ケンエー海外論文 Pickup
2020年04月

J Hosp Infect. 2020;104(3):246-251

vol.40 環境表面におけるコロナウイルスの持続活性と、消毒薬によるその不活化

Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. Kampf G, Todt D, Pfaender S, Steinmann E.

要旨

現在、新規ヒトコロナウイルスであるSARS-CoV-2の出現は、ヒトに重症呼吸器感染症を引き起こす世界的な健康への懸念材料となっている。ヒト-ヒト感染は2~10日の間の潜伏期をもって、飛沫や汚染された手または環境表面を介して拡散する。我々は、無生物表面(環境表面)上のヒトや動物のコロナウイルスの持続活性と、医療機関における化学的消毒に用いる殺生物薬による不活化の方法に関する、すべての入手可能な情報について文献をレビューした。

22件の研究の分析から、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、あるいは世界中に広がっている(監修者註:急性上気道炎の起因ウイルスの一つである)ヒトコロナウイルス(HCoV)などのヒトコロナウイルスは、金属、ガラス、プラスチックなどの無生物表面に最大で9日間生存する。しかし、62-71%エタノールや0.5%過酸化水素水、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液による表面消毒手技により、1分以内に効果的に不活化できる。0.05~0.2%ベンザルコニウム塩化物や0.02%クロルヘキシジングルコン酸塩などの消毒薬は、それらよりも効果が劣る。

SARS-CoV-2には特定の治療法がないため、現在進行中のアウトブレイクを阻止しこの新たな感染の鎖を制御するには、早期の封じ込めとさらなる拡散の防止が不可欠である。

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監修者コメント

新型コロナウイルスと呼ばれるSARS-CoV-2の伝播経路は飛沫が主体と考えられるが、環境表面に付着したウイルスが長期間生存するので、環境接触後の手指衛生とともに環境清掃が感染防止のために重要である。その際に使用する消毒薬は、当然ながら同ウイルスに有効なものでなくてはならない。本論文はSARS-CoV-2に類似した他のコロナウイルスで消毒薬の効果を検証しているが、更に詳しい所見が明らかになるまでは、この基準で消毒薬を選択するのが良いと思われる。日常的に医療環境の清掃・消毒に使用されている第四級アンモニウム塩は、このウイルスにはあまり効果が無いと考えた方が賢明であり、SARS-CoV-2を意識した環境整備に用いる消毒薬は、それ以外のものを選択すべきであろう。

監修 森兼 啓太
山形大学医学部附属病院 検査部 部長・病院教授、感染制御部 部長