ケンエー海外論文 Pickup

vol.51 SARS-CoV-2感染のうち無症状の割合
PDFファイルで見る

背景

無症状の感染は、COVID-19の原因であるSARS-CoV-2の特記すべき性質であると思われる。しかし、その広がりは不明である。

目的

症状を呈さなかったSARS-CoV-2感染者の割合を推測すること。

データソース

抗体、無症状(asymptomatic)、コロナウイルス、COVID-19、PCR、抗体保有率(seroprevalence)、SARS-CoV-2というキーワードを用いて、Google News, Google Scholar, medRxiv, PubMedの検索を行った。

研究の選択

横断的あるいは経時的な研究デザインを有するSARS-CoV-2に対する集団スクリーニングの観察・記述研究や報告で、2020年11月27日までに公開され、明確な期間の間に発症の有無を問わない標的集団の、SARS-CoV-2核酸あるいは抗体検査を調査したものを選択した。

データ抽出

著者らは、研究デザイン・実施された検査の種類・対象員数・有症状の判定基準・検査結果・研究場所に関するデータを抽出した。

データ統合

61件の研究・報告が同定された。そのうち43件は現在のSARS-CoV-2感染を検出するために鼻咽腔スワブのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を用い、残りの18件は現在または過去の感染を検知するための抗体検査を用いていた。症状の変化を報告する経時的データを示した14件の研究において、検査時点で陽性だが症状がなかった患者のうち約75%がその後も無症状のままであった。最も質の高い根拠は、英国(症例数365,104)とスペイン(同61,075)の全土にわたる血清疫学であり、その結果によれば少なくとも3分の1のSARS-CoV-2感染が無症状であることを示唆している。

限界

PCRに基づく研究では、発症前と無症状の区別ができるデータが限られている。データの多様性のため、正式な量的データ統合が困難であった。

結論

少なくとも3分の1以上のSARS-CoV-2感染が無症状であることを、データが示唆している。経時的研究からは、PCR検査陽性の時点で症状がなかった患者のうち約75%がその後も無症状のままで経過するであろうことを示唆している。COVID-19を制御する戦略は、無症状のSARS-CoV-2感染の広がりと伝播リスクを考慮に入れて、変更されるべきである。

監修者コメント

本研究は、SARS-CoV-2感染者のうち無症状の人が占める割合がいかに多いかを改めて我々に知らせてくれる。PCR検査に限って言えば、検査陽性となった時点で無症状の人が中央値で42.5%に達するとのことである。これは、検査、特に患者の接触者に対する検査をどの程度積極的に実施していくか、によって異なる数値であり、実際、研究間でも30%~80%と大きなばらつきがある。

一方、文献検索して拾い上げてきた研究の質やデザイン、対象とする患者集団の問題はあるものの、検査陽性時点で無症状、かつそのままフォローアップ期間終了まで症状を示さない人が、中央値で全体の72.3%いるとも記載されている。この疾患では、いかに無症状の感染者が多いかが浮き彫りになっている。従って、いつ誰が感染しているか全くわからないので、ユニバーサルマスキングが必須であり、地域の流行状況にもよるが入院時のスクリーニング検査を積極的に導入する必要もある。