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vol.78 COVID-19によって入院した患者における腸球菌血症を含む二次性細菌性感染症の発生率上昇
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目的

 COVID-19患者における病院発症の二次性細菌感染症の発生率をインフルエンザ患者および対照群と比較し、COVID-19患者における腸球菌感染症の発症率増加に関する報告について検討した。

研究デザイン

 後ろ向きコホート研究。

研究施設

 カリフォルニア州サンフランシスコの第四次(※)大学病院。
(※:日本では大学病院本院などの高次急性期総合医療機関がこれに該当する)

対象患者

 2019年10月1日から2020年10月1日の間に入院し、入院後2週間以内にSARS-CoV-2PCR検査陽性(N=314)またはインフルエンザPCR検査陽性(N=82)となった患者を、研究期間中にSARS-CoV-2またはインフルエンザ検査が陽性とならなかった入院患者(N=14,332)と比較した。

方法

 感染症関連人工呼吸器関連合併症(IVAC)、人工呼吸器関連肺炎確実例(PVAP)、血流感染(BSI)、およびカテーテル関連尿路感染(CAUTI)の特定には、National Healthcare Safety Networkの定義が用いられた。多重ロジスティック回帰モデルを用いて、交絡因子の可能性が高いものをコントロールした。

結果

 COVID-19患者は対照群と比較してIVACおよびPVAPの発生率が有意に高く、調整オッズ比はそれぞれ4.7(95%信頼区間[CI]、1.7~13.9)および10.4(95%CI、2.1~52.1)であった。COVID-19患者では、腸球菌によるBSIの発生率が高かったが、BSI全体では対照群と相違がなかった。腸球菌分離株の全ゲノム配列決定により、院内伝播ではこの発生率の増加を説明できないことが示された。集中治療室に入院した患者および人工呼吸器管理を必要とした患者のサブ解析でも同様の結果が得られた。

表 全ての患者コホートにおける感染性アウトカムの数割合

結論

 COVID-19は入院中の対照群と比較して、IVAC・PVAP・腸球菌によるBSIのリスク増加と関連していたが、これは免疫抑制治療や人工呼吸器管理の期間などの要因では十分に説明できない。COVID-19患者における腸球菌によるBSIの発生率増加の基礎となるメカニズムについては、さらなる検討が必要である。

訳者コメント

 COVID-19患者が他の入院患者と比べて様々な合併症を来たし、予後が悪いという報告が既になされているが、適切な対照群を有していなかったり、他の因子の調整がなされていなかったりするという欠点を有していた。本研究はこれらの点を踏まえ、年齢や性別・基礎疾患などで調整し、また対照群はスクリーニング検査でCOVID-19陰性結果が得られた患者とし、更に2日以内に退院したもの(一般に軽症者が多い)を本研究の対照群から除外した。
 その結果、IVACやPVAP、腸球菌BSIのリスクはCOVID-19感染者において対照群より高かった。このうちIVACやPVAPは、COVID-19の起因病原体であるSARS-CoV-2が主に増殖する呼吸器の感染性院内合併症であり、対照群に比べて発生率が高いのは首肯できる。しかし、腸球菌BSIのリスクが対照群やインフルエンザ罹患群に比べて著しく高いのは合理的な説明が困難である。他の研究でもCOVID-19のBSIの起因菌として腸球菌が筆頭に上がるという結果が得られており、今後の更なる研究が望まれる。
 本研究は、COVID-19患者の様々な医療関連感染性合併症のリスクの高さを示しているだけでなく、全ての医療関連感染においてリスクが高いわけではないという不思議な研究結果を示している点で非常に興味深い。