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VOL.140 【医師監修】浣腸がくせになるって本当?浣腸の仕組みや使用する目安、注意点を解説

便秘で悩んでいるときに浣腸の使用をためらったことはありませんか?浣腸を使うと「くせになるかもしれない」、といった不安がある方も多いでしょう。

そこで今回は、浣腸はくせになってしまうのか解説するとともに、浣腸の使い方や注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

浣腸の仕組みと作用

市販されている浣腸薬は水とグリセリンを主成分とした便秘に効くお薬で、肛門から薬液を注入して使います。

肛門から薬液を注入することによって、腸管内外で浸透圧の差を生じさせ、腸管内に水分が移動します。便がこの水分を吸収して便の容積が増加することで直腸内圧があがり、蠕動運動が促されます。

また、薬液が便に浸透して硬い便を柔らかくして、便の滑りをよくするため、排便しやすくなるのがグリセリン浣腸液の仕組みと作用です。

浣腸を常用するとくせになる?

浣腸を使用するとくせになる、という不安があり、使用をためらう方も多いですが、浣腸を使用してもくせにはなりません。

先述したとおり、浣腸の構成成分は冒頭に説明した水とグリセリンであり、これらが身体的に「依存」を起こすことは医学的に証明されていません。しかし、浣腸を常用することによる「心因的な依存」は起こり得るため浣腸の乱用は注意が必要です。

直腸内に便が溜まっている状態で浣腸を使用することは、直腸内を空っぽにする(=便秘を解消する)ための有用な手段であり、内服薬では改善しにくい直腸性便秘の場合には使って良いお薬です。

直腸性便秘を放置すると、便通の乱れにつながるだけでなく、日常生活にも支障をきたす場合があるため、改善のために浣腸を使うことは決して悪いことではありません。

ただし、浣腸を長期間にわたって常用すると、肛門・直腸の機能が弱まる可能性があるため、浣腸の使用とあわせて生活習慣などの改善による便秘解消に取り組んでいきましょう。

浣腸を使っても良い目安は?

浣腸を使うタイミングに決まりはありません。直腸に便が溜まっていて排泄しにくい状態で使用するほか、長期間排便がなくお腹が張ってきて苦しい場合には浣腸の使用を検討しても良いかもしれません。

浣腸には速効性があるため、すぐにトイレに行ける状態で使用するのが望ましいです。

浣腸を使う際の注意点

浣腸を使う際は説明書をしっかり確認しましょう。以下では浣腸をする際の注意点を紹介します。

立った姿勢で挿入しない

立った姿勢で浣腸を挿入すると、直腸を傷つけるリスクがあります。立った状態は体に力が入ってしまい、ノズルを挿入し難いためです。

浣腸を使用する際は、体の左側を下にして横になったリラックスした状態で、浣腸のノズルを挿入すると良いでしょう。

ご自身がトイレで浣腸する場合は、洋式トイレの便座に浅く腰掛け、少し前かがみの姿勢をとって、斜め後ろからゆっくりノズルを挿入すると良いでしょう。

また、ノズルの先端にオリーブオイルやワセリンを少し塗ると、滑りが良くなって挿入しやすくなります。

適切な量の薬液を注入する

商品の説明書などを参考に、適切な量の薬液を注入しましょう。注入する量が少なすぎると十分な効果が現れません。反対に注入する量が多すぎると排便時に軟便(下痢便や水様便も含む)になってしまう可能性があります。

とくに高齢者の方は少量から使用するようにしましょう。浣腸の効果が強く出たときに下痢を起こし、脱水症状になりやすいので注意が必要です。

薬液を注入した後は脱脂綿などで肛門を押さえ、3分程度待って便意が十分に強まってから排便しましょう。

使用に不安がある方は医師や薬剤師に相談する

浣腸の使用が推奨されない方もいます。例えば、痔の方や大腸周辺部に出血や炎症のある方、大腸周辺部の手術直後の方などは、浣腸を使用してはいけません。

また、心臓に持病のある方、妊娠中の方、ほかの薬を服用中の方などは、医師や薬剤師に相談した上で使用しましょう。

浣腸しないと出ない頑固な便秘の改善方法

長期間便秘症状が続いている方は、排便習慣や生活習慣を見直しながら便秘を改善していきましょう。

以下では日常生活で取り入れやすい便秘の改善方法を5つ紹介します。

便意を感じたら我慢せずトイレに行くくせをつける

便意を我慢する習慣がある方は、早めにトイレに行くくせをつけましょう。

便意を我慢すると、排便反射が低下してしまいます。排便反射は時間が経つと消失するため、直腸内に便が溜まりやすくなります。

起床してから朝食後は排便しやすい状態です。朝はできるだけ時間に余裕を持って、トイレの時間を設けるようにしましょう。

食物繊維が豊富な食事を摂る

食物繊維を摂ることで便秘改善効果が期待できます。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水溶性食物繊維は便を柔らかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やす役割があるので、便秘に悩んでいる方は積極的に摂取しましょう。

食物繊維が豊富な食材として、穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類などがあります。

ただし、食物繊維を多く摂るだけではなく、栄養バランスの良い食事も心がけましょう。

水分をこまめに摂取する

水分が少なく硬い便は排便しにくく、残便感も感じやすい傾向にあります。

硬便や残便感が気になる方は、1日2リットルを意識して水分をこまめに摂取すると良いでしょう。

ただし、水分摂取といっても多量の水を一度に飲むのではなく、こまめに摂取することが大切です。

適度な運動をする

適度な運動により、腸の蠕動運動を促す効果が期待できます。

また、腹部の筋肉を鍛えれば、腸の動きや排便をサポートしてくれます。いきなり激しい運動をするのではなく、ウォーキングやストレッチ、軽い腹筋運動などからはじめてみましょう。

運動はストレス軽減にも一役買ってくれます。過度なストレスが原因になった急性便秘の解消につながる可能性があります。

酸化マグネシウム便秘薬を使用する

排便習慣や生活習慣を見直しても便秘が解消しない場合は、酸化マグネシウム便秘薬を試してみるのも1つの方法です。

酸化マグネシウム便秘薬は、便を柔らかくしながら便秘の改善や便秘に伴う諸症状を緩和してくれる効果があります。

浣腸よりも効果発現がゆるやかで、お腹が痛くなりにくい「非刺激性」の便秘薬です。用法用量を守って服用するようにしましょう。

浣腸がくせになるのは誤解!便秘が続くときは医療機関を受診しよう

浣腸を使うと必ずくせになるというわけではありません。

便秘を放置すると体調や肌に影響が出る可能性もあります。便秘が続いてつらいときは浣腸で排便を促すのも1つの方法です。

ただし、長期間にわたって連用すると直腸の機能を弱める可能性もあります。使う頻度は週に2回程度に留めましょう。使用する際は用法用量や使用上の注意をよく読んで使うとともに、頻回な使用は避けましょう。

浣腸の使用と並行しながら排便習慣や生活習慣の改善にも努め、それでも頑固な便秘が続く場合には医療機関を受診するようにしましょう。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は日常生活改善・適切な食事・運動を心がけ、場合によっては医療機関を受診しましょう。また、排便困難型の直腸性便秘の解消の1つとして浣腸は有効であり、身体的な依存はなく、適切な使い方を熟知しながら便秘予防に取り組んでいきましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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POINT 2 クセになりにくい。 POINT 2 クセになりにくい。