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106号 妊婦とCOVID-19の重症化要因
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妊婦では重症COVID-19のリスクが高くなる可能性があり、免疫システムと呼吸生理学の変化が関連していると考えられる。CDCが調査結果を報告しているので紹介する1)

3月1日から5月30日の期間に、COVID-19入院についてのワクチン安全データリンク(VSD:Vaccine Safety
Datalink)のサーベイランスにおいて、COVID-19と診断されて入院した4,408人のうち、105人(2.4%)の妊婦が特定された。そのうち、104人の妊婦がRT-PCR陽性であり、1人の妊婦が検査陰性であった。この妊婦は症状があり、かつ、COVID-19との濃厚接触があったため、COVID-19の臨床診断を受けた。これらの妊婦は、入院の主な理由に基づいて、次の3つのグループに分類された[図1]。

  1. 産科的理由がなく、COVID-19の治療が必要である妊婦(例:呼吸状態の悪化)
  2. 産科的理由があり、かつ、COVID-19に一致する症状(例:発熱、悪寒、咳、息切れ)のある妊婦
  3. 産科的理由はあるが、COVID-19に一致した症状はなく、入院時のSARS-CoV-2の検査結果が陽性の妊婦(またはCOVID-19の既往歴がある妊婦)
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入院の理由[図2]

これら105人の妊婦のうち、43人(41.0%)がCOVID-19で入院し、62人(59.0%)が産科的理由で入院した。産科的理由で入院した62人の女性のうち、12人(19.4%)はCOVID-19に一致する症状があり、50人(80.6%)は無症状であった。年齢の中央値は30歳であった(範囲=17~54歳)。
COVID-19で入院した43人の中の13人(30.2%)を含む14人(13.3%)の妊婦はICUの入室が必要であった。これらのうち6人は人工呼吸器を必要とし、妊娠15週目に入院した1人はCOVID-19で死亡した。

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肥満・妊娠糖尿病について

妊娠前の肥満(ボディマス・インデックス≧30kg/m2)の有病率は全体で36.2%であり、COVID-19で入院した43人(44.2%)の妊婦の方が、産科的理由で入院した62人(30.6%)の妊婦よりも有病率が高かった。同様に、妊娠糖尿病についても、COVID-19で入院した妊婦(25.6%)の方が産科的理由で入院した妊婦(8.1%)よりも有病率が高かった。
産科的理由がなくCOVID-19で入院した妊婦は、産科的理由で入院した妊婦と比較して、妊娠前の肥満と妊娠糖尿病の割合が高いことが確認された。これまでも、肥満や糖尿病などの基本的な病状は、重度のCOVID-19疾患の危険因子として認識されている。COVID-19の46人の妊婦を対象とした別の研究では、重症感染症のほぼすべての女性が過体重または肥満であることが判明している。

早産・死産について

早産は全体で15.1%であり、生児では12.2%であった。これは、研究期間中のVSDのベースライン(43,571人の生児および死産のうち8.9%)よりも約70%高い。死産率(3.2%)は、SARS-CoV-2感染の妊婦の方がVSDのベースライン(0.6%)よりも4倍以上高かった。3人の死産はすべて分娩前であった。1人は胎盤剥離を示し、2人は病因が特定されていない。

結論

この研究によって、妊婦のCOVID-19では重症化(ICU入室または人工呼吸の必要性を含む)および死亡の発生率が高いことが判明した。特に、妊娠中の肥満と妊娠糖尿病の有病率は、COVID-19(呼吸状態の悪化など)で入院した妊婦の方が、産科的理由(出産など)で入院した妊婦よりも高かった。そして、COVID-19で入院した妊婦の30%(43人中13人)に集中治療が必要であり、1人の妊婦がCOVID-19で死亡している。
出産前カウンセリングにおいて、マスクの使用、頻回の手洗い、身体的距離などの予防策を強調することは、妊婦(特に肥満や妊娠糖尿病のある妊婦)のCOVID-19の予防に役立ち、有害な妊娠結果を減らす可能性がある。

文献

  1. Panagiotakopoulos L, et al. SARS-CoV-2 infection among hospitalized pregnant women: Reasons for admission and pregnancy characteristics ‒ Eight U.S. Health Care Centers, March 1‒May 30, 2020
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6938e2-H.pdf

矢野 邦夫

浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長