イギリス公衆衛生週報 感染症トピックス
2018年11月23日

Vol. 12 / No. 42

英国における注射薬使用者の感染症:年次報告書の要約

Infections among people who inject drugs in the UK: annual report in summary

英国における注射薬使用者(PWID)の感染症に関する年次報告書、「Shooting Up」がPublic Health Englandにより発表された。この報告書は、PHE、Health Protection Scotland、Public Health Wales、およびPublic Health Agency Northern Irelandが合同で作成した。
PWIDは、HIV、HBV、HCVなどのウイルス、Clostridium botulinum及びStaphylococcus aureusのような細菌など、様々な感染症に罹患しやすく、重症化や死亡に至る可能性がある。この報告書では、精神賦活性薬物(ヘロインやコカインなど)の注射をしている者の感染症の程度とそれに関連したリスクを検証している。

HCVの陽性率は依然として高く、感染例の半数が診断されていない
C型肝炎はPWIDの血液媒介性感染症では依然として最も多く、英国のこの患者群では高頻度に伝播が起こる。PWID5人に2人がHCV陽性である。新規のDAA製剤の普及により、HCVによる疾患の発症や死亡を抑制し、伝播のリスクを低下させる可能性が高まる。HCV陽性のPWIDの約半数(48%)が診断されていないため、HCVの検査を勧め、検査を受ける患者を増やすことが特に重要である。自身の感染を知らない者のうち、22%は検査をこれまで一度も受けたことがなく、44%は2年以上検査を受けていないと報告されていた。

HIVの陽性率は依然低いが、リスクは継続して認められる

HBVは依然少ないが、ワクチン接種を、特に若年者で継続する必要がある
英国では、PWID約500人に1人がHBV陽性である。PWIDの約3/4はHBVワクチン接種を受けたと報告されているが、現在、ワクチン接種率は上昇しておらず、特に若年層(64%)及び最近注射薬を始めた者(57%)で低い。

細菌感染はいまだに問題である
PWIDの細菌感染はしばしば全身の衛生状態の悪さや未滅菌の注射器具が原因となっている。PWIDでは、細菌感染は重症化しやすく、初期症状が出てから受診するまでの期間が長くなると重症度が増すことになる。2017年にはPWIDの半数(50%)では前年に注射部位に感染兆候があったことが報告されており、これは2011-2013年の28%と比べて増加している。細菌感染のアウトブレーク、特に侵襲型A群連鎖球菌感染症はPWIDで発生が続いている。

リスクの高い注射手技は減少しているが、依然として問題である
PWIDによる注射針や注射器の供用は英国全体で減少してきたが、供用は依然として問題であり、2017年には6人に1人以上が前月に注射針と注射器を供用したことが報告されている。


精神賦活性薬物注射のパターンの変化が懸念される

英国では2017年もいまだにヘロインが最も使用されている注射薬である。イングランド及びウェールズでは近年、クラックの注射が増加しており、2017年は過去4週間に注射薬物を使用した者の51%がクラックを使用したと報告されており、2006年の35%と比べて増加している。この増加はウェールズ、イングランド東部、南東部、南西部及びイーストミッドランドで顕著であった。スコットランドではクラックの使用はかなり少なく、北アイルランドでは報告がなかった。
また、前月に鼠径部に注射したと報告されたPWIDの割合の増加がみられており、2017年には5人に2人が鼠径部に注射したと報告されている。


効果的な介入を継続及び適正化が必要である

この報告書で提示された所見から、注射による健康被害の減少及び注射薬をやめたいと考える者の支援を目的としたサービスの継続及び改善が必要であることが示されている。地域における注射針・注射器の適正使用プログラムの提供、オピオイド置換療法やその他の薬物治療など、様々なサービスを提供しなければならない。感染症に対する予防接種や検査は定期的にPWID又は以前注射薬を使用していた者に施行する必要がある。ケアのパスウェイや治療は血液媒介性ウイルスや細菌感染の診断を受けた者にとって最適なものでなければならない。

感染症のコモンディジーズに対する処方:NICE及びPHEの改訂ガイダンスが発表

Prescribing for common infections: updated guidance published by NICE and PHE

PHE及びNICEは、新たな「Summary of Antimicrobial Prescribing Guidance: Managing Common Infections」を発表した。これは以下の内容を考慮したガイダンスを、要約の表を一つの文書にした形でまとめたものである。

  • NICEとPHEが合同で作成した感染症のコモンディジーズの管理に関する新たなガイダンス
  • Clinical Commissioning Groupが自身の地域に合わせたガイダンスを作成するために用いられる、既存のPHE抗菌薬サマリー表

統合されたガイダンスは、プライマリーケア及び2次医療機関の医療従事者が感染症のコモンディジーズを管理する際に使用することを目的としたものである。
この新たなサマリー表(NICEのウェブサイトの「Antimicrobial Prescribing Guidelines」セクションに掲載)は、50種類の感染症をカバーしており、Word(及びPDF)のフォーマットで作成されており、CCGsが地域の状況に合わせて編集できるようになっている。
NICEの文書は、先日作成された急性中耳炎、副鼻腔炎、急性咽頭炎及び尿路感染症(下部、上部、再発性、及び前立腺炎)のガイダンスをもとに作られている。表のなかの各NICE/PHE感染症サマリーは、関連するインフォグラフィック及びNICEウェブサイト内のガイダンス全文にハイパーリンクされている。
この新しい文書のために、PHEは文書の細かな改訂を行い、ライム病に関する新たな項目が作られた。PHEの各感染症サマリーは、PHEウェブサイトの関連するエビデンス及び参照文献へリンクしている。
感染症ガイダンスのその他の関連文書はNICE/PHEが合同で作成しているため、サマリー表のなかの関連するPHE文書も差し替えられる予定である。

コンゴ民主共和国東部のエボラウイルス感染症アウトブレーク:第3報

EVD outbreak in eastern DRC: third update

8月1日にコンゴ民主共和国東部で宣言されたエボラウイルス感染症アウトブレークが持続している。これまで、346例の確定診断例及び47例の可能性例がNorth Kivu及びIturiの2州の14医療圏から報告されている。前月には165例の新規確定診断例が記録され、新たに5の医療圏(Katwa、Kyondo、Lubero、Mutwanga及びVuhovi)で発生がみられた。
10月初旬には罹患率の著明な上昇が報告され、この高い罹患率はここ数週間持続している。接触者追跡のカバー率は9、10月以降改善しているが、感染例の多くは確定診断例の接触者とは考えられていない者での発生の報告が続いている。このことは、流行しているコミュニティで、制御されていない、未知の感染連鎖があることを示唆している。この感染の連鎖を遮断するために、感染例の検索に大きな努力がはらわれており、Beniの公的及び非公的な医療機関で特に力が注がれている。
特にBeniにおける感染対策活動は、非常に破綻しやすい。前月には深刻なセキュリティの問題により、接触者追跡やワクチン接種などの対策活動の妨害が続いた。アウトブレークは少なくとも今後6カ月は持続すると予想されるが、WHOはコンゴ民主共和国保健省及びその他の国際的パートナーと協力することで必ず終息できると確信している。
英国市民に対するリスクは、依然として非常に低い~無視できるレベルである。この状況を厳密にモニタリングし、定期的にリスクアセスメントの見直しを行う。