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118号 小児および青年におけるCOVID-19関連入院
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デルタ株の流行によって小児や青年の感染者が増えている。CDCがCOVID-19関連入院について週報(MMWR)に記載しているので紹介する1)

成人ではCOVID-19関連の入院や死亡が頻繁に発生しているが、COVID-19は小児や青年でも深刻な結果をもたらすことがある。この解析では、COVID-19関連入院の監視ネットワーク(COVID-NET)のデータを使用して、米国の0~17歳の小児と青年におけるCOVID-19関連入院について記述している。

調査

  • COVID-NETは米国14州の99郡における検査確認COVID-19関連入院の人口ベースサーベイランスを実施している。
  • 入院中または入院前14日以内にSARS-CoV-2のPCR検査または迅速抗原検査の結果が陽性であったサーベイランス管轄地域の居住者は、COVID-19関連入院に分類された。
  • 重度疾患の評価指標には下記のデータが収集された。
    入院期間の中央値、ICU入院、最高レベルの呼吸補助(侵襲的機械的換気、バイレベル気道陽圧または持続的気道陽圧、高流量鼻カニューレなど)、昇圧剤の使用、院内死亡
  • デルタ株が流行している時期に入院した小児と青年におけるCOVID-19重症度を評価するために、重症疾患の評価の割合を、デルタ株が米国において優勢株になる以前(2020年3月1日から2021年6月19日)と以後(2021年6月20日から7月31日)で比較した。

COVID‐19関連の累積入院数[図1]

  • 2020年3月1日から2021年8月14日までの期間における、COVID-19関連入院の累積入院数は小児および青年10万人当たり49.7であった。
  • 入院数は0~4歳の小児(69.2)と12~17歳の青年(63.7)で最も高く、5~11歳の小児(24.0)で最も低かった。

COVID‐19関連の毎週の入院率[図2]

  • 2021年8月14日までの週における、小児と青年10万人当たりの週ごとのCOVID-19関連入院率(1.4)は、2021年6月26日までの週での入院率(0.3)のほぼ5倍となった。
  • 0~4歳の小児では、2021年8月14日までの週における、週ごとの入院率は2021年6月26日までの週の約10倍となった。
  • 毎週の入院率は、6月12日から7月3日までの週が2021年で最低であった(小児と青年10万人当たり0.3)。
  • デルタ株が優勢になって以降の6週間に、入院率は毎週増加し、2021年8月14日までの週には1.4に上昇した。これは、2021年6月26日までの週の入院率の4.7倍であり、2021年1月9日までの週に観察された1.5の入院率のピークに近づいた。
  • 最も急激な増加が見られたのは0~4歳の小児で、2021年8月14日までの週での入院率(1.9)は2021年6月26日までの週の入院率(0.2)のほぼ10倍であった。

ワクチン接種と未接種での入院率

  • 2021年6月20日から7月31日までの期間に、ワクチン接種状況が確認できたCOVID-19で入院した68人の青年のうち、59人はワクチン接種を受けておらず、5人はワクチン部分接種であり、4人はワクチン完全接種であった。この期間の入院率はワクチン未接種の青年(12~17歳)では、ワクチン完全接種の青年の10.1倍であった。

重症疾患の指標

  • 2020年3月1日から2021年6月19日の期間にCOVID-19で入院した小児および青年3,116人(完全な臨床データが利用可能)のなかで、827人(26.5%)がICUに入院し、190人(6.1%)が侵襲的機械的換気を必要とし、21人(0.7%)が死亡した。
  • 2021年6月20日から7月31日の期間にCOVID-19で入院した164人の小児と青年(完全な臨床データが利用可能)のうち38人(23.2%)がICUに入院し、16人(9.8%)が侵襲的機械的換気を必要とし、3人(1.8%)が死亡した。
  • これら2つの期間の重症疾患の指標(ICU入院など)の違いは統計学的に有意ではなかった。

考察

  • 毎週のCOVID-19関連の入院率は、2021年6月下旬から8月中旬にかけて、0~17歳の小児と青年で急速に上昇した。8月中旬までに、0~4歳の小児の入院率は7週間前の入院率のほぼ10倍になった[図3]。
    この増加は、伝染性の高いデルタ株の流行と一致している。
  • 2020年3月以降、COVID-19で入院した小児および青年の約4人に1人が集中治療を必要としたが、デルタ株が優勢な期間中の重症疾患の指標の割合は、パンデミックの初期とほぼ同じであった。
  • 12~17歳の青年(COVID-19ワクチンが現在承認されている唯一の小児年齢層)では、ワクチン完全接種の青年と比較して、ワクチン未接種の青年での入院率が約10倍高く、これはデルタ株が優勢である期間でもワクチンが重症COVID-19の予防に非常に有効であることを示している[図3]。

文献

  1. Delahoy MJ, et al. Hospitalizations associated with COVID-19 among children and adolescents ―
    COVID-NET, 14 states, March 1, 2020-August 14, 2021
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7036e2-H.pdf

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問