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vol.104 カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)と非CAUTI院内発症尿路感染症: 相対的疾患負荷、費用、転帰、および関連する院内発症菌血症および真菌血症
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目的

カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)と非CAUTI院内発症尿路感染症(HOUTI)の相対的疾患負担を明らかにすること。

方法

急性期病院43施設の患者を対象とした後方視的観察研究を実施した。CAUTI症例はNational Healthcare Safety Network(訳者註:アメリカCDCの医療関連感染サーベイランスシステム)に報告されたものと定義した。非CAUTI HOUTIは、3日目以降に採取された、コンタミネーションではない、常在菌ではない菌の尿培養陽性と定義した。すべてのHOUTIは、最初の尿培養陽性から2日以内に新たな抗菌薬が処方されることを必須とした。アウトカムは、二次的な院内発症菌血症および真菌血症(HOB)、総入院費用、入院期間(LOS)、再入院リスク、死亡率などであった。

結果

549,433例の入院のうち、434例のCAUTIと3,177例の非CAUTI HOUTIが観察された。HOUTIに続発したと思われるHOBの全体の割合は3.7%であった。二次的HOBの総数は、CAUTIに続発したものよりも非CAUTI HOUTIに続発したものが多かった(101対34)。非CAUTI HOUTIに続発したHOBは、CAUTIに続発したHOBよりもICU外で発生する可能性が高かった(69.3%対44.1%)。CAUTIは9,807ドル(P < 0.0001)の調整後総入院費用増加および3.01日(P < 0.0001)の入院期間延長と関連しており、非CAUTI HOUTIはそれぞれ6,874ドル(P < 0.0001)および2.97日(P < 0.0001)であった。

結論

CAUTIおよび非CAUTI HOUTIは有害な転帰と関連していた。非CAUTI HOUTIはCAUTIよりも発生頻度が高く、続発するHOBの施設内発生量の増加と関連していた。UTI発生リスクのある入院患者は、特にICU以外の環境において、サーベイランスと予防の取り組みによる恩恵を受ける可能性のある、脆弱な集団である。

訳者コメント

尿路感染のサーベイランスは通常、CAUTIを対象に実施される。その主な理由としては、CAUTIの発生頻度がデバイスの適切な使用と早期抜去や清潔操作の徹底などにより低減させることができるのに対して、CAUTI以外のUTIの発生頻度を低減させる介入があまり明確ではないことが挙げられる。しかも、CAUTI以外のUTIは多くが院外発生、つまり市中感染としてあまりにも一般的な疾患であり、感染対策担当者もあまり関心を持たない面もある。
今回紹介する研究では、カテーテル関連ではないUTIで、院内発症するものを研究として調査することにより、その疾患負荷や特徴を調査した。その結果、単純にその発生数だけみても、CAUTIに比べてはるかに多いことが明らかになった。また、CAUTIと同程度の入院期間延長(約3日)と医療費の増大(約7,000ドル)を招くことも明らかになった。更に、二次性血流感染も4%程度の確率で発生することがわかった。
このことは、カテーテル関連ではないUTIも入院中にそれなりに発生していること、それらの発生を継続的に監視するサーベイランスの実施も考慮して良い状況である。一方、院内発症とは言え、これを減少させる対策として有効なものはあまりないのではないかと思われる。早期診断と抗菌薬による治療、そして起因菌の同定による抗菌薬のDe-escalationなどが実施すべきことであろう。