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122号 5~11歳の小児におけるCOVID-19ワクチンの安全性
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2021年10月29日、食品医薬品局(FDA)は、Pfizer-BioNTech COVID-19 mRNAワクチンの緊急使用許可を修正し、5~11歳の小児に拡大して、2回接種(各10μg、0.2mL)を3週間間隔で実施することとした。
この年齢層への接種の安全性についてCDCが調査結果を報告しているので紹介する1) [図]。

 

870万回*のCOVID-19ワクチンが5~11歳の小児に接種された

背景

  • 事前承認の臨床試験では、Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチンが5~11歳の小児3,109人に接種された。殆どの有害事象は軽度から中等度であり、ワクチン接種に関連する重大な有害事象は報告されなかった。
  • 5~11歳の小児におけるワクチンの安全性をさらに調査するために、CDCは、2021年11月3日から12月19日までの期間にワクチン有害事象報告システム(VAERS: Vaccine Adverse Event Reporting System)に報告された有害事象、およびv-safeに報告された有害事象および健康影響評価をレビューした。
  • VAERSは、CDCとFDAが共同で管理する全国的な受動的ワクチン安全性監視システムであり、ワクチン接種後の有害事象を監視している。入院、入院の延長、生命を脅かす病気、永続的な障害、先天性異常または先天性欠損症、死亡のいずれかが報告された場合にVAERSの報告は重大と分類される。
  • v-safe は、CDCが確立した自主的なスマートフォンベースの積極的ワクチン安全性監視システムであり、COVID-19ワクチン接種後の有害事象を監視している。親および保護者は、1回目または2回目のワクチン接種後に小児をv-safeに登録できる。
  • 2021年11月3日から12月19日までの期間に、Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチンが5~11歳の小児に約870万回接種された。VAERSは有害事象の報告を4,249件受け取ったが、そのうち4,149件(97.6%)は重大ではなかった。
  • 5~11歳の約42,504人の小児がv-safeに登録された。2回接種後は、局所反応が17,180件(57.5%)、全身反応(注射部位の痛み、倦怠感、頭痛を含む)が12,223件(40.9%)報告された。

VAERSデータのレビュー

  • 2021年11月3日から12月19日の期間に、VAERSは4,249件の有害事象の報告を受け取った。年齢(中央値)は8歳であり、1,896件(44.6%)は男性であった。
  • 4,149件(97.6%)は重大でない事象であり、100件(2.4%)は重大な事象であった。重大ではない事象が報告された小児の年齢(中央値)は8歳であり、1,835件(44.2%)が男性であった。
  • 重大な事象が報告された小児の年齢(中央値)は9歳であり、61件(61.0%)が男性であった。100件の重大な事象の中で最も多く報告された状態と診断結果は、発熱(29件; 29.0%)、嘔吐(21件; 21.0%)、トロポニンの増加(15件; 15.0%)であった。
  • 解析期間中に特定された心筋炎15件の報告のうち、11件が(医療従事者のインタビューまたは医療記録のレビューによって)検証され、心筋炎の症例定義を満たしていた。これらの11人の小児のうち、7人が回復し、4人が報告の時点で回復中であった。
  • VAERSは、解析期間中に2件の死亡報告を受け取り、どちらも調査中である。これらの死亡は、5歳と6歳の2人の女性であった。どちらも複雑な病歴があり、ワクチン接種前の健康状態は脆弱であった。死亡とワクチン接種の因果関係を示唆するデータはない。

v-safeデータのレビュー

  • 2021年11月3日から12月19日までの期間に、v-safeは5~11歳の小児42,504人を登録した。これらのうち29,899人(70.3%)において2回目の接種情報が利用可能であった。
  • 1回目接種後の1週間で、局所反応(23,290件; 54.8%)および全身反応(14,734件;34.7%)が報告された。
  • 全身反応は、1回目よりも2回目のあとの週に頻繁に報告され(12,223件;40.9%)、ワクチン接種の翌日に最も多く報告された。最も頻繁に報告された反応は、注射部位の疼痛、倦怠感、頭痛であった。発熱は、1回目(3,350件;7.9%)よりも2回目(4,001件;13.4%)の接種後に多く報告された。
  • 小児が1回目の接種を受けた翌日に通常の日常生活を送ることができなかったと報告した親は約5.1%であり、2回目の接種を受けた後は7.4%であった。
  • 14人(0.02%)のv-safe登録者がワクチン接種後に入院した。入院の理由に関する情報は5人の小児において利用可能であり、その内訳は虫垂炎(2人)、嘔吐と脱水症(1人)、呼吸器感染症(1人)、咽頭後壁膿瘍(1人)であった。

考察

  • Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチンを接種した5~11歳の小児に関するVAERSの報告では、約97%が重大ではなかった。
  • 心筋炎は、mRNAベースのCOVID-19ワクチンに関連する稀で重大な有害事象であり、ワクチン関連心筋炎の報告率は、12~29歳の男性で最も高い。現在まで、5~11歳の小児の心筋炎は稀に見られている。約800万回のワクチン接種後に11件の検証済みVAERSレポートが受け取られた。
  • Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチン接種後の2人の死亡が、複数の慢性疾患のある小児について報告された。死亡とワクチン接種の因果関係を示唆するデータは見つからなかった。
  • 5~11歳のv-safe登録者における2回接種後の局所反応(57.5%)および全身反応(40.9%)は、12~15歳で報告された反応(局所反応62.4%;全身反応63.4%)よりも頻度が低かった。

文献

  1. Hause AM, et al. COVID-19 vaccine safety in children aged 5-11 years- United States, November 3-December 19, 2021
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm705152a1-H.pdf

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問