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vol.52 2020年、デンマークにおける400万人のPCR検査を受けた人々でのSARS-CoV-2再感染に対する防御の評価:人口集団レベルでの観察研究
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背景

SARS-CoV-2に感染すると、その後の再感染に対してどの程度の防御効果があるのかについてはよくわかっていない。2020年、デンマークでの大規模な無料のPCR検査戦略の一環として、約400万人(人口の69%)が延べ1,060万回の検査を受けた。この2020年の全国PCR検査データを用いて、SARS-CoV-2の再感染に対する防御効果を推定した。

方法

この集団レベルの観察研究では、デンマーク微生物データベースから2020年にデンマークで検査を受けた患者の個人レベルのデータを収集し、2020年9月1日から12月31日までのCOVID-19流行の第2波の感染率を、第1波(2020年3月~5月)でPCR検査が陽性の人と陰性の人との感染率を比較して解析した。主解析においては、2回の流行の間で初めて検査陽性となった人と、第2波の前に死亡した人は除外した。別のコホート解析では、3カ月以上前に感染が確認された人とそうでない人の間で、1年を通しての感染率を比較した。そのコホート解析においては、年齢層・性別・感染後の経過時間による相違が見られるかどうかを調査した。潜在的交絡因子を調整した率比(RR)を算出し、反復感染に対する防御効果を1-RRとして推定した。

結果

第1波(2020年6月以前)では、533,381人が検査を受け、そのうち11,727人(2.20%)がPCR陽性であった。第2波では525,339人が追跡調査の対象となり、そのうち11,068人(2.11%)が第1波で陽性であった。第1波でPCR陽性となった対象者のうち72人(0.65% [95%信頼区間0.51~0.82])が第2波で再び陽性となったのに対し、第1波で陰性だった514,271人のうち16,819人(3.27%[3.22~3.32])が陽性となった(調整RR 0.195[0.155~0.246])。再感染に対する防御効果は80.5%[75.4~84.5]であった。別のコホート解析でも同様の推定値が得られた(調整RR 0.212 [0.179~0.251]、推定防御率78.8% [74.9~82.1])。そのコホート解析では、65歳以上の高齢者において反復感染に対する防御率は47.1%[24.7-62.8]であった。その結果推定された再感染防止率に性別による差はなかった(男性78.4%[72.1~83.2] vs 女性79.1%[73.9~83.3]。また、時間の経過とともに防御力が低下していることを示す証拠も見られなかった(追跡期間3~6カ月79.3%[74.4~83.3] vs追跡期間7カ月以上 77.7%[70.9~82.9])。00022

解釈

今回得られた知見は、どのグループにワクチンを接種すべきかの判断材料となり、特に高齢者の自然防御は頼りにならないので既感染者へのワクチン接種を提唱するものである。

監訳者コメント

大きな流行となった国では、再感染の症例がそれなりの件数発生している。本研究はデンマークで実施されたが、同国は2021年3月下旬時点で22万人ほどの感染者が発生している。同国では更に、PCRによるスクリーニング検査が繰り返し行われており、このことを利用して再感染に関する大規模な研究を実施することが可能となっている。結果は、第1波で感染したことは、第2波での感染リスクをおよそ80%低減させた。つまり第1波での感染は100%防御的ではなく、再感染する人がそれなりにいたということである。更に、65歳以上の集団でサブ解析を行うと、感染リスクの低減がおよそ50%に留まり、一度新型コロナウイルスに罹患しても再び罹患する可能性が十分にあることを示している。一方、ワクチンの感染防止に関する有効性のデータでは、高齢者でも十分高い防御能力を示している。自然感染とワクチンによる受動免疫が、その後の感染に与える防御能力については、更なる研究が必要であろう。