ケンエー海外論文 Pickup

vol.10 ASCOT試験:抗菌剤含有ユニフォームが医療従事者の汚染を防止する効果を究明するための盲検化無作為化比較試験
PDFファイルで見る

目的

抗菌剤含有繊維が医療従事者の衣服に付着する病原体を減少させるか否かを究明すること。

方法

標準的なユニフォーム(綿・ポリエステルのサージカルスクラブ)との比較で、抗菌剤含有の2種類のユニフォーム(繊維に銀合金を含有したもの、有機シランベースの四級アンモニウムと疎水性フルオロアクリルポリマー乳剤を含浸したもの)の有効性を検証するため、3群の無作為化比較試験を実施した。936床の急性期病院の内科ICUおよび外科ICUで勤務する看護師が研究に参加した。看護師のユニフォームや医療環境および患者から検体をシフト勤務ごとに採取した。一次的アウトカムは、コロニー形成ユニット(CFU)で計測された看護師ユニフォームの総汚染の、勤務前と後の変化であった。

結果

40人の看護師が3群すべてのユニフォームを着用して1回ずつ12時間のシフト勤務をこなした。環境から2,919検体、医療従事者から2,185検体を採取した。ユニフォームの種類は、汚染の変化に関連がなかった(p=.70、表)。延べ120シフト勤務のうち19回において、医療従事者が重要な病原体を獲得した。

結論

抗菌剤含有ユニフォームは、医療従事者の衣服の汚染を減少させるのに有効ではなかった。一方、環境が、医療従事者の衣服の重要な汚染源である。pick_up_10_1

監修者コメント

抗菌ユニフォームは、基礎実験において付着する菌量の減少とそれに伴う患者への伝播や周囲環境の汚染を低減させることが期待された。しかし実際の医療現場ではそのような効果はみられなかった。また、この研究では検体から分離された重要な病原体に関して遺伝子解析を実施し、疫学的および分子疫学的に医療従事者の病原体獲得を解析している。19回の医療従事者の病原体獲得のうち12件の経路が特定され、7件が患者から、3件が環境から、2件が双方からと考えられた。従って、患者に接触しない時でもガウンやエプロンなどによるユニフォームの防護が重要である。