イングランドにおける抗菌薬使用及び薬剤耐性化のサーベイランス計画、年次報告書第5報

Vol. 12 / No. 38
English surveillance programme for antimicrobial utilisation and resistance: fifth report

イングランドにおける抗菌薬使用及び薬剤耐性のサーベイランス計画の5報目の年次報告書が10月23日にPublic Health England(PHE)により発表された。この報告書では2013~2017年の抗菌薬使用及び薬剤耐性に関するデータを示している。また、PHEによる抗菌薬スチュワードシップの活動や個人及び専門家の取組みにも焦点を当てている。このレポートの要点を以下にまとめる。

薬剤耐性
血流感染症(BSI)の起炎菌となる菌種で主な抗菌薬に耐性を示すものの割合は、過去5年間で横這いである。しかし、薬剤耐性BSIの合計症例数という観点からすると、2013年から2017年にかけてBSIの罹患率は年々上昇し、そのため薬剤耐性の割合は35%増加した。

抗菌薬使用
イングランドにおける抗菌薬使用量は2013年から2017年にかけて全体で6.1%減少した。これは2010から2013年にかけて6%の増加を認めたときとは反対の現象である。2017年に処方された抗菌薬全体の81%がプライマリーケアによるものであった。しかし、プライマリーケアで処方された抗菌薬数は2017年までの5年間で13.2%減少した。
イングランドの2次医療機関における抗菌薬使用は、2013年から2017年にかけて全体として7.7%増加した。入院患者に対する処方は2%しか増加しなかったが、病院の外来ではこの5年間で215増加した。これは、2010~2013年に入院患者への処方が11.9%増加した、最初のESPAUレポートのデータと比べると改善している。2017年には、多かった入院患者の抗菌薬処方も主要な広域スペクトラム薬剤であるピペラシリン/タゾバクタムの供給不足の影響を受けている。同程度の抗菌スペクトラムをカバーするために代替となる2種類以上の抗菌薬使用が必要となったため、さらに220万の規定一日用量(DDD)が使用されることになった。

抗真菌薬の使用及び耐性
ESPAURレポートはイングランドの病院におけるCandida aurisの効果的な制御について言及している。現在、いくつかの国で大規模なアウトブレークが続いており、海外からの輸入感染がしばしば起こっているが、持続的なアウトブレークは発生していない。

抗菌薬スチュワードシップ
2018年のレポートでは、PHEや関連する専門機関、研究協力者が抗菌薬スチュワードシップに関するツール、介入及び評価を行うために行っている活動に焦点を当てている。NHS抗菌薬スチュワードシップチームによる抗菌薬使用のオーディットを通して全抗菌薬投与日数の17.1%が不必要とされた2次医療機関での不適切な抗菌薬使用に関するPHEのモデルとなる活動からの初期データが示されている。

市民及び医療従事者の教育及び認識向上
「Keep Antibiotics Working」キャンペーンは2017年10月に全国的に開始された。75万枚以上の「Keep Antibiotics Working」ポスター・リーフレットが地方政府やヘルスケアセンター、住宅購入組合など様々な協力機関に配布された。ESPAURレポートでは、このキャンペーン活動に関するデータ、Antibiotic Guardian、e-Bug及びTARGET(Treat Antibiotics Responsibly, Guidance, Education, Tools)などその他のPHEのリソースのデータを提示している。