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VOL.136 【医師監修】浣腸しても便が出ないことはある?頑固な便秘の原因・予防方法も解説

頑固な便秘に悩んで浣腸を使用しても、思うように排便ができないという方もいるのではないでしょうか。浣腸は高い即効性が期待できる薬剤ですが、便秘の原因や使い方によっては、期待する効果が得られない可能性もあります。

今回は、頑固な便秘の原因と対処法、浣腸しても便が出ないときの対応方法をご紹介します。日常でできる便秘の予防方法も解説するので、便秘に悩みがちな方は試してみてください。

なお、対処法を試しても便秘が解消しないときは、早めに医療機関を受診しましょう。

頑固な便秘の原因は?

一口に便秘といっても、さまざまな原因が考えられます。頑固な便秘が起きる場合に考えられる原因を以下で紹介します。

大腸の疾患(器質性便秘)

大腸がんや腸閉塞(イレウス)、痔など、大腸の疾患が原因で、腸管の通過障害が起きている可能性があります。便秘の原因が大腸の疾患の場合、まずは原因となる疾患を治療することが大切です。

便秘薬などで無理に排便しようとすると、腸管が損傷するなどかえって症状を悪化させるリスクがあるため注意してください。便秘が続く場合や、強い腹痛・血便・嘔吐などの症状が見られた際は、早めに医療機関を受診しましょう。

大腸の働きの低下(弛緩性便秘)

腸管のぜん動運動が低下することで内容物が通過しにくくなる状態です。そのため、便が大腸に長く留まります。

高齢者や出産後の女性に多い症状で、腹筋力の低下や運動不足、水分不足、偏った食生活、極端なダイエットなどが要因になると考えられます。

大腸の緊張(痙攣性便秘)

自律神経の乱れなどの要因で腸管が緊張し、内容物が通過しにくくなっている状態です。ウサギの糞のようなコロコロと硬い便が特徴で、便秘と下痢を繰り返すケースも珍しくありません。

大腸の緊張は、ストレスや過敏性腸症候群、自律神経の失調などが要因になると考えられます。

排便反射の低下(直腸性便秘)

排便反射の低下により排便が起きにくくなり、直腸に便が溜まっている状態です。

便を我慢する習慣のある方や寝たきりの高齢者などによく見られる症状ですが、下剤・浣腸の乱用が要因になることもあるため注意しましょう。

服用中の薬の影響

抗コリン作用剤や制酸剤、カルシウム剤など、別の疾患の治療薬の影響で便が硬くなり、便秘を引き起こすことがあります。

便秘が続く場合や症状がひどい場合は、薬の処方を受けた医師に相談してみてください。

ホルモンバランスの影響

生理前の女性や妊婦の方は、ホルモンバランスの変化によって腸の働きが低下し、便秘になるケースも多いです。

一般的に男性より女性のほうが便秘になりやすいのは、ホルモンバランスの乱れが原因と考えられます。

便がしばらく出ないときの対処法

便がしばらく出ない場合は、おなかをマッサージする、便秘薬・浣腸を使うなどの対処法を試してみましょう。

以下で、便がしばらく出ないときに自宅でできる対処法を詳しくご紹介します。ただし、対処法を試しても改善が見られないときは、早めに医療機関を受診することが大切です。

おなかをマッサージする

腸の形に沿って、時計回りに「の」の字を書くようにおなかをマッサージしてください。マッサージで腸管に刺激を与えることで、ぜん動運動や排便を促進させます。

皮膚の摩擦が気になる方は、ボディクリームやオイルなどを塗ってからマッサージすると良いでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬を使う

便秘の対象法として、酸化マグネシウム便秘薬を服用する方法があります。酸化マグネシウム便秘薬は、浸透圧の作用で便の水分量を増やし、排出させやすくする薬です。

酸化マグネシウム便秘薬はクセになりにくいのが特徴です。

浣腸を試す

浣腸を試すのも1つの手です。浣腸の主成分であるグリセリンが腸管に刺激を与えることで、ぜん動運動を促します。

使用後は3~10分ほどで便意を催すことが多いため、すぐに排便をしたいときに用いると良いでしょう。

浣腸しても便が出ないことはある?

一般的に浣腸は、マグネシウム便秘薬や食事改善よりも便秘への即効性が高い傾向があります。浣腸を使っても便が出ないときは、使い方が間違っている可能性があるため、使用方法を再度確認してみてください。

浣腸を使うときは、まずキャップを外して細い部分を肛門に差し込み、説明書やパッケージに記載された容量の薬液を注入します。注入後は、トイレットペーパーや脱脂綿で肛門を押さえ、強い便意を感じるまで待ってから排便を行いましょう。我慢する時間は個人差がありますので、無理のない範囲内で排便してください。

なお、適切な使い方をしても便が出ないときは、早めに医療機関を受診してください。

浣腸に頼る前にできる便秘の予防法

原因にもよりますが、日常的な習慣を変えることで、便秘は予防できる可能性があります。以下では、便秘予防に役立つ習慣を4つ紹介するので、便秘に悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。

便意を我慢しな

便意を感じたら我慢せず、早めにトイレに向かいましょう。便意を我慢する習慣をつけると、排便反射が低下し、便が溜まっても便意を感じにくくなります。

毎朝、便が出やすい朝食後にトイレに座り、排便の努力をするのも良いでしょう。

適度な運動をする

適度な運動習慣をつけることで、腸のぜん動を促す効果が期待できます。便秘解消には、ウォーキング・ヨガなどの全身運動や、排便に必要な腹筋を鍛える運動を試してみてください。

意識的に水を飲む

意識して多めに水分を摂ることも大切です。体内の水分量が少ないと便が硬くなり、便秘につながります。便秘に悩んでいる方は、1日2リットルを目安に、こまめに水分を摂取する習慣をつけましょう。

食事で食物繊維を摂る

食事で食物繊維を摂取することも、便秘予防に効果的です。食物繊維には、便を柔らかくし、かさを増やして排出しやすくする効果が期待できます。

食生活が偏りがちな方は、穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類など、食物繊維が豊富な食材を意識的に摂取してみてください。

ただし、規則正しい排便習慣を整えるには、食物繊維を多く摂るだけでなく、日ごろから栄養バランスの良い食事を摂ることが重要です。

浣腸しても便が出ないときは使用方法を確認してみよう

頑固な便秘には、大腸の緊張や排便反射の低下、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。便秘で困った際は、おなかのマッサージや酸化マグネシウム便秘薬、浣腸などの対処法を試してみてください。

とくに、今すぐ便秘や腹痛を解消したいときは、即効性が期待できる浣腸を使うと良いでしょう。しかし、浣腸に慣れると排便反射が低下して自然に便が出にくくなる可能性があるため、常用は避けてください。

浣腸しても便が出ない場合は、使用方法を再確認しましょう。正しい方法で使用しても便が出ないときは、早めに医療機関を受診することが大切です。

白畑医師よりコメント
便秘は様々な要因の影響で発症します。便秘治療で大事なことは『予防』であり、悩む方は食事や生活習慣、投薬など自分に合ったやり方で積極的に便秘予防に取り組んでいきましょう。

それでも排便困難な頑固な便秘には、浣腸は即効性があり便秘をリセットしてくれるため有効です。しかし、浣腸をしても便が出ない場合は、器質的な疾患(ポリープや癌など)が隠れている可能性や浣腸が効かないタイプの便秘(排便回数現象型便秘:直腸まで便が下りてきていないタイプ)の可能性があるため医療機関を受診して下さい。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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