VOL.133 便秘と高血圧の関係は?トイレで血圧の上昇と低下を起こすリスクと予防方法も解説

排便時に強くいきんだ際、ふらつき・めまいなどの症状が現れ、高血圧に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
トイレは、血圧が急上昇・急降下しやすい環境です。排便中・排便後に不調が出た場合は、血圧の変動が原因かもしれません。
今回は、便秘と高血圧の関係や、排便時に血圧が変化する要因、高血圧・低血圧を起こした場合のリスクを解説します。
トイレでの血圧変動の予防法や便秘の改善方法も紹介するため、便秘時の血圧変化が不安な方は、ぜひ参考にしてください。
便秘と高血圧の関係は?
便秘そのものが慢性的な高血圧の原因になるわけではありませんが、排便のためにトイレで強くいきむことで、急激な血圧上昇・降下を引き起こす場合があります。
とくに、便秘の方は排便時に強くいきむ傾向があるため要注意です。強いいきみによる血圧の急激な変動は、体に大きなダメージを与える可能性があります。
また、いきみ以外にも、トイレで血圧が急変化する要因は複数あります。場合によっては命に関わることもあるため、脳血管障害・自律神経障害などの血圧に関連する持病がある方や高齢者の方は、適切な対策を行いましょう。
なお、排便頻度が「4日に1回以下」の方は、「1日1回以上」の方と比べて、循環器疾患で死亡するリスクが約1.4倍高いとする論文報告もあります。
まずは排便時に血圧が上昇・下降するタイミングを把握し、リスクに対する理解を深めることが大切です。
トイレで高血圧になりやすいタイミング
排便時に血圧が上がりやすいタイミングは、居室との温度差があるトイレに入ったときと、便を出すために強くいきんだときです。
暖かい部屋から急に寒いトイレへ行くと、血管が収縮して血圧が上がります。夏にエアコンの効いた涼しい部屋から、暑いトイレに入った場合にも血圧が上がるため注意しましょう。
また、便を出すために強くいきむ際にも血圧が上がります。血圧の薬で安静時の血圧をコントロールしていても、いきむときの血圧上昇を避けるのは難しいため注意しましょう。
トイレで低血圧になりやすいタイミング
排便のために強くいきんだときや便器から立ち上がるときに、血管迷走神経反射や起立性低血圧が起こり、血圧が下がることもあります。
高齢者だけでなく、若年層や子どももトイレで血圧が下がる可能性があるため、年齢を問わず注意しましょう。
トイレで高血圧・低血圧を起こした場合のリスク

強いいきみは、血圧の急変動につながります。以下では、トイレで急な高血圧や低血圧に陥った場合に起こり得るリスクを紹介します。
リスクを知り、トイレの環境やトイレでの行動を見直しましょう。
【高血圧】命に関わる疾患を発症する場合がある
血圧が急に上がると、頭痛やめまい、吐き気、呼吸困難などの症状が現れることがあります。
また、脳血管障害や高血圧性脳症、急性肺水腫、急性大動脈解離、急性左心不全、急性心筋梗塞および急性冠症候群、急性腎不全など、命に関わる病気を引き起こすおそれもあるため、十分な注意が必要です。
トイレで呂律が回らない、手足がしびれるなどの症状が出た場合や、それ以外でも重い症状が出た場合は、速やかに救急車を呼んでください。
普段から血圧をチェックし、自身の血圧を把握しておくことも大切です。普段から血圧が高い方は、早めに医療機関を受診しましょう。
【低血圧】めまいや失神を起こす場合がある
排便時に強くいきんだり、便座から急に立ち上がったりした際に、迷走神経反射や起立性低血圧によって血圧が下がり、めまいや立ちくらみ、失神などを引き起こすことがあります。
血管迷走神経反射は、痛みや緊張が原因で起こる症状です。注射を打ったときにも現れることがあります。起立性低血圧は、自律神経の調節が低下した際に起こる症状で、急に立ち上がったときに起こりやすいです。
迷走神経反射や起立性低血圧は、多くの場合、安静にしていれば徐々に回復します。自己判断が難しい場合は、医療機関に相談しましょう。
【高血圧・低血圧】転倒によるケガや発見の遅れにつながる
トイレで失神した場合、壁や床、便器などに体をぶつけてケガをするおそれがあります。意識を失っている状態では受け身が取れず、外傷が重症化する可能性もあります。
また、トイレで倒れた場合、発見が遅れることが多い傾向です。一般的な住宅のトイレは外開きのドアが主流ですが、まれに内開きの場合もあります。内開きのトイレで倒れると、倒れた体でドアが開かなくなるため注意しましょう。
日頃からめまいや立ちくらみが多く、トイレで倒れる不安がある方は、一度医療機関を受診してください。
排便時に高血圧・低血圧を起こさないための予防法
排便時の血圧の急上昇・急降下を予防するためには、以下の予防法を実践しましょう。
- ・トイレを暖かくする
- ・排便時は前かがみに座る
- ・排便時にいきみすぎない
それぞれの対処法を詳しく解説します。
トイレを暖かくする
排便時の血圧上昇を予防するために、トイレは暖かく保ちましょう。
便秘の場合には、暖かい部屋から急に温度の低いトイレに入ったことによる血圧の急上昇と、排便時のいきみによる高血圧が重なり、リスクがより高くなります。
とくに、気温が下がる深夜や明け方は注意が必要です。暖房便座や便座カバー、トイレマット、トイレ用の暖房器具を使うなどの工夫をしましょう。トイレに行く際に上着を羽織っていくだけでも効果があります。
トイレが古く断熱材が入っていない場合は、リフォームを視野に入れるのもおすすめです。
排便時は前かがみに座る
排便時は、前かがみに座るよう心がけましょう。
前かがみに座ると、直腸の角度が肛門から一直線に近くなります。直腸の角度を調整することで、お腹に力が入って排便しやすくなり、強くいきむ必要がなくなります。
便座の高さは、足がしっかり床に着くくらいがベストです。高さの調節が難しい場合は、踏み台を使用しましょう。
排便時にいきみすぎない
排便時にいきみすぎると、急激な血圧上昇につながります。また、長時間いきむのも望ましくありません。
軽い腹圧で自然と便が出るのが理想ですが、排便時間は長くても3分を目安にし、出ないときは長時間トイレにとどまらず、一度トイレから出ましょう。
残便感がある場合でも、出し切ろうとするのはおすすめしません。
便をやわらかくするために酸化マグネシウムを服用する
日頃から便が出にくく、いきむことが多い方は、酸化マグネシウム便秘薬を服用するのも1つの方法です。
酸化マグネシウム便秘薬は、腸内に水分を集めて便をやわらかくし、排便を促す作用がある薬です。非刺激性でお腹が痛くなりにくくクセにもなりにくいため、子どもや高齢者の方でも服用しやすいという特徴があります。
ただし、酸化マグネシウムは副作用として「高マグネシウム血症」があり、主な症状として血圧低下があります。そのため、血圧の治療を受けている方は、必ず医師に相談の上服用しましょう。
また、腎機能の疾患がある方や高齢者も、副作用のリスクがあるため、酸化マグネシウム便秘薬の長期服用を避けてください。
腎機能が正常な場合でも、用法・用量は必ず守りましょう。初めて服用する場合は、薬剤師やかかりつけ医に相談することが望ましいです。
ほかにも、酸化マグネシウムの便秘薬と飲み合わせが悪い薬もあるため、すでに服用している薬がある場合は必ず確認しましょう。
なお、酸化マグネシウム便秘薬は、健栄製薬のオンラインショップで購入できます。便秘が続く方は、ぜひ利用を検討してみてください。
酸化マグネシウム便秘薬を服用する際は、使用上の注意を良く読んでから使用しましょう。
便秘の改善方法
排便時の血圧変化が心配な方は、強くいきまなくても排便できるよう、便秘の改善を図ることが重要です。以下では、ご自身で取り組める便秘の改善方法を紹介します。
- ・食事内容を見直す
- ・軽い運動をする
食事内容を見直す
便秘の改善には、食事内容の見直しが必要です。便秘のときは、積極的に食物繊維を摂取しましょう。食物繊維が多く含まれている食材の例は、以下のとおりです。
食物繊維の種類 | 役割 | 多く含まれている食べ物 |
---|---|---|
水溶性食物繊維 | 腸内環境を整え、便を柔らかくする | キウイフルーツ・りんご・人参・ほうれん草・じゃがいも |
不溶性食物繊維 | 便のかさを増して、便通を整える | さつまいも・きのこ類・豆類・乾物 |
適度な脂肪分や乳酸菌の入った食品も、便秘改善におすすめです。
また、便秘改善には、水分を十分に摂取することも大切です。1日2リットルを目安として、こまめに水分を摂取しましょう。
軽い運動をする
適度な運動も便秘予防に効果的です。運動によって自律神経のバランスが整うことで、腸のぜん動運動が促され、排便がスムーズになります。
なお、運動といっても本格的なスポーツをする必要はありません。軽いウォーキングやストレッチから始めると良いでしょう。掃除や買い物などの日常生活の中で積極的に体を動かすのもおすすめです。
便秘改善でトイレでの高血圧・低血圧を予防しよう
排便時の強いいきみと高血圧には、密接な関係があります。血圧の急上昇・急降下が起きると、頭痛やめまいなどの症状が出るほか、失神したり命に関わる病気を発症したりするリスクもあります。
とくに、排便時にいきみやすい方や血圧に関連する持病がある方、高齢者の方は、トイレの温度管理や排便姿勢を見直し、血圧の急激な変動を予防しましょう。
また、いきみを軽減するためにも、日頃から便秘の予防や改善に取り組むことも大切です。