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VOL.31 【医師監修】便秘しているとダイエットしても痩せない? 便秘が体にもたらす悪影響と、解消のためのおすすめの食材

「快眠、快食、快便」は健康的な生活を送るうえで、欠かせないもの。この3つは、健康かどうかを示す指標ともいえます。どれか1つでもうまくいかないと、体調が悪くなったり、気持ちもすっきりしません。なかでもお通じに関しては、人には言えないけれど、実は悩んでいるという人が多いようです。排便トラブルの多くは、命に関わるものではありません。しかし、毎日の生活に関わることなので、本人にとっては大変なことです。ここでは、こうした排便トラブルがなぜ起こるか、そして症状を改善するためのケアは、どうしたらよいのかを紹介します。特に大切なのが、食事や排便習慣などの改善です。できることから試してみて下さい。

「便秘しているとダイエットしても痩せない」は本当?

便秘は体にとってさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。体調が悪くなったり、肌のコンディションが乱れたりするだけではなく、ダイエットをしている人にとっても不都合をもたらしている可能性があるのです。

●便秘が体にもたらす悪影響
健康な人でも、腸内でガスは生じますが、特に便秘をしていると、腸内で悪玉菌が増殖して腐敗発酵を起こし、ガスが発生しやすくなる関係から、便秘の人は特におならが出やすくなります。また、便秘によって便が出口をふさがれると、体外へ排出できなくなったガスが腸内に留まるために、お腹の張りや痛みを引き起こしてしまうのです。
また、にきび、肌荒れ、しみ、そばかすなど肌のトラブルもよく見られます。これらは、便秘によって自律神経の働きが乱れ、皮膚の血行が悪くなるためといわれています。
食欲がなくなる、口臭がきつくなる、舌に白い苔のようなものができる、などの症状もよく見られますが、便秘との関係性はまだあまりよくわかっていません。

●便秘はダイエットをしても痩せない原因のひとつ
便秘になると腸内の悪玉菌が増殖していき、腸内環境がどんどん悪化していきます。悪玉菌が増加することによって、腸内環境のバランスがくずれてしまうと、体に取り入れたい栄養素がうまく吸収できなくなってしまいます。
肉やアルコールを過剰に摂取することで、なお増えていく悪玉菌ですが、新陳代謝を低下させていく傾向もあり、脂質や老廃物をため込みやすい体となっていってしまいます。
血行不良やむくみを引き起こす原因ともなるので、痩せにくいな…と悩んでしまう要因の一つにもなるでしょう。

便秘とはどのような状態を指すのか?便秘の種類について

排便の習慣には個人差があり、「便秘」という言葉のとらえ方もさまざまですが、医学的には便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。これは「排便回数が減少した状態、または排便困難症状がある状態」と言うことができます。

●症状
排便回数が減少した状態とは、「週3回未満の排便」が目安とされています。
排便困難症状とされるものには、便が硬いことによる過度のいきみ、頻回便、残便感やコロコロ便、腹痛や腹部膨満感などの症状があります。
つまり、週に3回程度の排便回数であっても、残便感や腹痛、腹部膨満感などがなければ、正常であるということです。逆に、毎日排便があっても、これらの排便困難症状で困っているという場合は、便秘と診断されることになります。

●種類
便秘はさまざまな原因によって引き起こされますが、大きく分けると、「器質性」と「機能性」に分類されます。器質性は、大腸がんなどの病気が原因で大腸そのものに異常があり、便が大腸を通過する時間が遅くなったりして生じる便秘です。機能性は、神経や肛門周辺の筋肉など、排便に関わる機能が低下して起こる便秘です。
機能性便秘はさらに、原因別に次の3つのタイプに分けられます。

①便の通過時間が遅いタイプ
胃や小腸で消化吸収された食べ物の残りかすは、大腸を通過する過程で水分が吸収され、通常の硬さになっていきます。ところが、大腸の働きが低下して蠕動運動が弱まると、大腸の中で便がなかなか運ばれず、通過するのに時間がかかります。そうするとその間に過剰に水分が吸収されて便が硬くなるため、排便しづらくなってしまいます。
このタイプは女性に多くみられますが、それは女性ホルモンの一つである黄体ホルモンに腸の蠕動運動を抑制する作用があるためです。

②便の出口がゆるまないタイプ
便が直腸内に到達し、直腸が押し広げられると、正常であれば内外の肛門括約筋がゆるみ、便が排出されます。しかし、これらの筋肉やそのほか骨盤底筋などに障害があり、筋肉がゆるまなくなると、便が直腸にたまっていてもなかなか排便できません。原因は老化による筋肉の衰えが多く、特に近年では高齢の男性に増えているタイプの便秘です。

③現代型(生活習慣病タイプ)
大腸や直腸、肛門などの機能に異常がないのに便秘になるというもので、現代の生活習慣型ともいえるタイプです。

●原因
ダイエットで食事量を減らしている女性では、便の量が少なくなるため、直腸にたまるまで時間がかかります。その間に便の水分が吸収されてどんどん便が硬くなり、排便しづらくなります。
また、偏食で栄養バランスの悪い人は、食物繊維が不足がちになり、便のかさが減って、排便に十分な量の便がたまりにくくなります。すると排便回数が減って、その間に便が硬くなるということもあります。
「人前で話すときに、緊張しておなかが痛くなる」「旅行に行くと、いつも便秘になる」という経験の人は多いでしょう。これらはストレスによって、腸の一部が痙攣したり、腸の感覚が過敏になったりして、現れる症状です。このようなタイプを「ストレス性便秘」といいます。ストレス性便秘は、医学的には「過敏性腸症候群」に含まれます。腸に器質的な異常はないのに、おなかの痛みや張り、不快感を伴う便通異常が続く状態です。

間違ったダイエットが便秘の原因になることもある

無理なダイエットをしている人や、もともと少食の人も、便秘になりやすいといえます。食べる量が少なければ、当然、便の量は少なくなるからです。むやみに食事を減らしていれば、食物繊維も不足しがちになります。これでは到底、快便は望めません。食事を減らすなら、栄養バランスを考えて、食物繊維の多い食品を十分にとることが必要です。

脂肪は太るからと、とかく敬遠されがちです。しかし、これはあくまでも摂りすぎた場合の話。健康を維持するには、脂肪も適度に摂る必要があります。特に便秘の人にとって、脂肪は有効です。脂肪には、腸内の滑りを良くして、便通を促す効果があるからです。さらに脂肪に含まれている脂肪酸には、腸を刺激して、蠕動運動を高める効果もあります。マヨネーズやドレッシングをかけた野菜サラダをたくさん食べるとか、野菜の天ぷらを食べるなど、上手に脂肪を摂る工夫をしましょう。

ダイエットのため食事制限をしている女性は要注意です。栄養のバランスが悪くなって食物繊維などの摂取量も少なくなり、便自体の量が減って便秘になりやすくなります。無理なダイエットは血行不良による冷えや自律神経の不調を招くため、さらに排便しづらい体になります。ダイエット中であっても3食きちんと食べることが大事です。


便秘解消が期待できる食べ物

食べ物にはいろいろな栄養素が含まれていますが、その中で、人間の体では消化できない栄養素を総称して「食物繊維」と呼んでいます。食物繊維には、便の硬さを増やしたり、便を軟らかくしたりして出しやすくする作用があります。便秘の予防および改善には積極的に摂りたい成分です。
食物繊維は以内の消化酵素では消化できないため、口から摂取されそのまま大腸まで運ばれ、排泄されます。種類として、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があります。
水溶性食物繊維は保水性があり、腸内で水を含むとゲル状になり、老廃物や有害物質を吸着し、排出を促します。さらに腸内の善玉菌を増やし、腸の調子を整える作用もあります。昆布やわかめ、こんにゃく、大麦などに含まれています。
一方の不溶性食物繊維は、吸水性が高く、腸の中で水分を吸収して便の体積を増やし、腸壁を刺激することで、蠕動運動を活発にします。穀類や野菜、豆類、きのこ類、果実、海藻などに含まれています。


マッサージや便秘解消運動も試してみよう

便意を起こさせるうえで、マッサージはとても効果的な方法です。おなかや腰をマッサージすると、直接、大腸への刺激となって、蠕動運動が促されるからです。
やり方は簡単です。まず、両手のひらをよくこすり合わせて温めたら、片方の手のひらを右の下腹部に当て、へそのまわりを時計回りで円を描くように、ゆっくりとマッサージします。これを10~20回繰り返して下さい。
次に指を揃え、指の腹に力を入れて、同じようにへそのまわりを押していきましょう。指の代わりに、こぶしで押しても構いません。自分のやりやすい方法で繰り返しましょう。
大腸のねじれや落下腸で便秘になりやすい腸管形態型IBSの場合は、お腹のマッサージを習慣づけるとよいでしょう。大腸のねじれが特に問題になるのは、便の水分が吸収されて硬くなってくる大腸の後半部分です。そこで、ねじれが起こりやすい箇所や、便が引っ掛かりやすい部位をねらって、大腸を揺らすマッサージを行います。また、落下腸の人は腸全体を上に持ち上げるマッサージが効果的です。お腹の中にある腸の形を意識すると効果的です。

便秘を解消し快便な日々を送るためには、定期的な運動も必要です。特に、腹筋をある程度鍛えておくことは、便秘を解消するために大切なポイントとなります。腹筋を強化すると、排便時にいきんだ時、十分な圧力がかかって、便をスムーズに押し出せるようになります。腹筋を動かすことは、腸に刺激を与えることにもなるので、大腸の蠕動運動も活発になり、便意が起こりやすくなります。

●便秘に効く腹筋体操① つま先のぞき(両足上げ)
あお向けになって、両手を首の後ろで組み、頭を手で支えながら起こします。つま先をのぞき込む姿勢を保ったまま30秒静止したら少し休んでください。これを5~10回繰り返しましょう。

●便秘に効く腹筋体操② バタ足
あうつぶせになって手を顔の下におき、両ひざを伸ばしたままゆっくりと大きくバタ足をします。ゆっくり行うとつらい運動ですが、30回は続けましょう。

食生活や生活習慣の見直しで便秘解消!腸への適度な刺激も大切

食便秘の解消法は、食事や運動、排便習慣を見直して、改善するのが基本となります。食事は食物繊維を十分に摂取するように心掛け、朝食は必ずとるようにしましょう。また、適度な運動はストレスの解消や腸の蠕動運動を高めるのに役立ちます。

運動には自律神経のバランスを整える効果があることは、さまざまな研究・調査で明らかにされています。運動をしている間は交感神経が活発に働き、運動後は副交感神経が活発になって心身がリラックス状態になります。通常、この2つの神経は状況に応じて切り替わり、バランスを保っています。運動により、1日のうちでこの切り替えを何回か体験することで、乱れた自律神経が安定してきます。そのため、運動はストレスを解消し、腸の働きを改善するのに役立つのです。


工藤医師よりコメント
便ダイエット中は食事制限によって便通に必要な食物繊維や水分の摂取量が減ってしまうため、便秘もちになりがちです。痩せやすい体質になるためにも、食物繊維が豊富な食生活や運動・生活習慣を心掛けて、腸内環境を整えましょう。
監修者

医師:工藤孝文
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる。
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

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