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121号 WHO. オミクロン株について
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2021年11月26日、WHOは変異株B.1.1.529を「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」に位置づけ、オミクロン株と命名した。オミクロン株は、多数の変異を持つ変異株である。スパイク蛋白には26-32の変異が含まれており、そのうちのいくつかは免疫回避および高い感染性に関連している可能性がある。WHOがオミクロン株への対策強化について記述しているので、重要ポイントを抜粋して紹介する1 )

感染性

  • 現時点で入手可能なデータによると、オミクロン株はデルタ株のペースを上回っている可能性がある。実際に、デルタ株の流行が収まっていた南アフリカにおいては、オミクロン株はデルタ株よりも広がっており、デルタ株の発生率が高い国(英国など)でもデルタ株よりも広がってきている。
  • 南アフリカおよび英国では市中感染が確認されており、欧州連合・欧州経済領域外への旅行との疫学的リンクのない症例がベルギー、デンマーク、フィンランド、スペイン、アイスランドで報告されている。
  • 11月29日から12月5日までの期間に、南アフリカに隣接する国々において、前週と比較して症例発生率の大幅な増加が見られた:エスワティニ(20倍の増加(840 vs 42症例))、ジンバブエ(14.6倍の増加(4572 vs 313症例))、モザンビーク(13.1倍の増加(353 vs 27症例))、ナミビア(7.8倍の増加(375 vs 48症例))、レソト(3.2倍の増加(83 vs 26 症例))。
  • 南アフリカの国立伝染病研究所によって推定された実効再生産数(Rt)は、2021年10月および11月初旬は1未満のままであった。この推定値は11月の初めから増加し、2021年11月29日までの症例数に基づくと、全国レベルで2.55(95%CI 2.26、2.86)に達した。南アフリカの殆どの症例が報告されているハウテン州での最新のRtは3.06(95%CI 2.59、3.62)である。
  • 世界中の多くの研究グループからのデータに基づくと、オミクロン株のRtはデルタ株よりも1.4から3.1倍高いと推定される。
  • 欧州疾病予防管理センターは、オミクロン株が今後数か月以内に欧州で優勢な変異株になる可能性があることを示した。もし、12月に欧州で流行しているオミクロン株の割合が0.1%であると仮定すると、デルタ株と比較して1.5倍高い伝播率により、2022年3月までにオミクロン株が優勢株になる可能性がある。

重症度

  • アフリカからの予備調査結果によると、オミクロン株はデルタ株よりも重症度が低く、欧州連合・欧州経済領域で報告されたすべての症例は軽症または無症候性であった。しかし、オミクロン株が本質的に毒性が低いかどうかは不明である。
  • 12月9日の時点で、重症度に関する情報が入手された欧州連合・欧州経済領域で特定された402人の確定症例はすべて無症候性または軽度の症状であり、死亡は報告されていない。ただし、報告された症例数が少ないことを考えると、これらのデータは注意して解釈する必要があり、重症度に関する結論を出すことはまだできない。
  • オミクロン株の重症度がデルタ株よりも低くても、感染の増加の結果として入院が増加することが予想される。入院患者が多くなれば、医療を逼迫させ、多くの死につながる可能性がある。

免疫回避

  • 予備的なエビデンス、およびオミクロン株のスパイク蛋白のかなり変化した抗原プロファイルは、オミクロン株の感染および伝播に対してのワクチン有効性の低下を示唆している。
  • 南アフリカでは再感染の発生率が増加したといういくつかの予備的なエビデンスがあり、それは体液性(抗体を介した)免疫回避に関連している可能性がある。更に、いくつかの研究からの予備的なエビデンスは、ワクチン接種された人、以前に感染した人からの血清はその他のVOCおよび従来株よりも、オミクロン株では中和活性が低いことを示している。
  • 疫学、モデリング、および実験室での研究からの予備的なエビデンスは、体液性免疫は他の変異体よりもオミクロン株による感染に対する防御力が低いことを示唆している。南アフリカの研究では、オミクロン株による再感染の可能性が高いことが示され、モデリング研究のデータも、感染に対するある程度の免疫回避の可能性を示唆している。
  • 自然感染およびワクチン接種を受けた人の血清にある中和抗体の効果に関する4つの研究の結果は様々であるが、従来株および他のVOCと比較した場合、すべての研究で、オミクロン株に対する血漿サンプルの中和活性の有意な減少が示されており、それには遺伝子組換えワクチン、mRNAワクチン、回復期の血清が含まれる。
  • ファイザーによって投稿された分析は、3回目の接種(ブースター接種)の1か月後にはオミクロン株の中和活性がみられることを示唆している。これらのデータによると、ワクチン接種と感染または感染とワクチン接種を受けた人からの血清の中和活性(ハイブリッド免疫とも呼ばれる)は、オミクロン株に対して十分に保持される。

検査

  • 日常的に使用されるPCRおよび抗原ベースの迅速診断検査の精度はオミクロン株の影響を受けていないようである。

治療

  • オミクロン株による重症COVID-19の患者のための治療的介入(コルチコステロイド、インターロイキン6受容体阻害薬、抗凝固薬による予防など)は引き続き有効であると期待される。ただし、モノクローナル抗体については、抗原結合とウイルス中和活性について個別に検査する必要がある。

文献

  1. WHO. Enhancing Readiness for Omicron (B.1.1.529): Technical Brief and Priority Actions for Member States
    https://www.who.int/publications/m/item/enhancing-readiness-for-omicron-(b.1.1.529)-technical-brief-and-priority-actions-for-member-states

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問