知って得する! 腸活コラム 知って得する! 腸活コラム

VOL.160 【医師監修】臨月の便秘解消法とは?考えられる原因や対処法を解説

臨月を迎えて便秘の症状が気になる、トイレで強くいきんだときにお腹の赤ちゃんに影響するかもしれないから便秘を解消したい、と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

今回は、臨月で便秘になる原因や、臨月で便秘になったときの対処法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも臨月はいつから?

「臨月」とは妊娠36週以降の出産予定日までの1ヶ月間をさしますが、医学用語ではありません。医学用語で出産の時期を意味する「正期産」は妊娠37週0日〜41週6日の期間をいいます。

臨月を迎える頃には、お腹の中の胎児はいつ産まれてきても良い状態になります。この頃から、出産予定日にあわせて1週間に1回の頻度で妊婦健診を受けるようになります。

また、臨月に入ると妊婦の体の状態には変化がみられるようになります。

お腹が一気に大きくなり、下痢や便秘になる、恥骨痛・腰痛を感じる、寝つきが悪くなる、長時間眠れない(途中で眼が覚めやすい)、トイレが近いなどの変化が起こることがあります。

臨月で便秘になる5つの原因

妊娠中は便秘に悩まされる方が多く、その原因はいくつかあります。臨月で便秘になる原因を5つ解説します。

①子宮による腸の圧迫

妊娠後期に入ると、子宮が大きくなって腸を圧迫するようになります。

腸が圧迫されることで、便が腸を通過しにくくなり、腸の動きが鈍くなってしまい、便秘になりやすくなります。

臨月になるとお腹の胎児は骨盤の方に下りてきますが、それでも腸を圧迫することに変わりはないので、便秘になりやすい傾向にあります。

②ホルモンの影響

妊娠すると、黄体ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンの分泌が活発になります。妊娠後期には分泌量がピークを迎え、臨月を迎える頃には分泌量がだんだんと減ってきます。プロゲステロンには胃腸の働きを抑制する作用があるため、ホルモンの影響で便秘になりやすくなります。

また、臨月にはエストロゲンというホルモンも多く分泌されます。その影響で眠りが浅くなったり、中途覚醒を起こしたりするので、日中の疲れが取れにくく、自律神経の乱れにつながることもあるでしょう。

③自律神経の乱れ

自律神経には緊張や集中時に優位になる交感神経と、休息時やリラックスしているときに優位になる副交感神経があります。腸の動きは副交感神経が優位のときに活発になり、腸のぜん動運動によって排便を促します。

臨月を迎えると、お腹が大きくなるので、日常の動作が制限されるだけでなく、腹部や足の付け根の痛み、むくみ、まとまった睡眠が取りづらく中途覚醒してしまいます。

そのため、疲れが取れにくく、ストレスも感じやすくなるので、自律神経のバランスが乱れる原因に。ストレスによる自律神経の乱れが便秘を引き起こすようになります。

④運動不足

臨月は、2500~3000グラムの胎児がお腹にいる状態で生活するので、身体面で疲れやすくなります。

また、お腹が大きくなって足元が見えにくくなるので、外出先でも歩き難さを感じるようになります。さらに、夜間の睡眠も十分にとれにくくなって、日中に眠気が強くなることもあるので、臨月には運動不足になりやすいです。

運動不足は筋力の低下を招き、腸の動きが弱まってしまいます。また、腹筋も衰えてしまい、便を押し出す力が弱くなり、便秘になりやすくなります。

⑤水分不足

臨月は出産に向けて母体の血液量や体液量が増える時期で、普段以上にこまめな水分摂取が必要です。

しかし、臨月になるとむくみや尿漏れを起こしやすくなって水分摂取を控えてしまいがちになりますが、水分摂取量が不足すると、その不足する水分を大腸内や便から補うために便が固くなってしまいます。

固い便はスムーズに排泄されにくく、残便感を感じるかもしれません。

臨月で便秘になったときの対処法6つ

大きくなった子宮による圧迫や女性ホルモンの影響で臨月に便秘になるのは仕方がないことです。

それ以外の便秘の原因をできるだけ回避していくことが大切です。そこで、臨月で便秘になったときの対処法を6つ紹介します。便秘に悩んでいる妊娠中の方は参考にして試してみてください。

①規則正しい生活

不規則な生活習慣は腸の運動機能を低下させます。生活リズムを整えると自律神経が整い、腸のぜん動運動が促されてスムーズな排便が期待できます。

また、1日3食を規則正しく摂ることも大切です。とくに朝食を食べると胃や腸の働きによって排便を促してくれますし、朝起きたときにコップ1杯の水を飲むと腸の動きが活発になる効果も期待できます。

また、大きな子宮で腸が圧迫されると排便に関与する神経伝達が鈍ってくるので、便意を感じにくくなります。便意がない場合でも毎日決まった時間にトイレに行くという習慣をつけてみると良いでしょう。

朝食後にトイレに座ることで排便習慣がつけられやすくなります。ただし、全く便意がない場合や便が出てくる気配がない場合には、無理に強くいきまないようにしましょう。

②こまめな水分補給

臨月を迎えた母体は血液量や体液量が増えるため、こまめに水分を補給するようにしましょう。1日2リットルを目標に水分補給を心がけてください。

例えば、ミネラル分の多い硬水は便秘解消効果も期待できますし、ほかには麦茶や牛乳などを摂るのが良いでしょう。

一方で、アルコール飲料は避け、カフェイン入り飲料の摂りすぎには注意しましょう。マタニティコーナーには多くのカフェインレス飲料が並んでいるため、それらをうまく組み合わせて上手に水分補給をしてください。

③食物繊維を多く含む食べ物の摂取

食物繊維は腸の動きを活発にするため、積極的に食事に取り入れると良いでしょう。食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があり、どちらも便秘解消の効果が期待できます。

水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やしたり、便を柔らかくしたりする働きがあり、果物類、海藻類、にんじん、キャベツなどに多く含まれています。

また、不溶性食物繊維は、便のカサを増やして腸管を刺激するので、腸の運動を活発化させ、便通を整える働きがあります。根菜類、きのこ類、豆類などに多く含まれています。

妊娠中は栄養バランスの良い食事を心がけながら、便秘対策に食物繊維を多く含む食べ物を意識的に摂取するようにしましょう。

なお、食物繊維を多く含む食べ物については、以下もご覧ください。

【医師監修】便秘に効く野菜は?解消のためにおすすめの食物繊維が豊富な食べ物を紹介

④軽い運動やストレッチ

血流を良くすると腸の動きが活発になります。妊婦自身の体調や季節、環境に応じて無理のない範囲で運動すると良いでしょう。

体調が良いときには、1回30分〜1時間程度の軽くからだを動かすことを実践してみましょう。1回15分程度の運動から始めて、徐々に運動量を増やすのも良いでしょう。ウォーキング、マタニティヨガ、マタニティスイミング、ストレッチなどがおすすめです。

運動やストレッチによってストレス解消や気分転換になりますし、多くの方が悩まされるむくみの解消も期待できます。臨月には母体の体重も増えるので、体重管理のためにも体を動かすことが推奨されます。

一方で、腹筋を使う動きや激しい運動は避けましょう。お腹が張りやすい方、体調が不安定な方は無理して運動をしないようにしましょう。

⑤ツボ押し

便秘解消には簡単にできるツボ押しもおすすめです。便秘解消のツボ(図の位置)を3つ紹介します。

●合谷(ごうごく):手の甲の親指と人差し指の骨の間にあるくぼみ
●神門(しんもん):手首のしわを小指側になぞるとある骨の手前のくぼみ
●湧泉(ゆうせん):足の指先を曲げたときに足裏で最もくぼんでいるところ

気持ち良いと感じる程度の力で、ひとつのツボに対して5秒ほど5回ずつゆっくり押して刺激してみてください。

ただし、便秘解消の即効性はないので、1週間ほど毎日継続して行ってみましょう。

妊娠中でも使用できる便秘薬の服用

生活リズムや食生活の改善では便秘が解消されない場合もあります。ただ、妊娠中は薬の服用を避けたいと考えている方は多いかもしれません。

しかし、妊娠中でも服用できる便秘薬があり、そのひとつが酸化マグネシウム便秘薬です。

酸化マグネシウム便秘薬は、腸管を直接刺激せず、腸管内に水分を引き寄せて便をやわらかくし、スムーズな排便を促す作用があります。また、酸化マグネシウムは、体内にほとんど吸収されないため、妊娠中でも服用できる便秘薬です。

ただし、はじめて服用する場合や、酸化マグネシウム以外の成分が有効成分に含まれている場合、便秘以外の症状がある場合は、産院の医師に相談してから服用しましょう。

臨月の便秘は生活習慣や食生活を整えて解消しよう

臨月で便秘になる原因は、大きくなった子宮による腸の圧迫、ホルモンの影響、自律神経の乱れ、運動不足や水分不足などがあげられます。

腸が圧迫されたり、ホルモンの影響を受けたりして便秘になるのは仕方がないので、それ以外の原因に対して、対処できる方法で便秘を乗り切りましょう。

生活習慣、食生活で解消できない場合は、妊娠中でも服用可能な酸化マグネシウムの便秘薬を試してみると良いでしょう。それでも便秘がつらい場合は、産院の医師へ早めに相談するようにしましょう。

高山医師よりコメント
妊娠中は大きな変化が生じ、身体にかかる負担も大きく普段どおりの生活を送ることも難しいことでしょう。無理をなさらずしっかりと休むことも重要です。便秘でお困りの方は、ぜひ主治医にご相談ください。
監修者

医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。

酸化マグネシウムは非刺激性 酸化マグネシウムは非刺激性
POINT 1 お腹が痛くなるにくい。 POINT 1 お腹が痛くなるにくい。
POINT 2 クセになりにくい。 POINT 2 クセになりにくい。