VOL.105 残便感が続くのは便秘のせい?考えられる主な原因と解消法を紹介

毎日排便があるものの、すっきりと出た気がしない不快な「残便感」を経験したことのある方も多いのではないでしょうか。
しかし、残便感の原因がわからないと、便秘を疑いながらも対処法が見つからないままになりがちです。
そこで今回は、残便感とは何か、便秘との関連性も含めて解説します。さらに、その原因と解消法もあわせて紹介します。残便感にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
残便感とは?
「残便感」とは、排便後も全部出し切れておらず、便が残っているように感じる症状のことです。具体的には以下のような状態が該当します。
- ・排便はあるが、すっきりしない感じがする
- ・便意があるが、何も出ない
- ・お腹が張る など
いずれも不快な症状ですが、便通異常かどうかを自身では判断しにくい場合があります。そのため、残便感が気になっていても受診せずに様子を見るケースも少なくありません。
残便感が続くのは便秘?
「便通異常症診療ガイドライン2023」(編集:日本消化管学会)において、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便・排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。
この定義でも明記されているように、「残便感を認める状態」も便秘に含まれます。便秘は原因や症状によって種類が分けられています。
例えば、便秘の原因によって「器質性便秘」と「機能性便秘」に分類されます。「残便感」を伴う便秘の多くは機能性便秘に当てはまります。機能性便秘は、慢性便秘症の1つです。
「便通異常症診療ガイドライン2023」では、慢性便秘症について「便秘が慢性的に続くことによって、学業、就労、睡眠といった日常生活に影響を及ぼす症状をきたし、検査、食事・生活指導または薬物治療が必要な病態」と定義されています。
なお、慢性便秘症は以下のように分類されます。
- ・一次性(機能性)便秘症:器質的な病気がなく、食事・生活習慣・腸の働きの異常などが関与するもの
- ・二次性便秘症:薬剤や基礎疾患など、明らかな原因があるもの
さらに、症状の観点から「排便回数の減少型」と「排便困難型」に分類されます。
例えば、「便の回数が少ないタイプ」や「便は出るが、残便感や排便困難が続くタイプ」などがあり、診断には医師による評価が必要です。
以下では、残便感のある便秘の多くが該当する「機能性便秘」について、さらに詳しく解説します。
機能性便秘とは?
機能性便秘は、疾患がなく大腸の形にも問題がない便秘です。
しかし、大腸の機能が低下しているため、直腸に送られた便をスムーズに排出できません。その結果、排便の困難感や不完全排便によって残便感が生じてしまうのが特徴です。
また、便が硬くなることが多い傾向があります。
機能性便秘症は、便秘型過敏性腸症候群と明確に鑑別するのが難しいです。なお、「便通異常症診療ガイドライン2023」では、機能性便秘症は病態によりさらに以下のように分類されています。
- ・大腸通過正常型
- ・大腸通過遅延型
- ・機能性便排出障害
残便感がある便秘の主な原因
残便感のある便秘は、硬便、便意の感じにくさ、便を排出する力の低下などによって引き起こされます。考えられる原因としては以下のとおりです。
- ・水分不足
- ・便意の我慢
- ・腹筋の衰え
3つの原因について、それぞれ詳しく説明します。
水分不足
硬便の主な原因は水分不足です。便は水分が60~80%を占めており、水分不足になると便が硬くなります。
口から摂取された水分は、8割ほどが小腸で吸収され、残りが大腸で吸収されます。体が脱水状態に陥っていると、大腸での水分の吸収が促進され、便の材料となる水分まで吸収されてしまいます。
また、汗をかきやすい方は、十分に水分補給をしていても排出により不足してしまう可能性があるため、注意が必要です。
便意の我慢
直腸に排出すべき便が流れ込んでくると、腸壁が刺激され、それが脳に伝わり便意として感じられます。
脳から排便を促す指令が伝わり、肛門の筋肉が緩み、同時に怒責(いきみ)が行われることで便が排出されます。
しかし、トイレに行けないなどの理由で便意を我慢すると、その便意は弱まってしまいます。便意がなくなることで排便できなかった便が直腸に溜まると、便が硬くなり、残便感を伴う便秘につながる可能性があります。
便意を繰り返し我慢していると、便意そのものを感じにくくなってしまうため、便意を感じたらできるだけ早くトイレに行く習慣をつけておきましょう。
腹筋の衰え
トイレで排便する際には、怒責(いきみ)が行われ、腹圧をかけることで排泄します。ここで腹筋の力が必要になるため、腹筋が衰えると排便時に力がうまく入りません。
肛門から便を押し出そうとする力が弱くなってしまうため、排泄が困難になりがちです。
残便感がある便秘の解消法

不快な残便感に悩む方は、以下の対処法を試してみると良いでしょう。
- ・水分をこまめに摂る
- ・排便リズムを整える
- ・排便に適した姿勢をとる
- ・適度な運動をする
- ・酸化マグネシウムの便秘薬を試してみる
便秘の予防効果も期待できるため、普段から継続的に取り入れることが大切です。それぞれの解消法について、詳しく説明します。
水分をこまめに摂る
便を作ったり柔らかくしたりするためには水分が必要です。普段から意識的に水分補給をして、体が脱水状態にならないようにしましょう。
水分は一気に摂るのではなく、こまめに補給するのが望ましいです。体が保持できる水分量は決まっているため、一度に大量摂取をしても、余分な水分は尿として排出されます。
また、汗や呼吸でも体内の水分は少しずつ失われていきます。日常的にこまめな水分補給を心がけましょう。
排便リズムを整える
排便リズムを一定に保つと、1日の中で排便する時間帯が把握しやすくなります。便意を感じやすい時間帯には、トイレに行ける環境を整えておき、リラックスして排便ができるようにしましょう。
便意が起こりやすいのは、起床後から朝食後までの時間帯が多いといわれています。起床時の空腹状態で朝食を摂り、胃に固形物が入ると、胃や大腸の働きが活発になるためです。
また、寝起きに冷たい水を飲むだけでも、胃腸の反射が起こり、腸が動きやすくなります。
そのため、毎日朝食を摂り、できるだけ同じ時間帯にトイレに行く習慣をつけて、排便リズムを一定にすると良いでしょう。
排便に適した姿勢をとる
排便時には便がスムーズに通過する姿勢をとりましょう。現在は、洋式トイレが各家庭や公共施設に普及しています。
しかし、洋式の便座に座ると、便が直腸から肛門まで通過しにくい姿勢になります。
そこで、洋式トイレで排便する際は、下図のようにやや前かがみになり、膝の位置がおへその高さに来るようにしましょう。
膝の位置をあげるためには、かかとをあげたり排便補助台を利用したりすると良いでしょう。

適度な運動をする
体を動かすことで腸の動きが活発になり、便が出やすくなります。
また、腹筋周りを鍛えると、便を押し出す力を高めることができます。普段から無理のない範囲で腹筋を意識した運動を取り入れましょう。
酸化マグネシウムの便秘薬を試してみる
硬便による便秘や残便感を改善したい方は、非刺激性の便秘薬を試してみるのも良いでしょう。
酸化マグネシウムが主成分の便秘薬は、非刺激性のためお腹が痛くなりにくく、クセになりにくいのが特徴です。
薬の成分が大腸に届くと、腸管内で便に水分を引き寄せる働きをするため、硬い便を柔らかくする効果が期待できます。
健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」は、妊婦や高齢者、5歳以上の子どもも服用できます。オンラインショップでも購入可能なため、病院や薬局に行くのが難しい方は利用を検討してみてください。
なお、初めて服用する場合は、あらかじめ薬剤師や登録販売者に相談しましょう。また、便秘薬を試しても症状が改善されない場合や、ほかに気になる症状がある場合は、医療機関を受診するようにしてください。
生活習慣を見直して残便感のある便秘を解消しよう
排便してもすっきりしない残便感は、便秘の症状の1つです。
残便感を伴う便秘は機能性便秘である場合が多く、水分不足による硬便や便意の鈍化、便を排出する力の低下が主な原因と考えられます。
残便感は、生活習慣の改善で解消されるかもしれません。普段からできる解消法を取り入れ、排便リズムを整えてみてください。なお、残便感が続いてつらい方は、酸化マグネシウムの便秘薬を試してみるのも選択肢の1つです。
解消法を試してみても残便感の症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。









