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23号 結核のアウトブレイク
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どのような施設においても結核のアウトブレイクは発生しうる。このような場合、適切かつ迅速な対応が求められる。CDC週報にコロラド州の高等学校での大規模なアウトブレイクの報告1)があったので、接触者調査と潜在性結核感染の治療について解説したい。接触者調査では最も曝露した集団から調査を始め、次第に曝露の少ない集団に調査を移行してゆく。潜在性結核感染の治療では「イソニアジド+リファペンチン」という新しいレジメンが実際のアウトブレイクで用いられた。

発端患者

2011年12月末、コロラド州にある1,381人の生徒と職員を有する高等学校の1人の生徒が2ヶ月の咳嗽、発熱、寝汗のあとに入院となった。その生徒は米国生まれであるが、結核の唯一のリスクとして、8~10歳のときに米国の10倍の結核が発生している国に住んでいた。胸部レントゲンは肺の空洞を示し、喀痰塗抹検査では抗酸菌陽性であった。これらは共に感染性がある指標である。喀痰培養からの結核菌はイソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミドに感受性があり、2012年9月に4剤レジメンによる治療が完了している。

接触者調査

発端患者と伴に屋内で最も長く時間を費やした人に結核感染の検査を優先的に実施した。その結果、家族5人全員がIGRA[註釈1]陽性であった。1人は培養にて泌尿器生殖器結核が確認されたが、胸部レントゲンは正常であった。結核菌の遺伝子型は発端患者と同一であった。もう1人は当初は結核発症の可能性があるということで4剤レジメンによる治療が行われたが、2カ月の治療の後にLTBI[註釈2]であると判断された。残りの3人はLTBIであり、リファンピシン(連日投与×4カ月)が行われた。

「6人の教員」および「発端患者と少なくとも2クラスが一緒であった13人の生徒」にIGRAが検査された。結核発症者はいなかったが、19人中10人(53%)がLTBIであった。そのため、発端患者と1クラスのみ一緒であった140人の生徒まで検査が拡大された。このなかの1人は最初は結核と診断されたが、4剤による治療を2カ月実施したところで、LTBIに変更された。49人(35%)がLTBIと診断された。

これらの所見は校内にて結核菌の伝播があったことを示唆するため、更に調査を拡大して、2011年の秋学期に登録もしくは勤務したすべての生徒および職員も対象とした。一般に、結核は初感染してから6~18カ月後に発症するので、LTBIの迅速な診断と治療が急がれた。地域の検査室で、約1,000人の追加接触者をIGRAにて迅速に評価することは困難なので、IGRAとTST[註釈3]が併用された。「米国外に住んでいたことがある」「BCGの接種歴がある」「TST陽性の既往がある」という生徒および職員にはIGRAを実施し、その他にはTSTを実施した。

2月中旬から3月中旬まで、校内に12のスクリーニング外来を設置し、そこで保健所スタッフが1,053人の接触者をインタビューして検査した[表]。そして、他の場所でも37人がスクリーニングされた。結局、(スクリーニング必要であるとして)探し出された1,222人中の1,090人(89.2%)がスクリーニングされた。1人が胸部レントゲンにて肺結核と診断されて治療されたが、喀痰培養は陰性であった。102人(8.3%)がLTBIと診断された。早期に調査された校内接触者を合わせると、1,381人の校内接触者のうち1,249人(90.4%)が医学的に評価された。このうち、4人には過去にLTBIの治療歴があったので、胸部レントゲンのみ評価された。435人がIGRAにて検査され、810人にTSTが実施された。

表. 結核の生徒の校内接触者*における結核菌感染の割合(曝露期間の程度の順に記載)
グループ✝ 探し出された*** 医学的
評価§
初期診断

結核  LTBI

最終診断

結核  LTBI

感染率
(%)¶
発端患者と2クラス以上
一緒の生徒および教員**
19 19 0 10 0 10 53
発端患者と1クラス一緒の生徒 140 140 1 49 0 50 36
その他 1,222 1,090 1 102 1 102 9
校内の全接触者 1,381 1,294 2 161 1 162 13

LTBI:潜在性結核感染(latent M.tuberculosis infection)
* 学校での調査の前に評価された5人の家族内接触者および調査後に探し出された20人の学校に関連しない接触者は含まれない。
✝ 曝露期間の相対的な長さによって並んでいる。お互いに重複しない。
§ LTBIまたは結核について十分に医学的評価されている。
¶ グループにおける感染率(結核およびLTBI);分母は医学的に十分に評価された接触者の数
** 発端患者の6人の教員はクラスの数に関係なく含まれる;そのほかの教員や職員は「その他」に含まれる。
*** (訳者註)スクリーニングが必要であるとして探し出された人の数

潜在性結核感染の治療

2012年2月末にリファペンチンの供給が安定するまで、LTBIの接触者には自己管理によるイソニアジド(連日投与×9カ月)もしくはリファンピシン(連日投与×4カ月)による治療が提示された。それ以降は、校内での直接監視下治療による「イソニアジド+リファペンチン」(週1回投与×12週)が好まれて推奨された。後者のレジメンが提示されたことが判っている90人の接触者のうち、60人がそれを選択した。これに加えて、提示の記録のない5人がこのレジメンを選択している。リファンピシンおよびリファペンチンはホルモン避妊薬の効果を減少させるので、保健所のクリニックにおいてコンドームが提供された。

結局、162人(13%)の接触者がLTBIであった。この中には結核と診断されて、4剤による治療が2カ月実施され、その後に診断がLTBIに変更された人も含まれている。残りの161人のLTBIの接触者のなかの159人(99%)が治療を開始し、そのうち153人(96%)が治療を完了した。

LTBIの治療の完遂率はレジメン間で同程度であり、イソニアジド(連日投与×9カ月)は3人中3人(100%)、リファンピシン(連日投与×4カ月)は91人中88人(97%)、イソニアジド+リファペンチン(週1回投与×12週)は65人中61人(94%)であった。レジメンを完遂しなかった4人の中の1人はイソニアジド(連日投与×9カ月)を完了した。リファンピシンのレジメンを完了しなかった3人の接触者の中の2人は理由不明にて中断している。他の1人は有害事象(発疹)ゆえに治療を中断した。そして、イソニアジドが処方されたが、それも別の有害事象(肝炎)にて中断となった。イソニアジド+リファペンチンを完遂しなかった4人の接触者のうち1人は6回の服用後、理由不明で中断した。3人は有害事象のために治療を中断した。1人は頭痛、吐き気、抑うつがみられ、イソニアジド(連日投与×9カ月)を完了した。1人は発疹、めまい、霧視がみられたため、イソニアジド(連日投与)に戻ったが、更なる治療は辞退した。1人は発熱、疼痛、倦怠感、リファペンチンと他の薬剤との相互作用ゆえに、更なる治療を辞退した。イソニアジド+リファペンチン(週1回投与×12週)は人々が集まる環境において有望なレジメンであり、患者および保健所にとっては便利かつ有効なレジメンでもある。

文献

  1. CDC. Transmission of Mycobacterium tuberculosis in a high school and school – based supervision of an isoniazid – rifapentine regimen for preventing tuberculosis ̶ Colorado, 2011‒2012
    http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm6239.pdf

[註釈1]
IGRA:インターフェロンγ放出アッセイ(Interferon – Gamma Release Assay)であり、T-SpotおよびQFTが含まれる

[註釈2]
LTBI:潜在性結核(Latent Tuberculosis Infection)

[註釈3]
TST:ツベルクリン反応検査(Tuberculin Skin Test)

矢野 邦夫

浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 臨床研修管理室長
兼 衛生管理室長