イギリス公衆衛生週報 感染症トピックス
2018年11月09日

Vol. 12 / No. 40

イングランド及びウェールズでRSウイルスの流行が始まる

RSV activity starting to increase in England and Wales

イングランド(及びスコットランド、ウェールズ、北アイルランド)では2018年11月4日時点でインフルエンザの流行レベルは低い状態が続いており、流行の指標はベースラインの基準値未満であることがPublic Health England(PHE)のWeekly National Influenza Report最新号で示されている。
しかし、英国では例年の流行パターンから予測されたようにRSウイルスの流行レベルが上昇している。1歳未満の小児における(救急科受診者の)細気管支炎/気管支炎、咳及び呼吸困難のサーベイランス指標はここ数週間で上昇しており、RSウイルスに関する検査レポートの増加と一致している。
RSウイルスの流行は英国では典型的には毎年10~3月にみられ、ほとんどの感染例は約6週間の比較的短い流行期に発生する。RSウイルス感染例数のピークは毎年12月と1月に報告されるが、ピークの規模は年によってばらつきが大きい。ほとんどの感染例は軽症で外来管理が可能である。一部の感染例は重症で入院治療が必要となる。
RSウイルスは特に1歳未満の小児の細気管支炎などの重症の呼吸器感染症の起炎病原体として最多のものである。通常、生涯を通じて感染を繰り返し、小児よりも軽症であるが高齢者で多くみられる。
臨床医は、重症細気管支炎の発症リスクがある小児の予防に適応を有するパリビズマブ月1回投与を考慮すべきである。リスクの高い小児として、慢性肺疾患を有し酸素療法中の2歳未満の小児、重症の先天性心疾患を有する6カ月未満の乳児などが挙げられる。
詳しい情報は「Immunisation against Infectious Disease(the Green Book)」のRSウイルスの章(27a)及びNICE Treatment Summariesを参照されたい。

欧州で薬剤耐性菌が公衆保健に及ぼす影響のアセスメント

Public health burden of AMR in Europe assessed

EU及びEEA諸国で薬剤耐性菌が公衆保健に及ぼす影響は、障害調整生命年(DALYs)の損失という点からすると過去20年間で2倍になっており、現在はHIV、インフルエンザ及び結核を組み合わせたものと同等の程度で、最も薬剤耐性菌が多い加盟国では年間数千例の死亡の原因となっている。
これはLancet Infectious Diseasesに掲載された、16の耐性パターンを持った8種の細菌による薬剤耐性感染症に関するECDCの革新的な研究の結論である。
この研究は2015年のEU及びEEA諸国におけるDALYデータを推計したものであり、最も影響の大きかった2カ国はイタリア及びギリシャで、それぞれ人口100万人当たり448及び427DALYであった。一方、欧州30カ国のうち13位であった英国は、薬剤耐性菌による感染症のために人口100万人当たり約80DALYが失われたと推計された。
この研究論文に附せられた論説では、薬剤耐性菌が公衆保健に及ぼす国際的な脅威の深刻さについて言及し、協調した世界的な取組みの必要性を改めて強調している。

HSEによる保健及び安全性に関する統計

HSE annual health and safety statistics

Health and Safety Executiveは、2017年の英国における職業関連の事故、疾病及び自己申告による健康被害に関する年間統計データを発表した。
過去のアスベスト使用の負の遺産は依然として死亡率データのトップとなっており、2017年の職業関連呼吸器疾患に基づく12,000件の死亡の約40%を占めている。その他の物質に関連する肺癌は全体の約23%、COPDは全体の約32%を占めた。2017~2018年には、炭鉱夫の塵肺が136件、アスベスト―シスが500件、珪肺が11件、及びアレルギー性肺胞炎/綿肺症が5件の死亡に関連していた。HSEは1980年以前のアスベスト暴露による胸膜中皮腫の死亡(2017/18年は2,500件)は、2018/19年にピークを迎え、その後減少し始めると考えられる。
HSEはアスベスト関連疾患、職業性喘息、COPD、珪肺及び炭鉱夫の塵肺、その他の職業性肺疾患(アレルギー性肺胞炎、綿肺症及びアレルギー性鼻炎)といった職業性肺疾患に関する5項目の詳細な年間統計の解説を発表した。
(マンチェスター大学が皮膚科医と共同で運営している)EPIDERMサーベイランススキームのデータに基づく職業関連皮膚疾患のレポートによると、2017年に皮膚科医により報告された職業性接触皮膚炎(OCD)の新規患者数の推計は981例であったが、その発生件数には長期的な減少傾向がみられている。職業関連皮膚疾患の原因で最も多かったのは石鹸、洗浄剤、濡れた手による就労で、皮膚科医を受診した割合が最も高かったのはフローリスト、理髪師、美容師、調理師、工員及び医療従事者であった。