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113号 医療従事者におけるmRNA COVID-19ワクチンの有効性
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CDCが医療従事者におけるmRNA COVID-19ワクチンの有効性(SARS-CoV-2感染の予防)について報告しているので紹介する1)

調査

  • 2020年12月14日から2021年3月13日まで、米国の8つの地区で「医療従事者」「ファーストレスポンダー(災害や事故が起きた際に最初に対応する警察や消防隊員など)」「その他の必要不可欠かつ最前線の労働者」を対象として、SARS-CoV-2感染を調査した。
  • 参加者は、COVID-19と一致する症状(発熱、寒気、咳、息切れ、咽頭痛、下痢、筋肉痛、味覚嗅覚喪失として定義されている)の有無に関係なく、毎週定期的に鼻スワブを自己収集し、COVID-19と一致する症状の発症時にも追加の鼻スワブと唾液検体を採取した。
  • 検体は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR : reverse transcription‒polymerase chain reaction)によって検査された。

参加者

  • SARS-CoV-2感染の既往(過去の検査記録)のない3,950人の参加者が解析された。参加者の内訳は「医師およびその他の臨床リーダー(プライマリヘルスケア担当者)(21.1%)」「看護師およびその他の関連医療担当者(33.8%)」「ファーストレスポンダー(21.6%)」「その他の必要不可欠かつ最前線の労働者(23.5%)」であった。
  • 参加者のほとんど(75.0%)は、研究期間中に1回以上のワクチン接種を受けた。そして、477人(12.1%)は1回目接種を受けたが、研究期間終了までに2回目接種を受けてなかった。2,479人(62.8%)は2回接種を受けた。
  • ワクチン接種を受けた参加者の62.7%がPfizer-BioNTechワクチンを接種し、29.6%がModernaワクチンを接種した。残りのmRNAワクチン(7.7%)については、製品確認が保留されている。

SARS-CoV-2感染

  • 205人(5.2%)のSARS-CoV-2感染がRT-PCRによって診断された。その大部分は、毎週の検体採取(58.0%)によって特定され、42.0%はCOVID-19と一致する症状の発症時に収集された検体から特定された。しかし、感染者の大部分(87.3%)は、COVID-19と一致する症状に関連していた。残りの感染者は、COVID-19と一致する症状の定義に含まれない他の症状(頭痛、倦怠感、鼻漏など)(2.0%)がみられたか、症状なし(10.7%)であった。死亡者はいなかった。
  • ワクチン未接種の参加者では116,657人-日(person-days)[註釈]において、161人の感染が報告された(発生率=1.38/1,000人-日)[図1]。
  • 部分接種については、1回目接種のあと14日以上経過し、2回目が未接種(1回目の接種は受けたが、研究終了日までに2回目接種を受けなかった)の15,868人-日において、5人の感染が報告された。そして、1回目接種のあと14日以上経過し、2回目接種前の25,988人-日において、3人の感染が報告された。すなわち、部分接種の41,856人-日(1回目接種14日が経過し、2回目の投与前)では、8人の感染が報告されたことになる(発生率=0.19/1,000人-日)。
  • 完全接種(2回目の投与後14日以上経過)の78,902人-日で3人の感染が報告された(発生率=0.04/1,000人-日)。
図1 mRNAワクチンによる免疫化状態別の「医療従事者」「ファーストリスポンダー」「その他の必要不可欠かつ最前線の労働者」における人-日、SARS-Co-V-2感染、ワクチンの有効性 -米国の8つの地区、2020年12月14日~2021年3月13日

結果

  • 米国の8つの地区で13週間にわたって医療従事者、ファーストレスポンダー、その他の必要不可欠かつ最前線の労働者を対象として、mRNA COVID-19ワクチン(Pfizer-BioNTechのBNT162b2およびModernaのmRNA-1273)が実際の状況において非常に効果的であることが確認された。

  • 完全接種者でのワクチンの有効性は、90%(95%信頼区間[CI]=68%‒97%)であった。部分接種者であっても、80%(95%CI=59%‒90%)であった。

まとめ

3,950人の医療従事者、ファーストレスポンダー、その他の必要不可欠かつ最前線の労働者を対象とした研究では、完全接種者でのmRNAワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染に対して90%であった[図2]。部分接種者であっても有効性は80%であった。COVID-19ワクチン接種はすべての適格者に推奨される。

mRNA COVID-19ワクチンは現実世界の条件下で感染を防ぐために極めて有効である

文献

  1. Thompson MG, et al. Interim estimates of vaccine effectiveness o f BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 vaccines in preventing SARS-C oV-2 infection among health care personnel, first responders, and other essential and frontline workers ̶ Eight U.S. Locations, December 2020‒March 2021
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7013e3-H.pdf

[註釈]
人-日(Person-days)
人-日は、各参加者が研究に寄与した(SARS-CoV-2感染に対する)リスク時間の推定値である。

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問