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VOL.153 【医師監修】浣腸をすると血圧低下するのはなぜ?原因やサイン、対処法を紹介

排便行動で血圧が変動することがあります。それは浣腸を使用しても同じことがいえます。

浣腸した直後は血圧が上がりやすく、排便後には上がった血圧がもとに戻ります。しかし、一度上がった血圧がもとのレベルではなく、急激に下がってしまうことがあるので注意が必要です。

このような急激な血圧低下がなぜ起こってしまうのか、浣腸を使用する前に知っておくと安心でしょう。

今回は浣腸の使用によって血圧が急激に低下する原因や、血圧低下のサイン、血圧が低下したときの対処法を紹介します。

浣腸の使用により血圧が低下するのはなぜ?

グリセリン浣腸は浣腸液が直腸壁の水分を吸収することで腸に刺激を与え、便を柔らかくして排便を促す作用があります。浣腸は即効性がありますが、使用してからすぐに排便するのではなく、2~3分程度便意を我慢してから排便します。

浣腸行為のストレス(緊張感)、浣腸後に便意が十分に強まるまで我慢すること、排便時にいきむことなどで血圧は上昇することがあります。そして上がった血圧は排便後に排便前のレベルまでゆっくり戻ります。

血圧というのは交感神経と副交感神経が相互に連携して調整されています。しかし、浣腸に伴う腹圧の上昇、腸管の刺激、急激な排便などが引き金になって、交感神経系と副交感神経系のバランスが一時的に乱れ、急激な血圧低下を引き起こすことがあります。

この状態を「迷走神経反射」といいます。

浣腸をすると必ず血圧が急降下するわけではありませんが、リスクの1つとして知っておくと良いでしょう。

浣腸した後に注意!血圧低下のサイン

一過性の血圧低下は排便後にみられることが多く、トイレの中やトイレから出たあとに体調の変化があれば注意が必要です。

この一過性の血圧低下のサインは次のような症状なので、これらが自覚されたときには注意しましょう。

  • ・めまい
  • ・立ちくらみ
  • ・頭痛
  • ・倦怠感
  • ・脱力感
  • ・あくび
  • ・顔面蒼白
  • ・冷や汗

浣腸をしてから血圧低下の症状が現れたときの対処法

血圧低下のサインが出たら適切に対処することが肝心です。浣腸によるこの一時的な血圧低下は安静にすれば解消することがほとんどです。

トイレで排便した直後に血圧が低下したと感じた場合は、洋式トイレの便座に座ったままか、頭を下げてしゃがんでおきましょう。決して立ち上がらないようにしてください。

迷走神経反射により血管が拡張し、一過性に頭の血が相対的に減少するため、頭に血がいきわたるようにイメージして対応しましょう。

トイレ外の場合は、その場でしゃがんで頭の位置を低くしたり、体を横にしたりする姿勢をとりましょう。

しばらく安静にしていれば血圧低下は解消しますが、症状が続く場合には医療機関に相談するようにしましょう。

血圧低下の原因は便秘の可能性もある

血圧低下の原因は浣腸(急激な排便による腸管刺激)だけとは限りません。ほかの原因として考えられるのは便秘です。

例えば、硬い便を排泄しようと強くいきむと血圧が上がりますが、排泄後にはその反動で急激な血圧低下が起こってしまうことがあります。また、強い腹痛によって迷走神経反射が起きることもあります。

つまり、日ごろから浣腸を使うほどのひどい便秘に悩まされている場合は、血圧低下を起こす可能性があるということです。

浣腸に頼らない便秘の改善方法

一過性の血圧低下は、浣腸行為だけでなく便秘に関連して起こり得ます。まずは根本にある便秘を改善するように心がけましょう。

以下で便秘改善方法を紹介するので、日常で取り組める対策を実践していきましょう。

規則正しい生活と排便習慣

不規則な生活は便秘の要因の1つです。健康のためにも普段から規則正しい生活を心がけましょう。規則正しい生活をすることで排便リズムも整いやすくなります。

個人差はありますが、起床後から朝食後にかけては腸のぜん動運動が活発になるため、便が直腸に送られて便意を感じやすくなります。そのため、朝食を食べて腸を動かすことが大切です。

また、便意を感じればもちろんですが、便意を感じにくくても食後にはトイレに行く習慣をつけると良いでしょう。

食生活の見直しと水分補給

食物繊維や発酵食品を意識して摂取し、1日3食栄養バランスの整った食事を意識しましょう。

食物繊維は便のカサを増やしたり、便の水分量を上げてくれたりする効果が期待できます。また、発酵食品は腸内環境を整えてくれる効果が期待できるので、いろいろと試してみて自身にあったものを見つけましょう。

また、水分もこまめに補給する(1日2リットルを目安にする)と良いでしょう。水分摂取量が少ないと便が硬くなり、便秘が悪化する要因になります。

適度な運動習慣

運動不足やお腹まわりの筋力の低下は便秘につながる可能性があります。無理なく続けられる運動や腹筋を鍛えることを習慣化すると良いでしょう。

また、ストレスが溜まると自律神経が乱れ、便秘になることがあるので、ストレス解消の意味でも定期的に運動を取り入れてみてください。ストレッチやウォーキングなど、無理のない範囲で軽めの運動から始めてみましょう。

酸化マグネシウム便秘薬を試してみる

酸化マグネシウム便秘薬は、腸を直接刺激する成分を含まない、非刺激性の便秘薬なので、お腹が痛くなりにくくクセにもなりにくい特徴があります。

腸管内に水分を引き寄せる作用によって、水分を含んだ軟らかくてカサのある便にして排泄しやすくなります。浣腸に比べて即効性はありませんが、便が硬くて強いいきみを伴うことが多い方には、酸化マグネシウム便秘薬を試してみると良いでしょう。

ただし、便秘薬だけに頼らず、日常生活で改善することを前提として、常用は避けるようにしましょう。また、使用時には使用上の注意をよく読んで、用法用量を守って服用してください。

すでに服用しているお薬がある方や、持病がある方は医師または薬剤師に相談してから服用しましょう。

浣腸の使い方や使用頻度を守りながら血圧低下を防ごう

浣腸は便秘による不快感を比較的早く解決できる方法です。しかし、人によっては浣腸とそれに伴う排便が急激な血圧低下を引き起こす可能性があります。

また、浣腸だけでなく、便秘(排便時の過度ないきみなど)が原因でも血圧低下を引き起こすこともあります。

血圧低下の症状は一時的であることが多いですが、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。

浣腸を適切に使用しながら便秘改善するのも良いですが、便秘を繰り返さないためにも、根本から改善していくことが大切です。今回紹介した便秘改善方法を試して、根本からの便秘改善を目指しましょう。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は生活習慣の改善や見直し・投薬などで対応し改善が無い場合は浣腸を正しい知識で使用しましょう。浣腸を使用する際に一過性に血圧が低下することによりめまいや気分不快、吐き気などを引き起こす迷走神経反射に注意し適切に対応しましょう。浣腸を使用しても便秘が改善しない場合は医療機関を必ず受診しましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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