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2019年09月

Am J Infect Control. 2019;47(3):271-279

vol.33 スペインの三次医療機関の新生児ユニットにおけるセラチアのアウトブレイク:リスク因子と制御方法

Serratia marcescens outbreak in a neonatology unit of a Spanish tertiary hospital: Risk factors and control measures. Redondo-Bravo L, Gutiérrez-González E, San Juan-Sanz I, et al.

背景

スペイン・マドリッドにあるLa Paz大学病院の新生児ユニットにおけるSerratia marcescens のアウトブレイクを制御するために実施された調査と実施された対策を記述する。

方法

アウトブレイクの検知後、新生児に対して毎週、直腸・咽頭のS. marcescens 保菌スクリーニングが実施された。環境検体と医療従事者の保菌スクリーニング検体が採取され、微生物学的解析を行った。感染/保菌のリスク因子を探索するために非マッチ症例対照研究が行われた。

結果

アウトブレイクは2016年6月に始まって2017年3月に終息し、合計59人の新生児に影響した。うち25人が感染を発症し、最も多かったのが結膜炎と敗血症であった。多変量ロジスティック解析により以下のリスク因子が同定された:経静脈栄養(オッズ比103.4、95%信頼区間11.9-894.8)、放射線学的検査の既往(15.3、2.4-95.6)、早産(5.65、1.5-21.8)。アウトブレイクを制御するために、厳重な接触予防策、毎日の多職種チームミーティング、コホーティング、専従スタッフの配置、ユニットの消毒、部分的閉鎖などの様々な対策を講じた。環境調査で明確な結果が得られなかったこととユニット内の医療従事者や実施実務の数の多さから考えると、医療従事者の手指が伝播経路として主に疑われた。・ケ・晢スエ・ー豬キ螟冶ォ匁枚Pickup vol.33-12

結論

S. marcescens は新生児ユニットで容易に拡散するが、それは主に新生児集中治療ユニットで起こり、しばしば制御が困難で多面的アプローチを必要とする。そういったアウトブレイクを制御するためには、コホーティングや専従スタッフによる担当など厳重な方策がしばしば必要となる。

監修者コメント

新生児ユニットの患児は腸内細菌叢が確立していないため、S. marcescens など環境に広く常在する病原体の保菌者になりやすい。そして、免疫系が未発達であり皮膚や粘膜バリアも未完成な状態のもとで、同菌による感染症を発症しやすい。さらに、狭い空間で大勢の新生児がケアされている新生児ユニットでは、水平伝播のリスクも高い。このようなことから、本事例のようなアウトブレイクはどの病院の新生児ユニットでも起こりうることである。手指衛生をはじめとする標準予防策を日常的に講じることも重要であるが、どのような特徴を持った患児において感染や保菌のリスクが高いのかを知っておくことは、アウトブレイクを防止する上で大いに役立つ。その意味で、本論文は非常に示唆に富むものである。

表1に挙げた単変量解析で有意なリスク因子になったもののうち、人工呼吸管理と光線療法以外が多変量解析においても有意な因子として残った。早産は免疫系未発達による感染・保菌のリスクであり、経静脈栄養は輸液ラインを介したS. marcescens 敗血症のリスクであり、放射線学的検査は多くの医療従事者の接触を要することから手指衛生の不徹底からくる交差感染のリスクを増大させる。これらのことを現場スタッフが理解し、リスクの高い新生児に対する強化感染対策を講じることで、アウトブレイクを防止し、またその早期に終息させることが可能となる。

監修 森兼 啓太
山形大学医学部附属病院 検査部 部長・病院教授、感染制御部 部長