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vol.49 BNT162b2 mRNA 新型コロナウイルス感染症ワクチンの安全性と有効性
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背景

SARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的大流行を発生させ、多くの人に影響を与えている。安全で有効なワクチンが緊急に必要とされている。

方法

多国間・偽薬対照・観察者盲検の有効性主試験において、我々は16歳以上の被験者を1:1に割り付け、ワクチン候補であるBNT162b2(1回あたり30μg)または偽薬を、21日間隔で2回接種した。BNT162b2はナノ粒子で構成されたヌクレオシド修飾RNAワクチンであり、融合前の安定した膜固定のSARS-CoV-2全長スパイクタンパク質をコードする。主要エンドポイントは、検査確定COVID-19に対するワクチンの有効性、およびその安全性である。

結果

43,548人の参加者が無作為化を受け、43,448人がワクチン接種を受けた。うち21,720人にBNT162b2、21,728人に偽薬が接種された。BNT162b2接種に割り付けられた参加者のうち、2回目の接種から少なくとも7日経過した以降にCOVID-19を発症した人が8人であったのに対し、偽薬群では162人であった。従って、BNT162b2はCOVID-19予防に関して95%の有効性を示した(95%信頼区間:90.3~97.6)。年齢・性別・人種・民族・肥満度指数・併存疾患で規定されるサブグループにおいても、同様のワクチン有効性(概ね90~100%)が見られた。1回目の接種後に発生した重症COVID-19の10症例のうち、9症例が偽薬を受けた人に発生し、BNT162b2接種者は1名であった。BNT162b2の安全性の概要は、接種部位における短期間の軽度から中程度の疼痛、倦怠感、頭痛を特徴としていた。重篤な副反応の発生頻度は低く、ワクチン群と偽薬群で同等であった。

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結論

BNT162b2の2回接種法は、16歳以上の人に対してCOVID-19に対する95%の有効性を伴う予防効果をもたらした。接種後2ヶ月以上にわたる安全性は、その他のウイルス性疾患に対するワクチンと同等であった。

監修者コメント

COVID-19の流行状況を大きく変えうる介入であるワクチンだが、数社が開発を進めている。本論文は、その先頭を切って走っているファイザー/ビオンテックの有効性に関する大規模臨床試験である。接種は2020年7月末から8月はじめにかけて、主としてアメリカで行われた。一部、トルコ・ドイツ・南アフリカ・ブラジル・アルゼンチンでも実施された。いずれもCOVID-19の流行が非常に大きい地域であり、ワクチンの有効性を検証するのに適した場所である。結果は、さほど重大な副反応が観察されなかった一方で、95%の有効性を示しており、非常に期待できる結果と言えよう。人類史上初めてとも言える、感染症の大流行をワクチンで一気に制御しようという試みが、今始まろうとしている。過度な期待は戒められるべきであり、これまで実施してきた感染対策を引き続き実施していく必要性は当分の間残るが、一筋の光明を見る思いである。