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VOL.128 【医師監修】便秘だと切れ痔になりやすい?関係性と痛みがある場合の対処法を解説

硬い便のせいで毎回排便することが苦痛になっている方は多いかもしれません。硬い便を無理に出そうとすると肛門付近が傷つき、切れ痔になる可能性があります。

今回は、便秘と切れ痔の関係を解説し、その対処法について解説します。便秘気味の方はぜひ参考にしてください。

切れ痔とは?

切れ痔は、医学的には「裂肛(れっこう)」と呼ばれ、肛門付近の皮膚が切れたり裂けたりしてしまった状態を指します。

肛門疾患の診療ガイドライン(2020年版)によると、裂肛は男性よりも女性がなりやすく、年齢層は20~50代に多く、裂肛の患者の20%が便秘であったと記述されています。以下では切れ痔の症状を具体的に紹介するので、自身に当てはまるかチェックしてみてください。

切れ痔の症状

切れ痔の主な症状は次の2つです。

  • ・排便時に痛みを感じる、排便後に痛みが残るがしばらくすると痛くなくなる
  • ・少量の出血があり、トイレットペーパーでお尻を拭いたときに血が付着する、便の表面に血が付いている

切れ痔ができる箇所(肛門縁から歯状線の下部にかけて)には知覚神経が通っているため、皮膚が切れたり裂けたりすることで強い痛みが出ます。

また、排便時には裂けた皮膚を便が刺激するため、硬い便でも柔らかい便でも痛みを感じやすくなります。さらに、皮膚が切れたり裂けたりすることで出血がみられ、それがトイレットペーパーや便に付くことで気づくことが多いです。

切れ痔を繰り返すと、周辺の皮膚が膨れたような「見張りいぼ」や「肛門ポリープ」ができ、肛門が硬くなり狭くなります(慢性裂肛と言います)。狭くなると通常の排便でも切れやすくなり手術が必要になります。

便秘と切れ痔の関係

便秘の症状の1つとして、便が硬くなることが挙げられます。

硬い便を何とか出そうといきむと、肛門付近に負荷がかかり、皮膚が裂けて切れ痔になってしまう可能性があります。

切れ痔は排便時に強い痛みを伴うため、便意があってもトイレに行くのを我慢してしまうこともあります。便意を我慢することで、本来排泄すべき便を腸のなかに溜め込んでしまい、便秘がさらに悪化するという悪循環に陥ることもあります。

そのため、切れ痔にならないように便秘を改善し、悪循環に陥らないよう日ごろから便秘予防をしましょう。

切れ痔になった場合の対処法

切れ痔を繰り返すと、痛みが強くなり重症化してしまう可能性があります。そこで、切れ痔を初期の状態で食い止め、悪化させないための対処法を以下で紹介します。

肛門周辺を清潔に保つ

切れ痔は傷口から細菌が入ると、肛門周囲膿瘍になる可能性があります。便には多くの大腸菌が潜んでいることから、排便時というのは細菌が傷口から入りやすい状況でもあります。

そのため排便後は、温水洗浄便座の洗浄機能やウェットティッシュを活用して、肛門周辺部を清潔に保つようにしましょう。ただし、過度の洗浄は肛門を乾燥させてしまうので、洗浄機能は長時間使用しないようにしましょう。

お尻を温める

肛門周辺を温めると血流が良くなり、痛みの緩和や切れ痔の回復を早める効果が期待できます。お風呂(湯船)にゆっくり浸かったり、カイロなどのグッズを活用してお尻を温めたりしてみましょう。

市販薬を試す

慢性的な切れ痔ではない場合は、痔を治す市販薬を試すのも1つの方法です。患部に塗り込むタイプや注入するタイプがあり、自身で使いやすいものを選んでみましょう。

ただし、市販薬をしばらく使っても症状が緩和されない場合や、頻発する場合などは医療機関を受診してください。切れ痔だと思っていたら、別の病気だったというケースがあるためです。

医療機関を受診する

排便時の痛みや出血など、切れ痔の症状がある場合や、それが続く場合は、医療機関を受診し、専門医に診てもらうのが望ましいです。

とくにお尻からの出血が繰り返し見られる場合には、腸の別の病気が潜んでいる可能性もあるため、必ず医療機関を受診してください。

便秘の原因

切れ痔と便秘の関係は先述したとおり、便秘によって切れ痔が起こりやすく、ときに悪循環を生む可能性があります。

そこで、便秘が起こる原因を知り、未然に対策することで、切れ痔を予防することにもつながります。以下で主な便秘の原因を解説します。

水分不足

口から摂取した水分は小腸や大腸でほとんど吸収されます。食事などで摂取した食べ物は消化され、大腸内をゆっくり移動することで徐々に水分が吸収され、固化します。

水分不足というのは、体が脱水状態であることをイメージしてください。摂取する水分が足りていないと大腸で水分を吸収してしまい、便の水分量が少なくなり、硬い便になりやすくなります。便が硬いと便秘になりやすく、切れ痔を引き起こす原因にもなります。

食生活の乱れ

食事の内容は、便の状態に大きな影響を与えます。

ダイエット中で食事の量が少ない、外食やコンビニ弁当が多い、麺類や丼物など炭水化物中心の食事をしていると、食物繊維が不足してしまいます。食物繊維が不足すると便のカサが増えず、便の水分が減り、腸壁を刺激する力が弱くなることで、腸の動きが鈍くなります。そうなると、便の送達が十分にできなくなり、腸内に便が留まりやすくなって、便が硬くなります。

また、食生活の乱れによって腸内環境も乱れやすくなるので、便秘に陥りやすいといえます。

運動不足

運動不足で腹筋が弱くなると、便を押し出すための筋力が低下し、便秘になりやすくなります。

運動をするのが困難な高齢者の方や、ダイエットで過度な食事制限をしている方は、お腹周りの筋肉量が減り、排便時にいきみにくくなります。

また、運動不足は便を肛門のほうへ動かすぜん動運動も低下させるといわれています。

便秘の解消方法

便秘を解消するために、まずは生活習慣を見直すことが大切です。自身の便秘の原因を見極め、以下に紹介する解消法をできるものからトライしてみましょう。

1日2リットルを目安に水分をこまめに摂る

便秘を解消するには、体が水分不足に陥らないように水分を十分に摂ることが大切です。水分をしっかり摂ることで硬い便になるのを防ぎ、便秘解消効果が期待できます。

水分は1日2リットルを目安に、こまめに摂取するようにしましょう。また、飲み物だけでなく食事からも水分を摂っているため、3食しっかり摂り、汁物をプラスすることでさらに水分補給ができます。

ただし、利尿作用のあるお茶やコーヒーは、体内の水分を排出するように働くため、できるだけ避けるようにしましょう。

バランスの良い食事を摂る

便秘解消を目指すなら、食物繊維を意識してバランスの良い食生活を心がけましょう。野菜や果物、海藻類をいつもの食事にプラスするだけで食物繊維が手軽に摂れます。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類がありますが、どちらも便秘解消には良い効果をもたらしてくれます。

水溶性食物繊維はそれ自身が水分を保持して腸に届くので、便に適度な水分を与え、腸内の善玉菌のエサにもなってくれます。

不溶性食物繊維は便のカサを増やすので、腸壁を刺激し、腸の動きを促す効果が期待できます。

適度に運動する

運動を取り入れると血行が良くなったり、自律神経が刺激されたりするので、大腸の動きが活発になります。

例えば、ウォーキングなら1日20~30分するのがおすすめです。また、便を出すときに使う腹筋を鍛える運動も良いでしょう。自身でできる範囲からでも良いので始めてみましょう。

市販の便秘薬を使用する

生活習慣を見直しても便秘が解消しない場合は、市販の便秘薬を試してみるのも良いでしょう。

市販の便秘薬にはさまざまな種類があります。腸を刺激して排出を促す刺激性の便秘薬のほかにも、便に水分を引き寄せて硬い便を柔らかくしながら便秘改善効果が期待できる非刺激性成分である酸化マグネシウムの便秘薬もあります。

刺激性下剤に依存すると薬に体が慣れてきて効果が弱くなり、薬の量が増える傾向になります。下剤は非刺激性下剤を中心に使用することが大事です。

ただし、便秘薬は用法用量を守って服用するようにしましょう。また、便秘薬を試しても便秘が解消しない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

切れ痔と便秘は一緒に治そう

便秘で便が硬くなると切れ痔になりやすく、切れ痔で排便時に痛みがあると、便意を我慢して便秘になりかねません。このように切れ痔と便秘は悪循環に陥りやすいので、同時に治していくことが大切です。

切れ痔を繰り返す場合には医療機関を受診しましょう。自宅では肛門周辺を清潔にし、温めるなどして対処するようにしましょう。

便秘は生活習慣を見直すことで解消を目指せるので、今回紹介した解消法をできる範囲で試してみてください。

また、便秘をなるべく早く解消したい場合は、酸化マグネシウムの便秘薬を試してみることも検討してみてください。

白畑医師よりコメント
便秘と切れ痔は密接な関係があります。便秘は様々な要因によって引き起こされるため自分に合った対策を毎日の生活に取り入れ、便秘予防に取り組み、切れ痔も予防しましょう。切れ痔は重篤な病気ではありませんが大きく日常生活の質を低下させる厄介な病気です。切れ痔の時は長引く前に医療機関の受診をお勧め致します。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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