Vol. 68

急性鼻副鼻腔炎・慢性鼻副鼻腔炎

最近、「鼻づまりがある」「鼻汁が多くて喉頭に流れ込む」「頭が痛かったり、顔面を抑えると疼痛がある」という症状がみられれば急性鼻副鼻腔炎を疑います。通常、ウイルス性の急性鼻炎に引き続いて副鼻腔炎となります。急性鼻炎と急性副鼻腔炎の両方の症状があるため、急性鼻副鼻腔炎と言われています。「急性・亜急性・慢性」の意味ですが、鼻腔および副鼻腔の炎症による症状の持続期間が4週間未満であれば「急性」、4~12週であれば「亜急性」、12週以上であれば「慢性」と言われています。

急性鼻副鼻腔炎の殆どが7~10日で治癒します。それは原因の多くが感冒ウイルス(ライノウイルスなど)によるものだからです。急性鼻副鼻腔炎の98~99%がウイルス性なので、抗菌薬は基本的に必要ありません。ただし、「厳しい症状が3~4日以上続く」「10日以上も改善しない」「改善傾向であったが、再度、悪化した」というときには細菌性を疑い抗菌薬を用います。細菌性鼻副鼻腔炎の原因菌として多いのが、肺炎球菌とインフルエンザ菌です。この場合はペニシリンを使って治療をします。「急性鼻副鼻腔炎には基本的には抗菌薬は必要ない!」ということを十分理解し、例外的な状況でペニシリンを内服するということになります。

慢性鼻副鼻腔炎は別名、蓄膿症とも呼ばれています。これもまた様々な細菌によって引き起こされていますが、原因としては副鼻腔と鼻腔をつなぐ小さな孔が炎症によって塞がってしまい、交通が途絶えてしまったことによります。交通が途絶えれば副鼻腔にたまった膿が鼻腔に排泄されにくくなるのです。鼻茸(別名、鼻ポリープ)が形成されていることもあります。症状としては「鼻が詰まる」「黄色や緑色の膿性鼻汁が出る」「鼻汁が喉に流れ落ちる」「頭痛がする」「味覚が落ちた」「額や頬が痛い」「眼の奥や奥歯が痛い」「頭が重い」「口臭がする」ということが長期間みられます。通常の抗菌薬による治療だけでは効果が不十分なので、マクロライド(抗菌薬の一種)の少量長期投与という治療やアレルギーが原因となっているならば抗アレルギー薬も使用します。鼻茸が多かったり、腫瘍がみられる場合には手術が必要となります。最近は内視鏡を用いた鼻内副鼻腔手術がなされるようになっていますので、昔のように歯肉を切開しての手術は殆どなされなくなっています。慢性鼻副鼻腔炎の治療は長期の期間が必要ですので、途中で止めることなく、医療機関への通院を継続しなければなりません。