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vol.68 2020年12月から2021年9月までの間にアメリカのワクチン接種者において回避することができたCOVID-19感染・入院・死亡の推定数
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重要性

ワクチン接種者において予防された SARS-CoV-2 感染および COVID-19 関連入院と死亡の数は、感染伝播減少の効果とは無関係に、ワクチン効果の重要な指標である。

目的

アメリカのワクチン接種を受けた成人において予防された SARS-CoV-2 感染および COVID-19 関連入院と死亡の件数を推定すること。

デザイン、設定、参加者

このモデリング研究では、2020年12月1日から2021年9月30日までのアメリカにおける、州・月・年齢層(18-49歳、50-64歳、65歳以上)で層別したCOVID-19関連入院数のデータから、乗数モデルを使用してSARS-CoV-2感染数とCOVID-19関連死亡数を外挿した。これらの推定値とワクチンの接種率および有効性に関するデータを組み合わせて、感染・入院・死亡のリスクを推定した。リスクは、18歳以上のアメリカ人口に適用し、ワクチン接種がない場合に予想される負荷を推定した。18歳以上のアメリカ人口がワクチン接種を受けた場合の負荷の推定値を、同人口がワクチン接種を受けない状態での疾患負荷の推定値(すなわち反事実値)から差し引き、ワクチン接種者におけるワクチン接種の影響を推定した。

曝露

mRNAワクチン(BNT162b2またはmRNA-1273)の2回投与、または JNJ-78436735の1 回投与と定義される、COVID-19ワクチン接種コースの完了。

主な結果および測定

アメリカでワクチン接種を受けた人において予防されたSARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院と死亡の月間件数と割合を推定した。

結果

アメリカで2020年12月1日から2021年9月30日まで、18歳以上のワクチン接種者において、約2,700万件(95%不確実性区間[UI]、2,200万~3,400万)の感染、160万件(95%UI、140万~180万)の入院、23.5万人(95%UI 、17.5万~30.5万人)の死亡が、COVID-19ワクチン接種により予防されたと推定される。2021年9月1日から9月30日までの間に、18歳以上の人口において、予測される感染の52%(95%UI、45%-62%)、入院の56%(95%UI、52%-62%)、死亡の58%(95%UI、53%-63%)が、ワクチン接種により予防できたと推定される。

結論と意義

これらの知見は、アメリカのCOVID-19ワクチン接種プログラムが、ワクチン接種者の直接的な防御によって相当大きな罹患率と死亡率の負荷を予防したことを示している。

訳者コメント

COVID-19ワクチンの効果と限界が明らかになってきているが、今回はその効果を示す論文を紹介する。研究期間は2021年9月までなので、デルタ株の流行までの効果を検証している。ワクチン接種回数は2回を基本としている。

その結果、成人の3つの年齢層で見ると、感染防止効果は若年層で最も大きく、死亡回避効果は逆に高齢者で圧倒的に大きかった。若年層はCOVID-19に感染してもほとんどの場合、自宅加療できる程度の軽症で済んでいるが、高齢者はそうはいかない。若者が感染しないこと、高齢者が死亡しないことがコロナ対策としてのアメリカの目標であれば、この推計はワクチンプログラムの重要性と今後の継続性が認識される。

ワクチンは総体として大きな感染防止効果をもたらす。若者においても、感染すれば一時的とは言え様々な行動制限を課される本疾患において、感染防止は今なお重要な課題である。欧米の先進国の人達がマスクを着用しなくなってきている現状で、社会全体としてコロナ対策としてできることは、ワクチン接種と人前での常時マスク着用が最重要である。しかしこれに加えて、家庭内感染を効率的に防止する方法が明らかになっていない。いや、そんな方法はないのかもしれない。