ケンエー海外論文 Pickup
2019年06月

Morb Mortal Wkly Rep 2019;68(9):220–224

vol.30 アメリカの退役軍人医療センターでの黄色ブドウ球菌の推移(2005~2017年)

Measles outbreak in a highly vaccinated population - Israel, July-August 2017. Avramovich E, Indenbaum V, Haber M, Amitai Z, Tsifanski E, Farjun S, Sarig A, Bracha A, Castillo K, Markovich MP, Galor I.

序論

2007年までに、全ての退役軍人医療センター(VAMC)は多面的メチリシン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)防止対策を導入した。2005年から2017年までのVAMC入院患者のMRSAとメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染率を評価した。

方法

2005年から2017年までにアメリカの急性期VAMC130施設に入院した患者の臨床微生物学的データと、院内獲得MRSA保菌の推移を検証した。

結果

黄色ブドウ球菌感染症は研究期間中を通じて43%減少した(p<0.001)が、それは主にMRSAの減少によるものであり、MRSAは55%減少した(p<0.001)一方、MSSAは12%減少した。院内発生MRSAとMSSA感染はそれぞれ66%、19%減少した(p<0.001, p=0.02)。市中発症MRSA感染は41%減少した(p<0.001)が、MSSA感染は有意な減少を示さなかった。MRSA保菌獲得は2008~2017年で78%減少した(年17%、p<0.001)。MRSA感染率は、入院時監視培養でMRSA陽性であった患者に比べて陰性であった患者の方がより大きく減少した(年9.7%の減少 vs 年4.2%の減少)。・ケ・晢スエ・ー豬キ螟冶ォ匁枚Pickup vol.30-1

結論と公衆衛生施策への教訓

VAMCの介入後の黄色ブドウ球菌の有意な減少は、主にMRSAの減少によってもたらされた。さらに、MRSA感染の減少は入院時にMRSAを保菌している人よりもしていない人の間でより大幅であった。これらを総合すると、VAMCにおいて、MRSA伝播の減少が黄色ブドウ球菌感染全体を減少させる大きな役割を演じたことを示唆している。MRSA伝播を防止するために企図された感染対策介入を中止するという最近の呼び掛けは未熟かつ推奨できないものであり、少なくとも医療機関における細菌性病原体の伝播に関する効果的な制御についてもっと多くのことが分かるまではそう言える。効果的な黄色ブドウ球菌防止戦略は、デバイスや手術関連の感染を防止するのみならず、医療機関で一般的な菌の伝播を防止するためのCDCの現在の勧告を遵守することも含めた多面的アプローチを必要としている。

監修者コメント

ケンエー海外論文Pickup vol.18とvol.24で取り上げた2本の論文は、多剤耐性菌、特にMRSAに対して接触予防策を中止しても構わない、という論調のものであったが、今回紹介する論文はその反論である。2010年代に入り本Pickup vol.18を含む多数の研究が接触予防策の有効性を否定する結果を得て、それらを用いたメタ解析の結果が前述のvol.24の論文である。一方、今回紹介した論文は、退役軍人病院という似通った性質(患者のほとんどが男性)という制限はあるものの、100箇所以上の病院のデータであり、メタ解析に匹敵する重みがある。接触予防策の有効性を検証する方法が異なってはいるものの、両者はほぼ正反対の結果になり、大変興味深い。

監修 森兼 啓太
山形大学医学部附属病院 検査部 部長・病院教授、感染制御部 部長