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VOL.142 【医師監修】浣腸を使う際の注意点3つ!適切な使い方や便秘改善の方法も紹介

即効性があり、気になる便秘にすばやくアプローチできる浣腸。

しかし、浣腸での排便を考えている方の中には「浣腸ってどう使えば良いんだろう」「使用時の注意点はある?」と、使い方に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、浣腸の仕組みと正しい使い方、使用時の注意点をまとめて解説します。

また、浣腸以外に試せる便秘の改善方法も紹介しますので、頑固な便秘をすっきり解消したい方はぜひチェックしてください。

浣腸とは?

市販されている浣腸薬は、グリセリンが有効成分で、それを50%濃度に精製水で調製されたものが一般的です。

肛門から薬液を注入すると、浸透圧の差が生じるので、腸壁の水分を腸管内に誘引します。これにより便が軟らかくなり、グリセリンが便の滑りを良くしてくれます。

また、水分の移動により腸壁に刺激を与えて、ぜん動運動を促し、排泄を促進する作用があります。

浣腸は効果が現れるまでの時間が早く、直腸内に溜まった便を排泄するのに適しています。

浣腸の適切な使い方2ステップ

浣腸は安全かつ正しく使う必要があります。その方法を2つのステップに分けて紹介します。

ステップ1.事前準備

浣腸は湯煎で人肌程度に温めておくと良いです。薬液が温めすぎても冷えすぎても、注入時に体への負担が生じてしまいます。

先端のキャップを取り外し、ノズルにワセリンやオリーブオイルなどを塗っておくと良いでしょう。滑りが増し、肛門に挿入しやすくなります。

ステップ2.薬液の注入・排泄

薬液をゆっくりと注入します。例えば30g製品では10秒程度の時間をかけて、薬液を注入するようにしましょう。

注入速度が早すぎると、浣腸液だけが排泄されたり、腹痛を伴ったりします。

注入し終えたらノズルを静かに抜き、ティッシュペーパーや脱脂綿で肛門を押さえて薬液を保持します。

3分以上は待機し、十分に便意が強まってから排泄するようにしましょう。ただし、待機している最中に気分が悪くなってきたら無理をせず、トイレで排泄するようにしましょう。

浣腸を使用する際の注意点

浣腸を使用する際に押さえておきたい注意点を3つ紹介します。

持病や体調に不安がある方は事前に医師に相談する

浣腸の使用がそもそも推奨できない場合があります。次に当てはまる方は浣腸を使用しないようにしましょう。

対象者危険性
肛門周辺部に炎症があったり、腸管から出血があったりする方血液中に浣腸液が移行して溶血(赤血球が壊れること)が起こったり、腎臓の障害が起こったりする危険性があります。
腸管の縫合手術直後の方腸のぜん動運動により縫合した部位が解離してしまうおそれがあります。
妊娠中の方子宮の収縮が促進して流産や早産が誘発されるおそれがあります。

そのほか、硬い便が直腸や結腸に多量に溜まっている方、高齢の方、心臓に重い持病のある方、ほかの薬を服用中の方は、浣腸を使用するにあたって注意が必要です。

使用前にはかかりつけの医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

対象者注意点
とても硬い便が直腸や結腸に多量に溜まっている可能性がある方浣腸液が入りにくい状態で、効果が不十分になることがあります。 また、浣腸しても排泄が不十分になり、腸のぜん動運動により腹痛などを強く感じるおそれがあります。
高齢の方下痢を引き起こし、体液量が減少して脱水状態になるおそれがあります。
心臓に重い持病のある方過度な怒責で心拍数や血圧が上がったり下がったりして、心臓に負荷がかかることがあります。
ほかの薬を服用中の方下痢便になるおそれがあります。

立った状態で薬液を注入しない

立った状態で浣腸する行為は非常に危険です。腸壁を傷つけるおそれがありますので、立った状態ではなく、適切な体勢で行いましょう。

なぜ立位での浣腸が危険かというと、立位ではお腹に余計な圧力がかかったり、肛門の筋肉が収縮したりするので、そのような状態で浣腸をしようとすると、浣腸のノズル部分が挿入しにくくなってしまいます。

浣腸を使うときは、体の左側を下にして横になった状態で、余計な力を入れずにリラックスし、浣腸のノズルをゆっくり挿入するようにしましょう。

この体勢で注入すると、薬液がS状結腸まで流れ込みやすいので、浣腸の効果を実感しやすいです。

洋式トイレに座った状態で浣腸する方法もあります。その場合は便座に浅く腰掛け、少し前かがみの姿勢をとって、斜め後ろからゆっくりノズルを挿入すると良いでしょう。

ただし、全ての浣腸が座った体勢での挿入を推奨しているわけではないので、必ず説明書を読んでから使用するようにしてください。

浣腸は常用しない

グリセリン浣腸はクセになりにくい薬剤ですが、長期にわたって常用すると直腸や肛門の働きが弱まるリスクがあります。

そのため、浣腸は1週間に2回程度の使用頻度にしましょう。浣腸薬に頼らないで便通の改善につなげられるよう、生活習慣の見直しに努めることも大切です。

浣腸しなければ出ないほどの便秘が続く場合は、医療機関での治療も選択肢に入れておきましょう。

浣腸以外で便秘を改善する方法

浣腸以外で便秘を改善するための方法を5つ紹介します。

いずれの方法も日常生活のちょっとした心がけで実践できることなので、できることから取り入れていきましょう。

便意を我慢しない

便意を感じたら我慢せず、早めにトイレに行って排便することが大切です。便意を感じやすい時間帯にはトイレに行けるように普段から時間を確保するように心がけましょう。一般的に、腸は寝ているときによく動くため、朝が一番便意を感じやすいです。

便意を我慢することが習慣づくと、排便反射が低下しやすくなります。

また、便意を我慢することで「トイレに行きたい」という気持ちが段々と消失してしまうので、トイレに行って排便しようという行為に至らなくなります。

そうすると排泄すべき便が排泄されずにどんどん溜まってしまい、便秘に陥りやすくなります。

こまめに水分を摂取する

水分が少なく硬い便は排便しにくく、便秘の原因になります。便秘が気になる方は、1日2リットルを意識して水分をこまめに摂取すると良いでしょう。

口から摂取する水分のほか、食べ物の消化のために分泌される消化液は小腸や大腸で水分のほとんどが吸収されます。

大腸で水分が吸収される働きが強くなる要因の1つは、からだの水分量が減っている状態(=脱水状態)です。そのため、便秘改善のためにはこまめな水分補給を心がけましょう。

食物繊維の多い食事を摂る

食物繊維には、便を柔らかくし、かさを増やして排便しやすくする効果が期待できます。

ダイエットなどによって食事量が減って便が細い方や、排便回数が減っているような方は、食事を見直すようにしてください。

穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類など、食物繊維が豊富な食材を意識して摂取すると、便秘改善効果を実感できるでしょう。

ただし、食物繊維だけを多く摂るのでなく、栄養バランスの良い食事を心がけることが、便秘だけでなく健康面からも大切といえます。

適度な運動習慣を付ける

適度に運動することで、腸の蠕動運動を促す効果が期待でき、運動による便秘解消を実感できている方は多いです。

また、腹部の筋肉を鍛えれば、腸の動きや排便をサポートしてくれます。さらに、運動によるストレス軽減が自律神経を整え、便秘解消につながるケースもあります。

まずはウォーキングなどの有酸素運動、腹筋運動を無理のない範囲から試してみると良いでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬を服用する

硬い便でお悩みの方は、市販薬の酸化マグネシウム便秘薬を服用することを検討してみても良いでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬は、浸透圧の作用で腸管内に水分を引き寄せ、硬い便を柔らかくして排出しやすくする効果があります。

服用する際は用法用量を守りましょう。

事前に注意点を把握して正しく浣腸を使おう

浣腸の使用方法を誤ると、直腸を傷つけたり体に異常が出たりするリスクがあります。

そのためにも、事前に使用方法と注意点を把握して浣腸を正しく使うことが大切です。

また、今回紹介した注意点だけでなく、お薬の箱に記載されている注意事項にも目を通し、十分に理解しておきましょう。不明な点があれば、医師や薬剤師に確認することも大切です。

浣腸しなければ出ないほどの便秘が続く場合、浣腸を常用するのではなく、医療機関での治療や生活習慣の改善に取り組むようにしましょう。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は食事や運動に注意し、酸化マグネシウムなどの内服薬も上手く利用しましょう。それでもコントロールが困難の場合は浣腸の仕組みと正しい使い方、使用時の注意点を理解しながら使用し、便秘治療に取り組んでいきましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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