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vol.80 院内発症のクロストリジオイデス・ディフィシルの軽減: 8つの病院における最適化された環境衛生プログラムの影響
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目的

 病院全体で毎日実施する患者領域の殺胞子性消毒薬清掃による標準化されプロセス検証された介入が、医療機関で発症するクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(HO-CDI)の標準化感染比(SIR)の発生密度に及ぼす影響を評価すること。

デザイン

 多施設、準実験的研究、対照病院および非等価従属変数あり。

場所

 本研究は、HO-CDIが定常的に発生しそのSIRが安定している6つの州の8つの急性期病院を対象に実施された。

方法

 18ヵ月の介入前対照期間後、各施設は毎日病院全体で殺胞子性消毒薬による患者領域の清掃プログラムを導入した。介入浸透期間の後、消毒清掃の徹底度(thoroughness of disinfection cleaning, TDC)が前向きに監視され、以前に検証されたプロセス改善プログラムを利用したパフォーマンスフィードバックにより最適化された。介入病院と対照病院の双方について、介入前と介入後の四半期ごとの平均HO-CDI SIRを算出した。介入前と介入後の平均HO-CDI SIRおよび医療機関発症カテーテル関連尿路感染(HO-CAUTI)の SIRの変化を推定するために、差分分析を用いた。

結果

 介入浸透期間の後、TDCはすべての介入病院で着実に改善し、18ヵ月後には93.6%となった。平均HO-CDI SIRは1.03から0.6に減少した(95%CI、0.13-0.75;P = 0.009)。対照群と比較した調整後差分分析では、HO-CDIは0.55(95%CI、-0.77~-0.32)減少し(P < 0.001)、ベースラインからの相対的減少率は50%であった。

結論

 本研究は、HO-CDIに対する4つの要素の介入を評価するために、対照病院と非等価従属変数を用いた初の多施設準実験的研究である。清掃の徹底を継続的に改善した結果、HO-CDI SIRは対照と比較して50%減少し、それは持続的であった。

訳者コメント

 Clostridioides difficileは消毒薬に抵抗性があり、またClostridioides difficile感染症(CDI)は消化管感染症であることから環境汚染に繋がりやすく、その制御には環境の消毒清掃、しかも殺胞子性の薬剤を使用することが肝要である。一方、清拭による清掃は人手で行われ確実性に欠けるため、近年では蒸気化過酸化水素や紫外線照射などによる非接触型の環境制御も注目されている。
 本論文は、環境制御の基本である消毒清掃を強化することにより、CDIを制御することを目指した臨床研究の結果である。介入は非常に濃厚であり、まず全ての環境清掃従事者が本研究実施病院グループ(Trinity Health)で作成され標準化された教育プログラムに参加し、座学と実践の訓練を受けた。環境清掃に用いる薬剤も、以前はCDIの患者のみに使用していた殺芽胞性薬剤(過酸化水素・過酸化酢酸ベースの消毒薬)を全ての患者病室に対して毎日使用した。また、清掃のパフォーマンスは蛍光マーカーによって監視され、その結果が各従事者にフィードバックされた。
 このような徹底した環境の消毒清掃の改善により、非介入状態に比べてCDIを約50%減少させることに成功した。環境制御において、消毒薬による清拭清掃が基本であり重要であることを改めて示した貴重な研究結果である。ただ、環境清掃従事者に対する教育やパフォーマンスのフィードバックとそれによる改善など、長期従事を前提とした質改善活動であり、日本の多くの病院でみられるような清掃業務の外部委託状態では模倣することが困難であると考えられる。将来的には清掃業務を外部委託するのではなく、職員を直接雇用し教育することでその質を高め、医療関連感染の減少につなげるべきであると考える。