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vol109 大規模な学術的セーフティネット病院での腹式子宮摘出術患者に発生する手術部位感染のリスク因子評価とパフォーマンス改善
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目的

腹式子宮摘出術患者における手術部位感染(SSI)のリスク因子を特定し、パフォーマンス改善活動の結果を報告すること。

デザイン

後方視的症例対照研究。

医療機関

パークランド病院(882床の学術的セーフティネット三次医療機関、レベル1外傷センター)。北テキサス地域の、主に無保険患者からなる多様な人口に医療を提供する。

参加者

2019年から2021年の間に腹式子宮摘出術を受け、術後30日以内に手術部位感染(SSI)と判定された18歳以上の患者。

方法

症例は対照と同一または最も近い暦月で1:2の比率でマッチングされた。電子医療記録(EMR)のチャートレビューを実施し、カテゴリ変数にはピアソンのカイ2乗検定、連続変数にはスチューデントのt検定を用いて変数を比較した後、多変量解析としてロジスティック回帰分析を行った。SSIバンドルの遵守状況を調査する中で、膣の準備技術が改善領域であると特定されたため、手術室スタッフ向け研修介入を実施した。

結果

糖尿病は有意なリスク因子として特定され、ヒスパニック系またはラテン系民族は感染率の有意な低下と関連していた。同定された病原体の大半は腸管病原体であった。介入後、パークランド病院の深部および臓器体腔SSIの標準化感染率(SIR)は、2021年の1.46から2024年6月時点の12ヶ月移動平均で0.519に低下した。

結論

術前腟準備の質と一貫性を改善する当院の多職種介入は、腹式子宮摘出術におけるSSIの減少と関連していた。

訳者コメント

本論文は、アメリカの単一病院で行われた子宮手術後SSI防止に関する研究と取り組みの報告である。研究面では、2019年から2021年までに発生したSSI症例37例と、それに時期をマッチさせた対照74例に関して、SSI発生のリスク因子を検討した。一方、取り組みに関しては、2022年初頭に導入した対策として、消毒薬による膣準備の遵守率を大幅に上昇させることであった。
リスク因子に関しては、年齢・糖尿病・術前ステロイド使用など、概ね既知の因子が多変量解析において有意な結果となっており、妥当な結論であると言える。それに加えて、ヒスパニック人種がSSI発生に関する負のリスク因子(防御因子)であった点は興味深い。研究対象111人に占めるヒスパニック人種の数(66人)が60%なのは、アメリカ南部の病院での研究に特徴的と言え、またアメリカは人種による各種イベントのリスク因子を研究するのに適した場でもある。一方、この研究で明らかになったリスク因子はいずれも介入困難なものであり、対策には直接結びつかない。
防止に関する取り組みに関しては、2022年頃に医療従事者に対する調査結果報告や教育を実施している。遵守率に関する情報は2022年11月以降しか記述されていないが、低い月で80%、高い月は100%に達しており、主にこの要因によってSSIが減少したと著者らは考えているようである。
子宮手術後SSI発生に関して二つの面から検討した論文であるが、どちらも新規性はなく、規模も小さい。しかしこのような取り組みであっても、厳格な査読を経て感染制御のトップジャーナルに採択されるという点に関して、若干の戸惑いを感じるとともに希望の光を見た。