VOL.51 便秘になりやすい食べ物はある?解消に役立つ栄養素や対策方法も解説

便秘になる原因の1つに、食事内容があげられます。便秘に悩んでいる方は、食事内容を見直すことで症状が改善されるかもしれません。
そこで今回は、便秘になりやすい食べ物を紹介します。あわせて腸内環境を整える栄養素や、便秘解消のために心がけたい生活習慣についても解説します。
便秘になりやすい食べ物とは?

便秘は生活の質を低下させる症状であり、食事が原因の1つと考えられています。便秘になりやすい食べ物もあるため、食生活を見直すことが大切です。
肉類
肉類を中心とした欧米風の食生活は、動物性脂肪を過剰に摂りがちです。こうした食事を続けていると、膵臓で作られる脂肪を分解する「酵素の分泌」が追いつかず、脂肪が十分に消化されないまま大腸に届いてしまうことがあります。
分解しきれなかった脂肪が大腸に運ばれると、腸内に悪玉菌が増えやすくなり、便通のリズムが乱れることがあります。
タンニンが含まれた食べ物や飲み物
タンニンとは、植物に含まれた渋みのもととなる成分であり、化学的にはフェノール性水酸基という性質をもつ物質の集まりです。
タンニンを過剰摂取すると、腸に特殊な膜が張られ、ぜん動運動を抑制する可能性があります。
タンニンが多く含まれている食べ物・飲み物の例は、以下のとおりです。
- ・柿
- ・お茶類
- ・コーヒー
- ・ワイン
- ・日本酒
- ・ウイスキーなど
また、健康食品にもタンニンが含まれていることがあります。
脂質の多い食べ物
脂の多い肉料理や揚げ物、バターやクリームをたっぷり使った料理などは、脂質を多く含みます。そのため、過剰に摂取すると腸内環境に影響を及ぼすことがあります。ただし、脂質を摂らないほうが良いわけではありません。
オリーブオイルに含まれる不飽和脂肪酸には、排便をサポートする働きがあるとされ、適度な摂取は便通改善に役立つ場合があります。油分を全て控えるのではなく、種類や量を配慮することが大切です。
便秘解消に役立つ食べ物に含まれる栄養素
便秘解消効果に期待できる栄養素としては、食物繊維や乳酸菌、オリゴ糖、脂質などがあげられます。
普段の食生活にも取り入れやすいため、便秘に悩んでいる方は以下の栄養素が含まれている食べ物を摂取してみると良いでしょう。
水溶性食物繊維



便秘解消には、食物繊維を積極的に摂取することが推奨されています。食物繊維とは、食物に含まれる成分のうち、人の消化酵素では分解されにくいものをさします。
食物繊維には、大きく分けて水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維が多く含まれる食材は以下のとおりです。
- ・海藻類
- ・こんにゃく
- ・オクラ
- ・やまいも など
水溶性食物繊維は、腸内で水分を含むとヌルヌルしたゲル状になり、有害成分を吸着して体外に排出する働きがあります。
また、腸内の善玉菌のエサにもなり、腸内環境を整えるのに役立つといわれています。
不溶性食物繊維


不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収して膨らみ、腸の壁を刺激することで、ぜん動運動(腸の内容物を押し出す動き)を促します。
代表的な不溶性食物繊維の種類と、それらが多く含まれる食材は以下のとおりです。
| 不溶性食物繊維の種類 | 含まれる食材 |
|---|---|
| セルロース | 玄米、大豆、ごぼう など |
| キチン・キトサン | きのこ類 など |
| ペクチン(※) | キャベツ、みかん、りんご など |
(※)ペクチンは、水溶性・不溶性の両方の性質を持つ食物繊維です。
乳酸菌

乳酸菌は腸内環境を整える働きがあるとされ、多くの発酵食品に含まれています。ヨーグルト・チーズに含まれる「動物性乳酸菌」や、味噌・漬物・醤油に含まれる「植物性乳酸菌」など、種類や特徴はさまざまです。
乳酸菌のなかには、酸や熱に強く、腸まで届きやすい性質を持つものもありますが、全ての乳酸菌が生きたまま腸に届くわけではありません。
しかし、近年では乳酸菌が死滅しても整腸作用が期待できるとの報告があり、いずれにしても腸内に良い影響をもたらすとされています。
乳酸菌が多く含まれる食材は以下のとおりです。
- ・納豆
- ・キムチ
- ・ぬか漬け
- ・チーズ
- ・ヨーグルト
- ・味噌
- ・醤油
「食事に1品追加する」「おやつに取り入れる」などして、無理のない範囲で毎日の食生活に取り入れると良いでしょう。
オリゴ糖
腸内環境を良い状態に保つには、善玉菌が腸内で元気に活動できる環境づくりが必要です。ビフィズス菌をはじめとする、善玉菌の活動をサポートする成分の1つがオリゴ糖です。
オリゴ糖は人の消化酵素では分解されにくく、そのまま腸に届き、善玉菌の栄養源になるといわれています。
また、腸内細菌の作用で発酵すると、酢酸や乳酸などの有機酸が生成され、腸内がやや酸性に傾きます。腸内が酸性になると悪玉菌が増えにくくなるとされ、腸内環境のバランスを保ちやすくなります。
脂質

脂質は、タンパク質や炭水化物と並ぶ三大栄養素の1つです。脂質の主成分である脂肪酸はエネルギー源になるほか、体の組織を作ったり、身体機能を正常に保ったりする上で欠かせません。
たとえ減量中であっても、健康を維持するためには適度な脂肪の摂取が必要です。また、油分によって便のすべりが良くなり、脂肪酸が腸を刺激してぜん動運動を促します。
脂質は、料理に使う油だけでなく、魚や肉などの食材にも含まれています。過剰摂取に注意しながら、毎日の食事にバランス良く取り入れましょう。
そのほかの便秘解消に役立つ栄養素
食物繊維や乳酸菌、脂質などのほかにも、便秘解消に役立つ食べ物はあります。
例えば、マグネシウムは腸内に水分を引き込み、便をやわらかくする働きがあるとされています。マグネシウムを多く含む食材は以下のとおりです。
- ・ひじき
- ・わかめ
- ・切り干し大根
- ・ほうれん草
- ・玄米
- ・大豆製品
また、コーヒーは、カフェインの作用によって腸を刺激し排便を促す場合があり、人によっては便秘の改善に役立つこともあります。
ただし、コーヒーに含まれるタンニンには、腸の動きを抑える働きもあるため、飲みすぎには注意しましょう。
食べ物以外で便秘になる主な原因
便秘を予防するなら、食生活だけでなく、生活習慣やストレスにも気を配り、心身のバランスを整えることが大切です。
また、何らかの疾患が原因で便秘が起こるケースもあります。その場合は、医療機関で原因となる疾患の治療を受けなければなりません。
ここでは、食べ物以外に考えられる、主な便秘の原因について解説します。
水分不足
便秘を招く原因として、意外と多いのが水分不足です。便の大半は水分で構成されており、健康な便の約80%は水分といわれています。
残りの成分は、食べ物のカスや腸の粘膜から剥がれ落ちた細胞、腸内細菌などです。水分をきちんと補給していれば、便が適度なやわらかさを保ち、スムーズに排出されやすくなります。
また、水分で便のカサが増すと腸の壁が刺激され、ぜん動運動を促すことにもつながります。
過労やストレスによる自律神経の乱れ
自律神経には、体を活発にする交感神経と、リラックス状態をつくる副交感神経があり、互いにバランスを取りながら働きます。
腸のぜん動運動は、主に副交感神経によって促されるため、リラックスしているときには腸の働きが活発になります。
例えば、旅行中に便秘になりやすいのは、環境の変化による緊張で交感神経が優位になり、副交感神経の働きが低下するためです。
自律神経は腸の働きと深く関わっており、心身のリズムを整えることが便通改善にもつながります。
運動不足による筋肉の低下
運動不足も便秘の一因です。
例えば、「徒歩で移動できる距離も車を使う」「仕事中は座りっぱなし」「休日は自宅で過ごすことが多い」など、体を動かす時間が少ない生活を続けていると、筋肉は徐々に衰えてしまいます。
筋力の低下により便を押し出す力が弱まると、排便リズムが乱れやすくなります。一見関係なさそうに思える足腰の筋肉も、大腸の働きを間接的に促す役割を担っており、運動不足による血行不良も胃腸の働きを鈍らせる要因の1つです。
何かしらの疾患
「たかが便秘」と軽く考えてしまいがちですが、実は体の不調や疾患が原因の場合があります。
例えば、何らかの影響で腸の一部が狭くなっていたり、ふさがっていたりすると、便の通過が妨げられて便秘になることがあります。
また、腸の動きをコントロールする神経や筋肉の異常が関係しているケースもあります。
とくに、便秘と下痢を繰り返す場合や腹痛や吐き気を伴う場合や、血便が見られる場合、体重減少が伴う場合は、重大な疾患が隠れている可能性もあります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
食生活以外で心がけたい便秘対策
便秘は食生活の影響を大きく受ける一方で、生活習慣にも深く関わっています。
以下では、食べ物以外の観点から、便秘を予防・改善するために意識したい生活習慣のポイントを紹介します。
運動する習慣をつける
適度な運動は腸の動きを促すため、便秘の予防・改善に役立つとされています。
ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動は、血流を促進し、腸のぜん動運動をサポートする効果が期待できます。
また、お腹をひねるストレッチや腹筋を使う運動は、排便時に腹圧をかけるための筋力維持につなげることが可能です。
さらに、運動にはストレスをやわらげ、自律神経のバランスを整える作用もあるとされています。激しい運動をする必要はありません。毎日少しでも体を動かす習慣をつけましょう。
しっかり睡眠を取る
質の良い睡眠を確保することは、便秘の予防・改善においても重要なポイントです。睡眠不足が続くと、自律神経が乱れ、腸の働きが低下しやすくなります。
とくに、腸のぜん動運動を促す副交感神経は、夜間や就寝中に活性化するといわれており、十分な睡眠がとれないと、腸の動きも鈍くなる可能性があります。
生活リズムを整え、しっかりと休息を取ることは、腸内環境を整える上でも大切です。
ストレスを溜め込まないようにする
強いストレスを感じると、自律神経が乱れ、腸の動きが鈍くなります。日常生活のなかで、ストレスを意識的に緩和する時間を持つことも必要です。
「軽い運動をする」「ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる」「自然の中で過ごす」「音楽や映画を楽しむ」など、気持ちをリラックスさせる習慣を取り入れてみましょう。
また、自身が何にストレスを感じているのかを立ち止まって見つめ直すことも、心身のバランスを整える第一歩になります。
なお、暴飲暴食でストレスを紛らわせようとすると腸に負担がかかり、便秘を悪化させるおそれがあります。
酸化マグネシウム便秘薬を試してみる
食事や生活習慣の見直しとあわせて、市販の便秘薬を活用するのも1つの方法です。
とくに、酸化マグネシウム便秘薬は、腸内に水分を引き寄せることで便をやわらかくし、腸の動きを助けて自然に近い排便を促します。
比較的穏やかな作用で、お腹が痛くなりにくく、クセになりにくいという特徴があるため、慢性的な便秘に悩む方に使われています。
ただし、持病のある方やほかの薬を服用中の方は、使用前に医師や薬剤師へ相談しましょう。
なお、健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」はオンラインショップでも取り扱いがあるため、気になる方は購入を検討してみてください。
ただし、便秘薬を試しても症状が改善されない場合や、ほかに気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
便秘の予防・改善のために食べ物と生活習慣を見直そう
便秘を予防・改善するには、まずは日々の食生活を見直しましょう。脂っこい料理や肉類、タンニンを多く含む食品は便秘の原因となることがあるため、摂りすぎに注意してください。
一方で、腸内環境を整える食物繊維や発酵食品、乳酸菌、オリゴ糖などを積極的に取り入れると、腸の働きがサポートされ、自然な排便リズムの維持につながります。
また、運動不足やストレス、睡眠リズムの乱れも腸に影響を与えるため、生活習慣を整えることも忘れてはいけません。
なお、生活習慣の改善とあわせて、酸化マグネシウムなどの便秘薬を試してみるのも1つの方法です。
ただし、症状が長引く場合や、便秘以外の不調を伴う場合には、早めに医療機関を受診しましょう。









