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vol.61 BNT162b2 mRNAワクチンの2回接種に対して3回接種した後の検査陽性オッズ
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重要性

mRNAワクチンBNT162b2(ファイザー・ビオンテック)の免疫力が低下していることが確認されたため、イスラエルでは2021年8月中に全国規模の3回目(ブースター)接種キャンペーンが開始され、他の国でもブースター接種が開始された。

目的

SARS-CoV-2の感染に対して、2回接種に比較した3回接種の、初期の短期的追加効果を評価すること。

デザイン、設定、参加者

この予備的な後ろ向き症例対照研究では、検査陰性デザインとマッチさせた症例対照デザインという2つの補完的なアプローチを用いた。参加者は、250万人の会員を擁するイスラエルの医療維持組織であるMaccabi Healthcare Servicesの全国集中データベースから抽出した。データは2020年3月1日から2021年10月4日の間に収集されたが、2021年8月1日以降はブースター投与が広く行われていたため、分析は2021年8月1日から2021年10月4日までの期間に絞って行われた。

曝露

BNT162b2ワクチンの2回接種または3回接種のいずれか。

主な結果と測定法

ブースター投与を受けた後の異なる時間間隔(0~6日、7~13日、14~20日、21~27日、28~65日)において、SARS-CoV-2ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査が陽性となるオッズの、2回接種のみの場合と比較した低下。

結果

調査対象者は、40歳以上(女性が55%)で、2回または3回のBNT162b2ワクチン接種を受け、追跡期間開始前にSARS-CoV-2のPCR検査結果が陽性ではなかったMaccabi Healthcare Servicesの会員306,710人であった。この期間中に実施されたPCR検査は500,232件で、うち2回接種を受けた人では227,380件、3回接種を受けた人では272,852件が行われた。それぞれ14,989件(6.6%)、4,941件(1.8%)の陽性検査結果であった。ブースターを受けた人と2回接種の人を比較すると、ブースターを受けた後の28~65日目の推定オッズ比は0.14(95%CI,0.13~0.15)であり、SARS-CoV-2陽性反応のオッズが86%低下した。

結論と妥当性

これまでの研究では、ワクチン由来のSARS-CoV-2に対する防御力は時間の経過とともに低下することが示されている。今回の症例対照分析では、ブースターの投与とSARS-CoV-2陽性検査のオッズ低下との間に関連性が認められ、短期的な免疫力の低下を打ち消す可能性があることがわかった。この集団のデータをさらにモニタリングして、ブースター投与後の免疫力の持続時間を明らかにする必要がある。

訳者コメント

世界に先駆けてCOVID-19に対する3回目のワクチン接種(ブースター)を開始したイスラエルから、続々とその有効性に関するデータが発表されつつある。本論文は、250万人の顧客を抱える医療システムの包括的医療データをもとに、ちょうど同国で流行が再活性化していた2021年8月から10月にかけて3回目の接種の有効性を検討している。結果は明白かつ想定内であり、接種から2週間が経過すると有効性約85%と十分高かった。3回目の接種は個人の罹患防止だけでなく、社会全体のコロナ流行に対する砦となり、医療体制を大きく損ない社会を混乱させることなく経済活動を継続していくことに対して大きく寄与する。日本でも2021年12月から3回目の接種が開始されたが、この施策を淡々と推進していくことが、今必要とされているコロナ対策であると考える。