ケンエー海外論文 Pickup

vol.26 多剤耐性菌およびC. difficileの獲得・感染に対する標的化した患者退室後消毒強化の有効性:交差デザインによる多施設無作為化比較試験(「BETR消毒」研究)の二次解析
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背景

病院環境は病原体の伝播源である。強化清掃(消毒)が病院全体の感染発生頻度に与える影響は、多施設共同無作為化比較試験で検討されていない。我々は「BETR消毒」研究において、4つの異なる消毒方法が多剤耐性菌やC. difficileの全病院的発生頻度に与える影響を評価することを目指した。

方法

アメリカ南東部の9つの病院における4つの患者退室後病室消毒方法を評価した集団的交差無作為化比較試験である「BETR消毒」研究の結果に関する二次解析。標的病原体(C. difficile、MRSA、VRE、多剤耐性アシネトバクター)に感染または保菌している患者の退室後の消毒を以下の4つのいずれかの方法で実施した:標準的消毒(四級アンモニウム塩、但しC. difficileの場合は次亜塩素酸)のみ、標準的消毒+紫外線(UV)、次亜塩素酸のみ、次亜塩素酸+UV。各施設にはこの4つがランダムな順番に割り振られ、それぞれ7ヶ月間実施した。アウトカムは、全標的病原体感染・保菌の全病院的発生頻度(10,000患者日あたりの院内獲得感染患者数)と、標的病原体ごとの全病院的発生頻度である。

結果

314,610入院が研究対象となり、2,681事象が発生した。標準的消毒と3つの強化消毒方法の間で、全標的病原体の全病院的発生頻度に差は見られなかった。病原体別では、C. difficileとVREに関して、UV期間中における獲得リスクの低減が得られた。・ケ・晢スエ・ー豬キ螟冶ォ匁枚Pickup vol.26-11

解説

ハイリスクな部屋を標的にした患者退室後のUVによる強化消毒は、全病院的C. difficileとVRE院内獲得の減少をもたらした。強化消毒は標準的消毒の限界を克服し、多剤耐性菌やC. difficileを獲得するリスクを低減させる有望な方法である。

監訳者コメント

「ケンエー海外論文Pickup vol.12(2017年12月発行)」で紹介した研究の続報である。通常清掃にUVを追加することにより、照射後の病室に入室する患者だけでなく全病院的に耐性菌獲得リスクを低減させるという結果が得られた。ただし、4つの病原体全体ではリスク低減効果が明らかでなく、C. difficileとVREでのみ差が見られた。また、C. difficileに関しても、通常清掃+UVの時期に有意な効果があった反面、それより効果が大きいはずの次亜塩素酸+UVに有意な効果が無かったという結果の不安定さが見られる。紫外線照射装置の効果に関しては更なる多角的検討が必要だろう。