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vol.66 オミクロン株の流行拡大時の小児や青年におけるBNT162b2 COVID-19ワクチン接種歴と有症状SARS-CoV-2感染との関連性
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重要性

 SARS-CoV-2オミクロン株が出現する前に行われた小児の試験では、BNT162b2 COVID-19ワクチン(ファイザー・ビオンテック)のCOVID-19に対する2回接種の有効性は高かった。成人では、有症状のオミクロン株感染に対するBNT162b2ワクチン2回接種の推定ワクチン有効性(VE)は、以前の変異株と比較して低下し、急速に減弱し、そしてブースターで上昇した。

目的

 オミクロン株の流行拡大時に小児と青年のVEを推定するために、症候性感染とBNT162b2ワクチン接種歴との関連性を評価すること。

デザイン、環境、参加者

 Increasing Community Access to Testingプラットフォームの1つの薬局チェーンによる全米の薬局ベースのドライブスルーSARS-CoV-2検査会場6,897件のデータを用いて、検査陰性症例対照解析を行った。この解析は、2021年12月26日から2022年2月21日までにSARS-CoV-2核酸増幅検査を受けたCOVID-19様疾患の5歳から11歳の小児の検査74,208件と12歳から15歳の青年の検査47,744件を対象とした。

曝露

 小児に対してはSARS-CoV-2検査の2週間以上前にBNT162b2を2回接種した場合と接種しない場合、青年(ブースター投与を受けることが推奨されている)に対しては同検査の2週間以上前に2回または3回接種した場合と接種しない場合。

主なアウトカムと測定方法

 有症状の感染。ワクチン接種歴と有症状のSARS-CoV-2感染との関連についての調整オッズ比(OR)を用いてVEを推定した:VE=(1-OR)×100%。

結果

 5歳から11歳の小児の検査陽性者30,999例と検査陰性者43,209例、12歳から15歳の青年の検査陽性者22,273例と検査陰性者25,471例が研究対象となった(表)。全体の年齢中央値は10歳(四分位範囲:7~13)、うち61,189人(50.2%)は女性、75,758人(70.1%)は白人、29,034人(25.7%)はヒスパニック/ラテンであった。2回目の接種から2~4週間後、小児では調整ORが0.40(95%CI:0.35~0.45、推定VE:60.1%[95%CI:54.7%~64.8%])、青年ではORが0.40(95%CI:0.29~0.56、推定VE:59.5%[95%CI:44.3%~70.6%])であった。2回目の接種後の2カ月目では、小児ではORが0.71(95%CI:0.67~0.76、推定VE28.9%[95%CI:24.5%~33.1%])、青年ではORが0.83(95%CI:0.76~0.92、推定VE:16.6%[95%CI:8.1%~24.3%])であった。青年では、ブースター投与後2~6.5週間のORは0.29(95%CI:0.24~0.35、推定VE:71.1%[95%CI:65.5%~75.7%])であった。

結論および妥当性

 小児および青年において、有症状のコロナ感染に対するBNT162b2の2回投与の推定VEは中程度であり、急速に低下した。青年では、ブースター投与後に推定VEが上昇した。

訳者コメント

 オミクロン株の流行に対する3回目のワクチン接種(いわゆるブースター)の有効性は既に明らかであるが、ブースターから4ヶ月程度が経過すると予防効果がかなり減弱することがわかってきたため、4回目のワクチン接種が日本でも2022年5月中に開始される。
 一方、小児や青年では3回目のワクチン接種の段階であり、その有効性やワクチン接種からの時間経過によって有効性が低下するかどうかについては、あまりよくわかっていなかった。
 本論文では、検査陰性を対照としたワクチンの有効性を示すというスタンダードな方法で、5~11歳と12~15歳に年齢層を分けて、2回のワクチン接種および12~15歳では3回のワクチン接種の有効性を検討した。その結果、2回のワクチン接種の有効性は両世代で共に約60%であったが、そこから2ヶ月で有効性が大きく低下することがわかった。成人よりも低下の速度が早く、小児や青年への3回目の接種を行うのであれば2回目の接種からある程度早い段階(2~3ヶ月経過したのち)で行っても良いのかもしれない。
 前回(Vol.65)の論文紹介では、成人に対する4回目のワクチン接種の有効性に関する論文を紹介した。成人(特に高齢者)には4回目、若年者には3回目のワクチン接種機会を提供しつつ、特に重症化がまれでワクチンの副反応が強い若年者に対しては接種を希望する人が接種できるような体制整備が望まれる。