエンザの流行期であれば、例え検査が陰性であってもインフルエンザとして治療をするのが一般的です。検査の結果がどうであれ、症状がインフルエンザを強く示唆しているならば、検査をせずに治療を開始することは適切な対応といえます。 

抗インフルエンザ薬は予防薬としても用いられることがあります。インフルエンザの患者の同居家族で、65歳以上の人、慢性の心臓や呼吸器疾患のある人、糖尿病のある人、腎臓の悪い人では予防内服ができます。ただし、自費診療となりますので、支払金額は高くなります。タミフルですと、治療では1カプセルを1日2回、5日の内服ですが、予防では1カプセルを1日1回、7~10日の内服となります。抗インフルエンザ薬の使用によって耐性ウイルスが発生することがありますが、周囲の人々にどんどん伝播することはありません。そのため、必要であるならば、耐性ウイルスを気にせずに抗インフルエンザ薬を治療や予防のために使用してほしいと思います。