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VOL.34 【医師監修】便が細いのは便秘が原因? 大腸がんや切れ痔の可能性も

便の状態は、食べた物の内容だけでなく、その時々の腸の状態によって大きく変わります。そのため、便は健康状態を知るための「バロメーター」になるといわれています。それでは、便が細い状態の時には、一体どのような健康状態が考えられるのでしょうか。今回は便が細くなる主な要因や、便秘との関係性について紹介します。

あなたの便は、どんな状態?

便は、人の健康状態を示す「バロメーター」になるといわれています。健康な人の便は水分量が70〜80%で、適度な柔らかさを保った「バナナ型」。色は黄味に近いほど腸内細菌の善玉菌が多く、匂いはきつくありません。また、人間の大腸は直径が3~4cmほどであるため、健康な人の便はその直径に伴った太さで排出されると考えられます。

一方、生活習慣の乱れやストレス、病気などがある場合は、その影響が便に表れることがあります。腸の健康状態が良くない人の便は、色が黒く、きつい悪臭を伴います。形状は、細くてゆるい軟便や下痢、水分の少ない硬い便など、原因によって様々ですが、いずれも腸内環境が悪化しているサインであると考えられます。


便が細くなるのは便秘が原因?

便秘になると、腸内へ大量に溜まった便が太く硬くなり、排出に苦痛をともなう……というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、全ての人がそうであるとは限りません。例えば、過度なダイエットや加齢による食欲の低下などによって食事量が減った場合、消化物が少ないので、腸の動きが鈍ります。少量の食べ物のカスは腸の中をゆっくりと通過するため、水分を吸収され過ぎてしまい、細くて硬い便になることがあるようです。

また、腹筋や腸周りの筋肉不足が原因で便秘になっている場合には、細くて柔らかい便が何度も出るものの、スッキリせず、残便感が残るケースも考えられます。


便秘だけじゃない!? 細い便は病気のサインの可能性も……

前述した通り、便秘によって便が細くなるケースはありますが、細い便が続く場合には、ただの便秘ではなく大きな病気が原因となっている可能性も考えられます。ここでは便が細くなる原因として考えられる疾患を3つ紹介します。

・過敏性腸症候群
便秘や下痢を繰り返したり、細い便やコロコロした便が出たりする場合は、過敏性腸症候群の可能性が考えられます。
過敏性腸症候群とは、腫瘍や炎症性腸疾患などの病気は見られないにも関わらず、大腸の運動機能や分泌機能の異常が出て、腹痛をともなう便秘や下痢が起こる病気です。主な原因はストレスによる自律神経の乱れです。腸の動きは自律神経によってコントロールされているため、自律神経を介して胃腸にストレスが伝わると、胃腸の運動異常が起こり、便秘や下痢になることがあるようです。
この症状を改善するためには、ストレスを断ち切ることが大切です。規則正しい生活とバランスのよい食事を心がけ、十分な睡眠を取るとともに、適度な運動によってストレスを発散しましょう。それでも症状が改善しない場合は、医療機関で薬剤による治療を受けることもできます。

・大腸ガン
細い便が頻繁に続いたり、血便が出たりする場合には、大腸ガンの可能性があります。
大腸ガンによって腸に腫瘍ができると、腸管が狭まり、そこを通過する便が細くなり、腸壁を傷つけて出血をともなうことがあるのです。また、狭まった腸管で便を通過させるために、体が自然と反応して便をゆるくさせることもあるようです。
大腸ガンであるかどうかは、医療機関で内視鏡検査を受けることで確認できます。大腸の内壁には痛みを感じる神経がなく、初期ガンで腹痛を感じることはほとんどないため、早期発見には定期的な検査を受けることが大切です。特に40歳を過ぎると大腸ガンの罹患率が増えるといわれているので、40歳以上の人は年に1度は検査をしておくとよいでしょう。

・切れ痔
便が細く、出血や痛みをともなう場合には、切れ痔が原因かもしれません。切れ痔とは、便秘による硬い便や、勢いよく出る下痢などが原因で、肛門の皮膚が切れてしまう症状です。人間の皮膚は、傷ができると、それが治る過程で若干縮む傾向があることから、慢性的な切れ痔になっている人は、痔の傷口が治る度に肛門が狭まっていくそうです。1、2回の痔でそこまで症状が進行する可能性は低いようですが、重症化すると1cm以下の太さの便しか出なくなることもあるようです。そこまで重症化した人は、手術による治療が必要になります。

・潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に炎症が起きてそこがただれ、潰瘍が起きてしまう病気に、潰瘍性大腸炎というものがあります。日本にくらべ欧米で多いとされていましたが、近年では日本でも急増しています。潰瘍性大腸炎の主な症状としては、血の混じった血便やねばねばした粘血便、下痢、腹痛などが挙げられます。

潰瘍性大腸炎では便が下痢に近くなる傾向にありますが、便がゆるくなると、いきまずに排便できるため、肛門が大きく開かないことで、細い便となる可能性があります。大腸カメラで直接、大腸の中を観察することで診断され、潰瘍の深さや炎症の範囲、程度などで治療方針が決まっていきます。

・腸内細菌叢の乱れ
消化管の中には腸内細菌と呼ばれるさまざまな種類の細菌が共存しており、その生態系を腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼びます。食べるものや生活習慣によって、腸内細菌叢は変化していきますが、腸内細菌叢が乱れることも便秘や下痢の原因のひとつです。

腸内細菌叢が乱れ、便がゆるくなることで細い便になることもあるでしょう。食生活の乱れや疲れ、ストレス、寝不足、運動不足は腸内細菌叢の乱れに直結します。生活習慣を見直すことで、便の状態が改善されるかもしれません。

まとめ

便の色や臭い、形状は、自身の健康状態を知る指標になります。色や臭いは食べた物によって左右されやすく、また覚えておくのも大変ですが、「便の太さ」は自分自身で判断しやすいのではないでしょうか。いざという時に腸の不調を感じ取れるように、普段から「便の太さ」をチェックしておくとよいでしょう。

そしてもし、今回紹介したような病気のサインを感じたら、早めに医療機関を受診するようにしてくださいね。特に出血をともなう細い便は、自身では痔だと思っても、大腸ガンである可能性が考えられるので、注意しましょう。


木村医師よりコメント
生活習慣が崩れると便の状態が変わる、というのを実感される方も多いのではないでしょうか。特に腸内細菌叢はストレスや食生活で容易に変化します。また、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎といった病気もストレスや生活習慣が病気の状態を大きく左右します。排便で老廃物を体の外に出すことはとても大切です。生活のリズムを整えることで排泄を整え、すっきり健康に過ごせるとよいですね。
監修者

医師・木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

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